表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

第二話 愛国者たちの襲撃

 第二話です。


 前回、思ったよりもご拝読数が少なかったので、ひよっていますが、めげずにここから挽回していきたいです。


 よろしくお願い致します。


 警察の特殊部隊員を再び、フェンリルを着た、李治道が放り投げる。


「止めろぉ! 治道ぃ! サッカン(警察官の隠語)はお前の味方だぁ!」


 警察用語を言われても、普通は分からねぇんだよ、オッサン。


 そう言う、兵頭が必死で止めに入ろうとするが、無視して、特殊部隊員達を放り投げ続ける。


 さすがに殺したら、重罪人なので、そこまではしないが、日頃の警察に対するうっぷんを晴らすつもりで、目の前の特殊部隊員達を放り投げる。


 自分はたった今、仲間を殺されて、その仲間を殺した同級生を殺害したところなのだ。


 少なからず、動揺をしている。


 そして、訳の分からない、パワードスーツまで着て、警察に襲われて・・・・・・


 だったら、こんな奴らをぼこぼこにしても、良いだろう?


 治道は人を殺した事と、仲間を殺された事、その二つの動揺を抑えられずにその不安を警察の特殊部隊相手にぶつけていた。


「李君、お迎えが来たら、切り上げるんだよ!」


 そう英語で言った、レイチェル・バーンズは走って、どこかへ消えた。


「おい、どこへ行く!」


「君! 保護をするから、こちらに来なさい!」


 そう言って、特殊部隊員がレイチェルに近づくが、レイチェルはハイキックを見舞った。


 しかし、特殊部隊員はヘルメットをしているので、痛みを覚えていなかったが、レイチェルはすぐに走って、逃げた。


「待ちなさい!」


「治道ぃ! このままだと公妨(公務執行妨害の略)で逮捕されるぞぉ!」


 兵頭が必死の形相で叫び出す。


「そしたら、在日の権利とか主張する弁護士連中が黙っていないから! うちの父親の顧問弁護士もいるし、どっちみち、警察を目の敵にする連中さ! 敵に回したら、全面戦争だぜ!」


「お前! そういう問題じゃあねぇだろう!」


「警察による、在日人権侵害とか言えば、あいつらは喜んで、動いてくれるよ! 場合によっては金も取らねぇんじゃないの!」


 そう言って、特殊部隊員達を投げ飛ばし続ける。


 すると、そこに飛行する物体が現れる。


「気を付けろ、治道。ソルブスだ」


「えっ? 軍用兵器かよ?」


 すると、そこには赤色と白のカラーリングをしたアスリートを思わせる、ソルブスと同じく、スタイリッシュな風貌の青色と白色のソルブスにアメフト体系のソルブスが無数に現れた。


「物量で押す気かよ?」


「あれは警視庁のISATと呼ばれる、特殊部隊だ」


「警視庁お抱えの準軍事組織かよ。こういう言い方を嫌う、偉い先生方はいるけど?」


「的は得ているなぁ? だが、絶体絶命であることは変わりない。迎えを待て」


「迎えって、何?」


「すぐ分かる」


 すると、兵頭が「おい、亜門! 俺だぁ! そいつに手を出すなぁ!」と叫んだ。


「兵頭警部補?」


 赤色のソルブスから間の抜けた声が聞こえる。


「そいつは一般的な高校生だ! 巻き込まれただけだ! だからーー」


「でも、警察官が現にあれだけ、負傷しているんだけど?」


 奥から女の声でそう言うのが聞こえると、赤色のソルブスは腰から、日本刀の持ち手と鍔だけの存在を出す。


「てぇぇぇい!」


 そう言って、出てきたのは光の刃だった。


「レーザーかよ!」


 治道が間合いを取り始めると、大勢のアメフト体系のソルブスからマシンガンで銃撃を受ける。


 それを瞬時に避け、校内の壁に隠れるが、マシンガンの銃撃で今にも崩れそうだ。


「警察が学校、破壊していいのかよ!」


「そういう超法規的活動は俺たちの専門事項でね?」


 そのような男の声が聞こえると、壁は見事に真っ二つにされ、そこには青色のソルブスが大きな刀を持って、こちらに迫っていた。


 その刃もレーザーで出来ていた。


「投降しろ、高校生。お前にはどっちみち、勝ち目はない」


 うわぁ・・・・・・


 超、万事休すじゃん。


 その時だった。


 上空から、ヘリコプターの音が聞こえ、そこから多くの人間が降下する。


 すると、真っ黒な光が浮かび上がり、そのまま黒色のソルブス達が飛行しながら、ISATの部隊に銃を向ける。


「我々はアメリカ軍海兵隊である! このソルブスはアメリカ合衆国の資産である為、接収させてもらう! 尚、それでも攻撃を続ける場合はれっきとした日米間の外交問題として、扱わせてもらう! 繰り返すーー」


 たどたどしい、日本語でそういうアメリカ軍の兵士がそう叫ぶ中で、黒色のソルブスが手を差し出す。


「ヘリに乗れ、君の身柄は保証する」


 英語でそう言われた、治道は「どこへ行くつもりなんだよ?」とだけ言った。


「さあな? だが、警察嫌いの君には連中は手を出せない場所だ。そのソルブスを着た以上、我々は君を守る。とりあえず、ヘリに乗れ」


 俺の事を知っている・・・・・・


 公安部が自分の事を監視している時点で察しは付いていたが、完全にアメリカさんも自分のことを知っている。


 普通だったら、険悪感の一つと恐怖感を抱くかもしれないが、事態が事態なので、とりあえずは危機を脱したと考える事にした。


 そう言われた、治道は装備を解くことなく、ヘリコプターに乗り込む。


「これ、MH-60Sじゃん」


「よく、知っているなぁ? 日本の高校生は米軍の細かい装備なんて知らんぞ?」


 兵士がそう言うと「戦争映画好きなんだよね?」


 治道がそう言うと、ヘリコプターは発進をして黒色のソルブスもそれに追随して、飛行する。


 警察の連中は何をして良いか分からないそうだ。


「あの、友達がいなくなったんだけど? アメリカ人の女の子」


「レイチェル・バーンズは我々が保護した。君の心配は無用だ」


 そういう兵士たちの声音は緊張感に包まれたものだった。


「まだ、装備は解くなよ? どこで君の写真が撮られるか分からん」


「はぁ・・・・・・」


 まるで、映画なり、プレイステーションのゲームのようだ。


 そう思った、治道はヘリコプターの頭上から、東京の夜景を眺めるしかなかった。


 その空域の辺りには新聞社や警察の物と思われる、ヘリコプターが居た。


 みんな・・・・・・


 死んじゃったのか?


 俺、どうすれば、いいんだよ?


 先ほどまでの興奮状態とは打って変わって、唐突に、そして、内心では柔道部の仲間たちの死が受けられない、治道は冷静になるととてつもない虚無感に襲われていた。


 時刻は午後十時三四分。


 聖アルテミス学園周辺には警察車両のほか、報道関係者もごった返していた。



「治道が横田基地に?」


 李民智が部下のソ・ジェンウ大尉に確認をする。


「公安部もだいぶ、慌てていましたね? いきなり、ソルブスを装備して、キメラを倒したと思ったら、アメリカ軍に捕まるのですから?」


 新大久保にある事務所では自身の会社の社員たちが韓国語から英語、中国語にロシア語などで治道の情報を収集していた。


 在日やそのシンパの政財界の幹部たちに韓国と旧北朝鮮のネットワークを駆使して、治道のアメリカ側での処遇と現段階での状況に関する情報収集を行っていた。


「公安部はなぜ、キメラに対する、情報を確認していなかった?」


「逆だろう? あんたも分かるだろうが、ハムはすぐに犯人を逮捕しない。泳がせて、裏にいる組織を一網打尽にする狙いさ? だが、結果的にはそれが裏目に出て、アルテミスがあんな惨劇に巻き込まれた」


 その声のする方向を見ると、現在の組織において、日本人でありながら、ナンバーツーの立場にある、五十嵐徹がそこにいた。


 その正体は警察庁警備局警備企画課、通称ゼロに所属する公安警察官だ。


 ゼロは表向きとして、各都道府県警の公安警察の指導、監督を担う組織だが、その実態は旧特高警察の流れを組む、組織で、国家にとって必要であれば、様々な手段で目標を達成しようとする、事実上の諜報機関だ。


 五十嵐は警視昇進後にゼロの工作員となったが、潜入捜査と称して、我々の組織に入った次第だ。


 しかし、五十嵐は堂々と民智に対して、自分が公安警察の工作員であると明かし、その上で雇ってくれと言い放った時は閉口した。


 公安部とのパイプを作るのも悪くないとは思って、雇用したのだが、そのセンスはシノギの上ではよく役立っていた。


 旧北朝鮮系マフィアである、我々に五十嵐を潜入させた、日本政府の意図は分かっていたが、存分に利用するつもりだ。


 と言っても、日本を敵視していた、かつての祖国は南北統一で消滅をして、自分達は亡霊のような存在だが?


 そもそも論として、自分はかつての共和国の経済開放と金王朝の崩壊を望んでいた、人間だ。


 元々が、逆賊なのだから、祖国も何もないのだが?


「治道君を奪還しないのですか? 大佐」


 ジェンウがそう言う中で民智は眼鏡を掛けなおす。


「アメリカが相手だからな。治道は私の跡取りだが、下手に手を出すと、我々のこの事務所に襲撃をかける可能性がある。表向きはリベラルな民主主義を気取っている国だが、目標の為であれば、軍を使ってもどうとも思わない国だ。今は情報収集だよ」


「しかし・・・・・・治道君がアメリカに何をされるかは分かりません!」


 ジェンウの祖父はかつての共和国のエリートだった為、アメリカに抵抗があるのだろう。


 しかし、アメリカ人の少女から渡された、ソルブスを使用した後に警視庁をけん制するかのようなタイミングでの米軍の強襲。


 報告では、その少女も米軍に保護をされて、今は治道とともに横田基地にいるそうだ。


「CIAとも連絡は取れるか?」


「可能だとは思いますが・・・・・・」


 民智は頭を抱える。


「五十嵐?」


「何だ?」


「お前らの上司にも確認を取ってくれないか? アメリカは何故、あの少女にご執心で、うちの跡取りが何故、巻き添えを食らったのかを?」


「日本国民ではないから、アメリカに返還の要求と人権の抗議は出来ないぞ?」


「まぁ、その点は在日の権利を主張する弁護士連中も絡めるがね? 今は使わないが、そのぐらいは私も分かっている。治道は恐らく、そんなに悪い待遇では扱われないのではないのかな? 何せ、巻き込まれたし、今のホワイトハウスは人権にうるさいからね? もっとも、建前上だが?」


 それを聞いた、五十嵐は「確認するよ。ただし、期待するなよ」と言って、どこかへ消えた。


「あぁ~、まさか、こんなことになるとはなぁ? 今日はサムギョプサルなのに?」


「治道君の大好物ですからね? この状況になれば、食べるわけにもいきませんしね?」


「こんな料理上手の優しい父親をあいつは嫌悪しているんだ。悲しい話だと思わないか?」


 ジェンウにそう言うと「自分がマフィアの息子であるという運命を受け入れらないからではないでしょうか? 自分の祖父の代でも南に生まれていたらという連中がいたと聞きます」とだけ言った。


「社会悪ではあるが、これほど、儲かる職業はないぞ? マフィアと言っても、軍隊の体系で成り立っているから、半グレやヤクザと違って、幾分、健全な統制が出来ているがね? もっとも、末端のクズどもは手に負えないヤクザ者たちだが?」


「大佐、治道君は達観しているように見えて、性格はナイーブですから」


「大尉、食べないか?」


「この状況では無理ですね? 私も治道君が心配ですから」


 ということはサムギョプサルはどうなる?


 治道の為に用意したのだが?


 民智はタバコを吸い始める。


「大佐、治道君はタバコが嫌いです」


「察しろ、大尉。私も人の子だ。少なからず、動揺しているのさ?」


 タバコの苦さがこみ上げてくる、深夜を民智はジェンウと共に過ごし始めていた。



 一月の年初を過ぎた、同月中旬の寒さが厳しい、午前中。


 東京の永田町にある首相官邸三階の正面玄関。


 警視庁警備部独立特殊機甲部隊、通称、ISAT隊長の小野澄子特務警視長が副隊長の稲城四郎警視と夏目美鈴警視を引き連れて、官邸前で警察庁長官の跡部を待っていた。


 私が首相官邸まで呼ばれるとなると、かなりの大ごとだな?


 小野はそう思いながら、寒さの中で手が悴むのを感じていた。


 陸自時代に慣れているとは言え、女に寒い中で立たせて待たせるなど、男としては最低だな?

 

 跡部長官は?


 そう思いながら、跡部を待ち続ける事にした。


「稲城副隊長、緊張されてます?」


 夏目がそう見つめる中で稲城は顔を赤らめる。


 稲城警視も知っているはずだが、夏目は既婚者だ。


 しかも、相手はノンキャリアの警察官で組織犯罪対策部暴力団対策課のエースと称されている、有町忠警部補と駆け落ち同然での結婚をしたのだ。


 それ故に警視庁キャリア組の才女と言われていた、彼女は更迭され、今はISAT副隊長という任に付いているが、肝っ玉の強さでは、評判だったので、官房長官に呼び出しを食らっても、堂々としているのは小野も内心では閉口していた。


「夏目、君の強心臓ぶりには閉口するよ?」


「私は稲城副隊長と違って、失うものはありませんから? 関西に戻ればいいですし?」


 関西の有名企業社長の令嬢である、夏目はそう言うが、それが警察官僚だからな?


 対する、稲城は東大を四浪、二留した後に警察庁に入ったが、期待していた、親族による、出世の引き上げもその親族が不祥事により、失脚し、ISATの副隊長に収まったが、確か、奥さんや子どもも二人いて、奥さんから、昇進しろとのプレッシャーが強く、本人もつらいと言っていたか?


 対照的な二人の副隊長に対して、夏目は隊員には人気が高いが、稲城は『すぐに犯人逮捕が原則だろうとか、安全パイで走る、小心者』と嘲られる始末だ。


「そんな気弱だと、また、メシアにバカにされますよ?」


「あのAIは人間だった頃は傭兵だったそうだが、俺たちは警察官僚だ。戦争屋の理屈では官僚の心情など分からんよ」


 ISAT隊員の一場亜門巡査や津上スバル巡査が保有するソルブスである、メシアとレイザには通常とは違う形での高性能自立志向型AIが搭載されている。


 驚異的な学習能力、例えば、装着者の癖や最適な戦い方から、戦術の提案に上層部との連絡を行う、人格を持った、高性能AI。


 戦場でのバディが機械になる時代が来たとも言えるが、その実態は戦死した傭兵などの人格をAIに落とし込み、高性能AIとして完成させたという代物だ。


 メシアは元自衛官で世界的に伝説の傭兵と言われた日本人。


 レイザはアフリカに派遣されて死んだ、フランスの女性軍人の人格が移植をされたそうだ。


 もっとも、機械であろうと人間であろうと、彼等、彼女等はISATにおいては大事な仲間であることには変わりないが・・・・・・


「二人とも、おしゃべりは良いけど、長官がお見えになるわよ?」


 そう言うと、後から来た、クラウンに乗って、警察庁の跡部長官がやって来た。


 官邸刑務官やSPたちの敬礼を見た後に自分達も敬礼で出迎える。


「ご苦労」


「はっ!」


「陸自式の敬礼は気に入らんが、長官はまだか?」


 長官が長官と言うと、ややこしいがこの場合は現、脇坂内閣の堀田官房長官を指す。


 ちなみに堀田は地味ではあるが、有能な男とは言われている。


 その長官自ら、自分たちを呼び出しをする時点で、今回下されるミッションはかなり高度な政治的背景が絡む事件なのだろうとも思えたが、その堀田も女を寒さの中で待たせる奴には変わりないと思えた。


 気が付けば、首相官邸の中へと入り、執務室で待たされていたが、しばらくすると、堀田官房長官の他に田淵官房副長官に元警視総監の久光秀雄国家安全保障局長と山崎内閣情報官までやってきた。


「御多忙のところ、申し訳ないね?」


 四人は総出で立ち上がる。


「座りたまえ」


「失礼いたします」


 そう言われて、座るが、堀田は「ふぅ」と息を吐いた。


「さっきも会見したがね? アルテミスの件でアメリカの関与は確認できないと言ったが、記者たちから総攻撃を受けたよ」


 堀田がそういう中で、警察側の四人は黙るしかなかった。


「君たちに来てもらったのは、今回の件とは関係のないことだ」


 詳細は語らずか?


 末端の組織である、自分達にアルテミス学園でのアメリカ軍介入のいきさつを説明するだけの為に首相官邸まで呼ぶことはないと思っていたが、今度は別の政府直轄のミッションを行うとの事か?


 こうなったら、アルテミスの件は独自のルートで調べるしかないな?


「国防総省の高官が横田に保護された、レイチェル・バーンズへの面会を希望しているそうだ」


 レイチェル・バーンズ。


 兵頭警部補の報告によれば、李治道という在日の少年に恐らくはアメリカ製の最新鋭ソルブスを渡した、謎の少女。


 きな臭いとは思っていたが、アメリカ政府が直接、動くか?


「東京都内を横断するわけだから、軍を使うわけにもいかないしね? その分、市街地戦のエキスパートである、ISATを警護に使うことにした」


「それは、国賓ではない高官を大々的に警護するということでよろしいですか?」


「小野!」


 跡部が小野に発言を控えるようにという意味で、こちらを睨み据える。


 それを聞いた、堀田は眉を顰めるが、すぐに無表情に戻った。


「アークエンジェルという団体は知っているか?」


 確か、キリスト教福音派の保守的政治団体だったが、徐々に過激な陰謀論に染まり始め、アメリカ国内でも騒乱を起こし、テロ組織として、指定をされた極右団体だ。


 最近では日本支部が出来て、公安部も監視を強めているが、その過激派のメンバーはアメリカ軍内部にも浸透をしていることが深刻な事態として憂慮されているという話は耳に挟んでいた。


「高官を暗殺すると?」


「もしくはレイチェル・バーンズをだ」


 堀田はそう言うと「連中は米軍内部にも浸透している、アメリカ側は軍内部の過激派を把握できないが故に君等に警護を依頼したそうだ。それに君の言う通り、国賓ではないから、大々的な警護は出来ないが故に特殊な警護となる。ソルブスを使ったね?」とだけ言う。


 まさか、市街地戦闘を堂々と行うのか?


 小野は困難なミッションを与えられたと、知覚したが、隣にいる、稲城は今にも倒れそうなほどな顔色になり、普段は強心臓で知られる夏目も絶句をしていた。


「君らの腕を期待しての指名だ。失敗は許されないぞ?」


 これだから、政治家は・・・・・・


 現場の苦労も知らずに責任を取らない為に私たちに仕事を丸投げしようとしている。


 怒りを覚えた、小野だが、すぐに立ち上がり「了解、直ちに任務に移ります」とだけ言った。


 しかし、その場にいた久光が目で耐えるように言っていたので、怒りを抑えることにした。


「頼んだよ、それと久光局長」


「はい」


「小野隊長に十分な情報を与えてやれ。君が作り出した部隊だからな? 責任は取ってもらうよ?」


 そう言って、官房長官はその場を立ち上がり、公務へと戻って行った。


「久光局長。君の引っ張ってきた隊長殿はいささか、スタンドプレーが目立つな?」


 田淵官房副長官が苦言を呈する。


「申し訳ありません」


「君が警視庁に作った、準軍事組織。いわゆるパラミリタリーと言ってもいい、部隊を総理は危険視している。創設当初こそ安藤総理の支援を得られたが、今は脇坂総理の天下だ。手綱は持っておけよ」


 そう言って、田淵も去る。


「お前らが気の毒だよ。疑似政権交代とは言え、こうまで言われるんだからな?」


 山崎内閣情報官はサッチョウ(警察庁の隠語)出身で久光局長とは同期なのだ。


 故に旧ソルブスユニット創設時の経緯も知っている為、ISATには同情的だった。


「小野、私の執務室に来てくれ」


 そう言われて、小野は久光に連れられて、執務室へと向かった。


 久光は椅子に座ると開口一番「一場君はどうなっている?」と聞いてきた。


「何でも、瑠奈さんにプロポーズする直前にアルテミスの事件があったので、かなり精神的に落ち込んでいますね?」


「瑠奈は気づいているだろうな?」


 そう言う、久光は笑っていたが、ひどく疲れているように思えた。


「アルテミスの件は知っていると思うが、マル害の少年はアークエンジェルの日本支部の末端メンバーだった」


「キメラの技術をアークエンジェルが保有していると?」


 キメラの技術は今じゃあ、世界的に流失しているからな?


 六年前のクリスマスで神格教とその背後にいた、世界的犯罪結社であるピースメーカーによる新宿での武装決起事件通称「血のクリスマス事件」が起きた時に現在は警視庁巡査となった、一場亜門当時特務巡査が犯人グループを殺害したことにより、終結をしたが、それ以降、神格教の消滅と同時に世界にキメラになる為の改造手術の技術が流失した。


 このアークエンジェルという組織は一部では第二の神格教と言われているが、その連中がキメラを使ってくるか?


「アークエンジェルは退役軍人を多く使い、アメリカ製のソルブスなどの兵器も使う可能性がある。米軍内部にも内通者がいる観点を鑑みて、君達への警護を決定した次第だ」


「気になることがあるのですが、ピースメーカーが裏で暗躍をしている可能性は?」


 それを聞くと、久光は頭を抱えた。


「現在、JCIA(Japan Central Intelligence Agency ジェイシーアイエー)が全力で調査しているが、職員がアメリカ国内で殺されたという事件が起きた。アークエンジェルを調査していたそうだが、これはどう思う?」


 JCIAは六年前の事件以降に日本でも対外諜報機関設立の機運を受けて、作られた、日本版CIAなのだが、ここまでマスコミには活動内容は多く報じられることはなく、海外で活動をしていることが多いので、国民にはあまり活動内容に関する関心が得られていないのが現状だ。


 職員は警察、自衛隊、外務省、公安調査庁などから登用され、軌道に乗れば、独自に職員をリクルートするという方針を掲げているが、実態はまだ若い組織であった。


「今のところ、何も分からないと?」


「分かるのは日本でアークエンジェルがドンパチするという理由だ」


「では、レイチェル・バーンズという少女をアークエンジェルが暗殺をしようとする理由は?」


 そう聞いた、小野に対して、久光は「一場君と同じだからだよ」とだけ言った。


 それを聞いた瞬間に合点がいった。


 デザイナーベイビーか・・・・・・


 デザイナーベイビーとは人工的な遺伝子操作で容姿、運動神経、頭脳までもが通常の人間よりも上回るように設定されて生まれた、人造人間とも言われる、新人類だ。


 前回の「血のクリスマス事件」のきっかけとなった、一連の神格教動乱はその最高傑作と称される、人口子宮から生まれた、一場亜門巡査がそのような存在があるという事実の黙殺の為に同人を暗殺する事が一つ。


 そしてもう一つは国内の国防意識を高める目的で日米両政府が仕掛けた、大々的なテロ事件という側面があったのだが、今回はそれにキリスト教福音派が絡むか?


 人工的に作られた存在ならば、キリスト教福音派の保守派からすれば、神への冒涜を象徴する存在として見られておかしくないな?


「アメリカとしても、現政権では彼女は警護対象だ。人権尊重を掲げているからな? だが、アメリカでも世論を二分するテーマだ。日本もそれに巻き込まれたということさ?」


 それを聞いた、小野は「大体は分かりました。お気遣いありがとうございます」とだけ言った。


「すまんな。私も支援はするが、今回は君らにとって、激戦になると思う。分かり次第、情報を送る予定だ」


「ありがとうございます」


「今日は帰りなさい。国会の食堂に行きたいが、あいにく君らにも私にもそんな時間は無い」


 そう言った、久光はため息を吐いた。


「それと、一場君に伝えてくれ」


「はっ!」


「諦めるなとだ」


 それを聞いた、小野は笑い、久光も笑いだした。


「戻ります。いつか、食堂で」


「あぁ、特権というのは使うものだな?」


 そういった後に小野は「失礼します」と言って、執務室を辞去した。


「久光局長ですか?」


 稲城が後ろから小声をかける。


「警備会社の役員だったところを国家安全保障局長への登用だからね? こちらとしても良い援軍よ」


 そう言って、跡部の乗る車に乗り込む。


「久光局長から聞いたか? 私は事前に聞いていたがね?」


「長官、意地が悪いですね?」


「どう思う? アークエンジェルについては? 神の領域とやらに踏み込んだらしいからな? 我々は?」


「まるで擁護しているかのようですね?」


 そう小野が意地悪く笑うと、跡部は「彼らは第二の神格教だ。我々、宮使いには神様の話なんてされても、分からん。それが私の見解さ? 君は?」と言って、ため息を吐く。


 小野はクスリと笑わざるを得なかった。


「結論として、言えば、テロリストですよ。彼らは正義感のつもりでしょうけど?」


 小野がそう言った後に「君とJCIAの連中との接触をさせよう。特殊部隊と諜報機関の一体化は久光局長の悲願だからな?」とだけ言った。


 この場合だと、自衛隊は現行法制化では自由に動けないから、警察を使うか?


 とりあえずは再び、超法規的活動が認められ次第だ。


「ありがとうございます」


「私はこれから、気が気ではないよ、首がかかっているからね?」


 そう言う、跡部の顔色は浮かなかった。


 時刻は十四時を少し過ぎたくらい。


 曇り空の中、雪がちらついていた。



「隊長は官房長官殿に何を命令されるだろうなぁ?」


 津上スバル巡査があくびをしながら、休憩室のテレビを眺める。


「今の僕たちが過ごしている光景って、ジンイチ(警務部人事一課の略称。ヒトイチとも言う)の進藤係長がまだ、ウチの部隊にいた時だったら、すごい、怒られているよね?」


 一場亜門巡査は戦術書を眺めながら、そう言った。


「あの、高校生はアメリカに保護されたらしいけど、どこいるんだ?」


「横田でしょう? なんか、同伴の女の子はVIPらしいし? かなり面倒くさい事態だと思うよ?」


 海原千世巡査と岩月大輔巡査も都内の市街地と言える場所の地図を眺めながら、そう言う。


 結局、おさぼりをしているのは津上だけか?


「そう言えば、小隊長の出口警部補と分隊長の広重部長はどうした?」


「あぁ、病院行ったら、直行するとか言っていたけど」


 第一小隊の小隊長である出口誠警部補は三カ月前の出動の際に足を負傷して、現在戦線離脱中の為、病院通いが続いているのだ。


 しかし、小隊長という手前上は出動しなくても、やることはあるということで今、自分たちが語らいを行っている大手町にあるISAT庁舎にまで来るというのだ。


 その前に病院に通うのだが?


 その上で分隊長の広重巡査部長がそれに同行するのだが、広重は都内の大病院である重縁同病院は美人の看護師さんや女医さん揃いだという理由で付いていくと言う、とんでもない女たらしだ。


「はぁ」


「何、ため息、吐いているんだよ。津上?」


「あの人も不運だよなぁ? 能力あるのに負傷する癖あるんだもん?」


「でも、死なないんだよなぁ? 広重はマジで去勢してほしいけど?」


 そう、去勢する必要のある広重はとにかく、出口は負傷することが多いが、必ず命だけは助かるので、機動隊時代から不死身の出口と言われることが多かった。


 その出口がこれから、来るのだ。


 本人は真面目な熱血漢だが、安静にするのが大事なら、そうして欲しい心情を隊員一同は感じていた。


 そして、広重は去勢してもらいたいというのが第一小隊の総意だ。


「いやぁ、広重はとにかく、出口小隊長は普通に強いんだけど、そもそも論として一場のメシアと俺のレイザ以外の機体が国産のガーディアンサードとかさぁ? 海外の強力なソルブスがある中で、国産にこだわるから、貧弱極まりないし、何とかして欲しいわぁ。第一、エース格のメシアとレイザも六年以上前の機体だし?」


「心外だなぁ? 俺たち特有の学習能力でアップデートは行っている」


 ここまで、沈黙を保っていた、メシアがそう言う。


「まぁ、見た目上はあんまり変わらないけど、確かにチューンナップされているからなぁ?」


 津上がそう言うと、レイザが「そう言えば、噂聞いた?」とだけ言った。


「あれだろう、俺たちの装備が貧弱な理由として、独立した権限が与えられている警視庁の準軍事組織がお上にクーデターを起こす可能性あるとか現内閣が被害妄想して、最強の装備を意図的に与えないからって奴なぁ?」


「まぁ、まだ、この部隊がソルブスユニットとか言われていた時は、当時がタカ派の安藤政権でその後も大須政権とタカ派続きだったから、結構、良い時代だったけど、今は自明党と言っても、ハト派の脇坂内閣だから、慎重かつ武力行使が嫌いで、俺たちが野蛮人みたいに思われているんだよな?」


「まぁ、リベラル派には俺達みたいな独立愚連隊は嫌われ者だよ。準軍事組織とかパラミリタリーとか言われているから?」


 津上とメシアがそのような会話をすると、亜門は「ところで、あの高校生が着ていた、新型って何なんだろう?」と聞いてみた。


「格闘戦に重点を置いた、ソルブスだったな? しかし、現代戦において、腕っぷしだけで戦おうなどとはナンセンスだ。まぁ、仕留めそこなったがな?」


「また、レインズ社か?」


「レインズ社のCEOがキングリー・ゲイツに変わってから、警視庁との契約も柔軟になったが、政府の横やりで未だに大石重工製が主体だからな? レインズ社の新装備もどんどん出来ているが、横田に溜まるばかりだ」


 そういった後に休憩室には重苦しい空気が流れる。


「なんか、暇だから、トランプしない?」


 海原がそう言うと津上は「進藤係長がいたら、説教物だな?」とだけ言った。


「でもさぁ、隊長帰ってくるまでの間に出動要請来たら、どうするんだろう?」


「副隊長二人まで呼ばれたしなぁ? 夏目副隊長は軍事こそ素人だけど、強心臓だから、何とか、行けそうだけど、稲城はマジで小僧だから、あいつが指揮取ったら、全滅だな? 俺等?」


「あぁ、特に武装したキメラが相手の時に『命令は捕獲! いわゆる逮捕だ!』とかほざいた時は真っ先にこいつ、どさくさに紛れて、殺しても構わんなと思ったな?」


 津上とメシアがそう悪態を吐く。


「まぁ、官僚だから、僕らみたいな現場とは違う苦労があるんだよ?」


「一場、お前さぁ? そういうすぐにやんごとなきように収めて、自分は常識人アピールすんなよ?」


 津上がそう言うと、レイザは「亜門は純朴そうに見えて、意外と非常識な側面があるのに良い子を演じるという困った子でねぇ? しかも、エース格なのに、勝負弱いのよねぇ?」と口を揃える。


「うるさい」


「しかも、プロポーズしようとしたら、出動とか、運にも見放されているよな?」


 人が気にしていることをずけずけと?


 すると、そこに小野がやって来た。


「みんな、さぼってない?」


 小野がやってくると同時に第一小隊隊員総出で直立不動の敬礼を行った。


「ご苦労様です」


「まぁ、本当に疲れたけどね? 待機任務は第二小隊に引き継ぐんでしょう?」


 旧ソルブスユニットからISAT体制に移って、一番の利点は隊員数が増えて、部隊も増員された為、基本は三交代制のシフトでの勤務体制が可能になったことだった。


 実験部隊だった、旧ソルブスユニット時代はそれこそ、小隊が一つしかなかったので、かなりのブラックな勤務体制だったことは今では、懐かしい記憶だ。


「ちなみにアルテミスの情報は下りなかったわね? 任務だけ伝えられて、アメリカの国防総省高官の警護を市街地戦闘の可能性があるとして、引き受けることになったわ」


「国賓でもない、高官を警護ですか?」


「アークエンジェルっていう、アメリカの極右団体襲撃の可能性があるから、私たちにお鉢が回ったのよ。まぁ、追加の情報で米軍からも思想上は問題ない部隊を送る可能性も考えられるけど、基本は市街地戦に長けた、私たちが主体よ」


 小野は疲れたと言わんばかりの表情を見せる。


「みんな、引継ぎ終わったら、家で寝るのよ。緊急招集もあるから、その可能性も鑑みてね?」


「了解です!」


 そう言って、隊員一同が敬礼する。


「それと、一場君?」


「えっ? あっ、はい!」


「後で隊長室に来てね?」


 えっ、個人面談?


 何故だろう?


「じゃあ、私、執務室に戻るから。みんな、引継ぎだけはきっちりやってね?」


「了解!」


 そう言って、小野は休憩室を出た。


「隊長はパワフルだよなぁ? 仕事と結婚したみたいなもんだよ?」


「でも、裏で男いるだろう? あれだけ美人だし?」


「まぁ、それはともかくとしてさぁ?」


 津上が亜門を見据える。


「出口小隊長と広重は置いてきぼりか・・・・・・後で連絡するか?」


 津上がそう言うと、海原が「LINEは?」と言ってきた。


「警察はお偉いさんがLINEダメって、言っているんだよなぁ? 韓国系も絡んでいるから、ネトウヨの巣窟の警視庁とかサッチョウ上層部は若い警察官がLINEを使うのはけしからんの一点張りなんだよ? バレたら、怒られるの覚悟で使ったら?」


「・・・・・・止めとく」


「利便性に敵う物はないと思うけどなぁ? まぁ、俺達は独立愚連隊だから、良いんじゃない? クリーニングされたスマホしか持ってきちゃあ駄目とか、ソルブスドライブとかしか持ってきちゃあダメだけど、後で帰りだな?」


 ソルブスドライブとはソルブス装着時に扱う、スマートフォンとスマートウォッチのペアリングの二つである。


 これによって、ソルブスを構成するパワードスーツが転送され、装着をされる仕組みだ。


 ISAT庁舎はこのような軍事装備を扱う為、情報管理には厳しく、クリーニングされたスマートフォンしか持っていけないと小野隊長の号令があるのだ。


 もっとも、その小野は六年前の神格教事件の時にメシアを構成する、メシアドライブをUSB状にして、警察の隔絶型LANのけいしWANにコンピューターウィルスを送り込んで、捜査一課の情報を入手しようとしたという過去があるのだが?


「まぁ、それは良いから、ビリヤードだよね?」


「おう、そうだ。だがなぁ?」


 津上がいきなり、亜門の肩に手を回す。


「お前、個人面談かよ」


「きっと、あれだな? 女医さんとの結婚の件だな?」


「いや、研修医だよ」


「しかも、あれだろう、NSS局長殿の娘さんだから、神経質になるよなぁ?」


「止めろよ、ただでさえ、僕もピリピリしているんだから?」


 そう言う、亜門は胃が痛くなる感覚を覚えた。


「じゃあ、俺ら、ビリヤード行くか?」


「良いねぇ? 出口小隊長は誘う? さすがにかわいそうだろう?」


 僕は蚊帳の外か?


 亜門がそう思うと、海原が「亜門君、面談終わったら、合流しようよ? 六本木のあのバーだから、分かるでしょう?」とだけ言う。


 海原はこういう優しいところあるんだよなぁ?


「お前、早く終わらせろよ? 局長と食事するとかならしょうがないけど、お前から万札を大量に竦めとりたいんだ?」


「津上は僕をカモにしようとしているよね?」


「帰りにはバーガー食うか?」


「あそこなぁ! 美味いんだよなぁ、ヒルズのバーガー店!」


 あそこは値段が張るけど、美味いんだよなぁ?


「分かった。終わったら、すぐに合流するよ。隊長にはばれないようにね? ただし、局長に呼び出されたら、無しだけど」


「寝ろ、寝ろの一点張りだからなぁ? この背徳感がたまらない」


 そう言って、皆が皆、第二小隊の到着を今か、今かと待ち受けていた。


 思えば、この六年で大分、部隊も変わったよなぁ?


 亜門は今のISATでの人間関係は嫌いではないと知覚していた。



「李治道君、君には悪いことをした」


 そう言って、目の前のスーツを着た、白人の男は治道の周りを歩き続けていた。


「君をここに連れてきたのは偶然ではないのだよ? 君のお父さんの問題もあるしね?」


「また、父さんか? アメリカでも有名な悪なんだろう?」


 治道が英語でそう言うと、白人の男、フレデリック・ジェイコブスは「ヒュー♪」と口笛を吹く。


「君のお父さんが率いる、組織である、ピョンヤン・イェオンダエは世界的な旧北朝鮮マフィアだ。警視庁の公安部や我々、CIAも警戒している存在だが、日本国内には旧北朝鮮系マフィアと繋がりを持つ、国会議員や企業も多くあるからね? 日本の警察も踏み込もうにも踏み込めない事情があるのさ? 知っているだろう? 身内の事だから?」


「あぁ、だから、父さんは嫌いなんだ」


 ピョンヤン・イェオンダエ。


 直訳すれば、ピョンヤン連隊と韓国語で言われる。


 父の持つ、組織は崩壊した旧北朝鮮系軍人を揃えて、マフィア化したのだが、最近は教育の行き届いていない、ヤクザ者の連中も末端に加わっているので、自分は嫌いだ。


 人身売買や薬物にも手を染めていて、自身はしょせん、道楽でしかない料理の腕を自分に振舞うのも気に入らない。


 その一品、一品の料理は誰かの犠牲で成り立っているものなのだ。


 父さんはそれを理解していないのだ。


 何かが欠落をしている人とも言うべきかもしれない。


 そして、教育の行き届いていない、末端の構成員が目の前で粗相を犯すなり、仕事で致命的なミスをすれば、自身の手で粛正を行うという残忍性が幼いころから嫌いだった。


 父はサイコパスだ。


 あんな奴の跡取りになんて、自分は絶対にならない。


 そう思っていた、治道の周りをジェイコブスはひたすら、回りに回っていた。


「そうか、自分の父親が嫌いか?」


「裕福な分、まだ良いけど、結局は悪党に身を投じての裕福さだ。日本に住む外国人が社会から零れ落ちて、行きついた先としての結果の頂点であって、普通の家庭じゃない。誰かの犠牲の上に成り立っている」


「中学時代は韓国系の中高一貫校に通っていたそうだが?」


「さすが、CIA。マイノリティの高校生の情報まで仕入れている。親父のお陰かな?」


 そう言った、治道はため息を吐いた。


「在日のコミュニティは村社会だ。体育会系の威張った奴もいて、そこから抜け出したくて、国際協調と多様性を掲げる、アルテミスに入ったんだ。普通の高校じゃあ、俺は格好の標的だからな?」


「君が恵まれていることは知覚している。貧しい在日の状況は悲惨だからな?」


「知っているんだ? アメリカ人なのに?」


「国務省の知り合いが東アジアオタクでね? そういう情報も仕入れているのさ?」


 ジェイコブスはようやく、向かいの椅子に座った。


「君が努力で理不尽から脱却しようとする姿勢は好感が持てる。アメリカに来てくれるなら、好待遇で迎えたいぐらいだ」


「冗談はよせよ」


「半分、本気さ。だが、君にはレイチェルの一件があるから、協力をしてもらわないといけない事がある」


 治道は耳を疑った。


 あの少女は何をしたのだ?


 アメリカ政府が大挙をなして、彼女を守ろうとする理由。


 そして、そのアメリカをして、大悪党の父を頼らなくてはならない理由。


 それは何だ?


「君が我々の計画に協力をしてくれれば、アメリカの大学への入学も約束するよ? もっとも、その為の支援であって、入学は君の実力次第だが?」


 本気で言っているのか?


 確かにアメリカの大学への入学支援は魅力的だが、父さんを頼るのは嫌だな・・・・・・


「何をするつもりなんだ?」


「決まっているさ? 彼女と世界を救うんだよ?」


 ジェイコブスは白い歯を浮かべて、微笑んでいた。



 亜門は自前のバイクのスズキKATANAに乗って、銀座の高級寿司店へと向かっていた。


 結局は局長に呼び出されて、六本木でのビリヤードは無くなった次第だ。


 当然、第一小隊の面々からはブーイングの嵐だったが、気にせずにバイクを走らせていた。


「亜門、局長殿にはスーツを着ろと言われているぞ?」


「仕方ないだろう? 職場に来るときは私服通勤でロッカーに眠っているISAT仕様の警察の制服に着替えてっていう、地域課のお巡りさんテイストの服装事情なんだから? 仕立ての良いスーツでいちいち、来ていたら、津上とか海原に何ていわれるか?」


「家に帰って、着替えればいいだろう?」


「だって、隊長から早急に寿司店に向かえとか言われたじゃん?」


 そう言いながらも、亜門の乗るKATANAは有楽町の辺りを通り始め、気が付けば、銀座へと入って行った。


「えぇと・・・・・・局長の乗っている車があるはずなんだよな?」


「お前、運転手にバイク見てもらうのも止めろと局長に言われなかったか?」


「しょうがないじゃん? 止めるところないんだから? 警視庁管内は路上駐車が厳しすぎて嫌になるよ」


 そう言った後に亜門は寿司屋の前に滑り込ませるようにKATANAを入れ込み、そのまま止めた。


「あっ、どうも」


 一瞬、運転手は頭を抱えたがすぐに「局長がお待ちです」とだけ言った。


「じゃあ、お願いします」


 そう言って、亜門は寿司店へ向かう。


「お前、局長のご意向があるとは言え、しょせんは一巡査なんだから、そういうのはよせ」


「別に図に乗っている訳じゃないよ? すぐ行かないと逆に失礼だろう?」


 そう言って、寿司屋の暖簾をくぐる。


「君は私の忠告を聞かないようだね?」


 久光は既に寿司を食べていた。


 こはだだ。


「急げと言われたのですが? お義父さん?」


「自信が付いたのは良いが、瑠奈に対してもそう言えるといいな?」


 痛いところを突くな?


 そう言われた、亜門は久光に「座れ」と言われて、隣に座ることにした。


「まぁ、冗談でお義父さんと言っただろうが、局長と呼べ。君からお義父さん呼ばわりされるのは腹立たしい」


「失礼いたしました。局長」


「失礼だと思うなら、バイクと服装を何とかしろ」


 そう言われた、亜門は「玉子」とだけ言った。


「年中、こういう店に通うから、寿司店の食べる順番は覚える」


「局長、亜門は父親に対する反抗をしているんですよ?」


 亜門の父は山口県警本部捜査一課の警部だったが、ロシアンマフィアとの格闘の末に殉職をした経緯がある。


 その後は亜門の母親が輸入雑貨店を行い、父親の遺産もあり、東京の三流大学である、私立グリン大学に通っていたが、亜門が六年前の秋から冬にかけて、警視庁の特務巡査として、活動したのがきっかけで、大学を中退し、正式な警視庁巡査として入庁をして以来、母親とは一切会っていない。


 理由は自分の亭主が警察官で殉職したのだから、せめて、息子には普通の仕事をしてほしいという親心が裏切られたかららしい。


 そこから、亜門は警察学校に入り、地域課も経験して、時期が来ると同時にISATの前身のソルブスユニットに編入、小野たちからすれば、待望の復帰が出来ることになった。


 その後、今はジンイチにいる進藤警部、当時警部補とバディを組んで、事件を解決していたが、徐々にチームは再編され、今では津上や海原に岩月などの若手が台頭し、進藤は警部への昇進と同時に特殊部隊から人事一課への異例の引き上げでISATを去った。


 そして、ソルブスユニット時代からの古参だった、高久警部補と島川巡査部長は警視庁だけではなく、大阪府警や神奈川県警にもISATが創設される事から、広域的な警察組織への技術伝承を行うために上層部から警察庁付属での教官係を命ぜられて、ISATを去った。


 そうして、かつてのソルブスユニットから今の若手主体のISATという名のチームが生まれたのだが、思えば、かつての気弱だった自分も若干は自信が付いてきたようには思える。


 そんな経緯もあるからだろうか?


 亜門は恋人の父親である、久光に父親の要素を求めているのかもしれない。


 まぁ、あくまで雲の上の上司なので、失礼のない範囲でだが?


「瑠奈には相変わらず、プロポーズは出来ないのか?」


「最大のチャンスで出動が掛かったんですよ」


「瑠奈はここ最近、マンションにも帰っていないそうだな?」


「仕事が好きなんですよ。手先が器用だから、まだ経験浅いけど、外科医としては優秀なんじゃないかと言われていますしね、研修医ですけど。 大体、僕に夕飯は肉を要求してきますし?」


 そう言った、亜門は「サバ」とだけ言った。


「君が実質的に家事、炊事、洗濯、ゴミ出しを行っているからなぁ? 同棲はしていないが君が瑠奈の家に泊まった時は自然とそうなると聞いている」


「えぇ、将来的に僕はマスオさんですよ」


 そう言って、亜門はサバを口に放り込む。


 良質で適度な脂とさっぱり感が口の中を覆う。


「タイミングは待っているぞ?」


「でしょうねぇ? 僕も何とかしないといけないと思うのですが?」


 すると、久光が「今日は作戦の概要を話すために呼んだ」と口を開いた。


「プロポーズのですか?」


「軍事作戦だ、バカ者」


 そう言って、久光はタブレットを取り出す。


「アークエンジェルはアメリカの高官が来日して羽田から赤坂の大使館へ移動する際にドンパチを起こすそうだ」


「頭のおかしな政治に溺れた人を成敗でしょう? アメリカ軍を出せばいいのに?」


「聞いてはいると思うが、アメリカ軍内部にも過激派が浸透している事が考えられる。そこは混成部隊だよ」


 それを聞いた、亜門は「タコ」と注文をする。


「ちなみに小野とも話したが、君と津上以外の第一小隊の要員は別件で横田へ先に向かってもらう」


「・・・・・・海原の狙撃能力が無いのが惜しいですね?」


 海原がウチの部隊に引き揚げられた際の経緯としては大学卒業後に警視庁入庁後、警察学校卒業した後に三鷹署地域課でくすぶっていたところを特殊部隊未経験ながら、進藤係長がISATに引き揚げたのだ。


 元々が長崎の高校に居た時に現地の原爆平和大使に選ばれて、将来の夢は警察官と言っていたのは良かったのだが、平和大使に任命する組織内に社会主義を掲げる組織が混じっているのは伝統的な事実なので、海原は大学在学中に警視庁の採用一類試験を受けて、合格こそしたが、そのような経緯があるので、思うような昇進も出来ず、憧れの捜査一課への配属も叶わず、進藤係長の計らいでISATに配属されたのだ。


 そんな経緯がある中で、特殊部隊員として頭角を現した海原の最大の武器は狙撃能力の高さだ。


 魔都の死神と称されている、海原の狙撃には年中助けられているが、それが今回は不在という形でその恩恵は受けられないのだ。


「新兵器の受領をして、早急に君らの支援へ向かう。というわけでお願いしたいのだが、君の狙撃の成績は悪くないと聞いている」


 久光は茶を飲みながら、笑う。


「CIAの情報によると、敵はスナイパーを準備しているそうだ。君は敵のスナイパー部隊が狙撃を行った場合にはカウンタースナイプに徹してもらいたい。これは小野隊長の決定事項だ。今から、狙撃に慣れるように努力してくれ」


「だけど、僕、ザルですよ? 海原とか進藤係長が異常に射撃センスがありすぎてーー」


「だが、悪くないとの情報は得ている。メシアでの格闘戦を目立つが、装備として、ソルブス用のスナイパーライフルを米軍から借りる。届き次第、撃って、本番までに慣れろ」


「ホタテ」


「エンガワ」


 亜門と久光は二人そろって、寿司を注文する。


「僕がカウンタースナイプですか・・・・・・」


「まぁ、俺がスポッターを務めるから、問題ないがな?」


 メシアがそう言うと、店に客が入る。


 瑠奈だった。


「よう! 一場巡査! それと局長!」


「よせよ、平の警察官なの気にしているんだ」


「瑠奈、私は仮にも父親だぞ?」


「今日は忙しかったなぁ! 患者、死ね! と思うぐらいの忙しさだったよー!」


 話を聞いていない・・・・・・


 そして、仮にも医者でありながら、患者をそう言う神経・・・・・・


 はっきり言って、壊れてやがる。


 その本人に至っては『モンスターな患者が一定数いるから、そういう奴は新薬の実験に使えば良いのに』とサイコパスな発言が多くなってきた。


「じゃあ、私も座るよ?」


 そう言って、瑠奈は亜門の隣に座り、腕を組んできた。


「局長が呼んだんですか?」


「あぁ、たまには一家団欒だよ」


 そう言って、久光は「はまち」とだけ言った。


「じゃあ、パパ、ゴチになります! 大トロ!」


 それを聞いた瞬間に亜門と久光はずっこけた。


「それは・・・・・・成金の食い方だよ」


「良いじゃん。私、お客なんだし?」


 そう言った、瑠奈の顔を店主が睨み始めるが、すぐに握り始める。


 何か、すいません。


 でもなぁ・・・・・・


 亜門は瑠奈が自分の腕に腕を絡めて来るが、胸が当たるので、若干、心臓の鼓動が高鳴っていた。


 瑠奈って、背は普通だけど、グラマーと言うか・・・・・・


 胸も小さそうに見えて、意外と大きいというか、大きそうに見えて、意外と小さいというか・・・・・・


 まぁ、要するに形がキレイだから、何というか・・・・・・


 何か、ドギマギするなぁ・・・・・・


 しかし、そのような形で瑠奈の甘い香りを嗅ぐ中で隣の久光は冷たい目で自分を眺める。


「時間は無いぞ?」


 久光は暗に自分に早くプロポーズしろと言っているらしい。


 分かっていますよ。


「中トロ!」


 ようやく、王道のメニューを頼んだ、亜門だった、



 治道は横田基地に戦闘機が止まっている様子を眺めながら、ブラックコーヒーを飲んでいた。


「アメリカ軍のコーヒーは苦いな?」


「コーヒーをこんな時間に飲んでいたら、寝れなくなるぞ? 少年」


 左手にはフェンリルドライブと呼ばれる、フェンリルを装着する際に使う、スマートウォッチがあり、ポケットには同様のスマートフォンもある。


 ジェイコブスにはアメリカが自分を擁護する間はフェンリルドライブと四六時中、一緒にいてもらうと言われたが、はっきり言って、良い迷惑だ。


「どっちみち、寝られるかよ? こんな状況で?」


 すると、そこにレイチェルがやってくる。


 金髪のブロンドの髪と豊満な体に目が奪われるが、当人は治道のそのようなスケベ心には気づいていないのか、こちらを見て、にこりと笑う。


「こんな時間にコーヒー飲んでいたら、寝られなくなるよ?」


 典型的なアメリカンイングリッシュだった。


「寝られるなら、寝ていたいさ? 夢ならばどれだけいいか?」


「コーヒーはブラック派なんだ? あんまり思春期の内にコーヒー飲み過ぎると体に良くないよ? 寝る子は育つって言うし」


「普段は飲まないよ。ただ、今日はどうしたらいいか分からないんだよ」


 そう言うと、レイチェルは外を見上げる。


 夜空には三日月が輝く。


 米軍基地なので、夜間も航空機が飛ぶかと思っていたが、周辺への騒音の問題などで訴訟が年中起きているので、一応は自重すべきタイミングでは自重して、ばれないようなタイミングで米軍は飛ばすと、ジェイコブスは語っていた。


「話、聞いてくれる?」


「話によるけど、何?」


「友達がいなくなったことだよ」


「・・・・・・聞こうか?」


 そう言って、レイチェルは月を眺める。


「・・・・・・アルテミスもそうだけど、柔道部の仲間やクラスメイトはみんな、死んだよ。今から、別の学校に行くにしても、日本では俺は在日であって、蔑視の対象さ?」


 レイチェルは変わらずに月を見る。


「かといって、アメリカに行ったって、俺は一人だよ。でもさ? アルテミスが初めてなんだ・・・・・・自分が初めて、努力すれば、友達も居場所も手に入れられると気付いた。初めてのそれを奪われたんだ。今から、アメリカに行ったって、俺は上手く行くか、分からないよ・・・・・・このままじゃあ、父さんの組織の跡取りになっちゃうよ・・・・・・」


 何で、こんな話を見ず知らずの少女にしているんだろう?


 気が付けば、治道は泣いていた。


 レイチェルは怪訝な表情を浮かべることなく、治道が泣いている様子を淡々と眺めていた。


「ピョンヤン・イェオンダエの話は聞いているよ。ただ、治道君さ? そんなに自分の父親が嫌い? お母さんはいるの?」


 レイチェルは純粋に分からずに聞いているように思えた。


「父さんは人を傷つけた上での犠牲で、飯を作って、金を手に入れている。母さんはそういうマフィアでの生活が嫌で韓国に戻って、別の男と結婚して、それ以来、会っていない。親なんか、誰も俺の望んでいることを理解していない。俺は悪人なんかになりたくない! ただ平和で平凡な家族が欲しかった! なのに、父さんはこうしている間にも犯罪で金を稼ぐ!」


 治道はそう言いながら「あぁぁぁぁぁ!」と叫び始める。


 レイチェルは何とも言えない表情でこちらを眺める。


 俺、凄く、格好悪いな?


 そう思った時だった。


「ごめん。私、親いないから、分からないんだ?」


 レイチェルは顔を背けながら、そう言う。


「そう・・・・・・」


「治道君はまだ、恵まれているよ。親がいるんだもの?」


 それを聞いた、治道は怒りを覚えた。


「俺はレイチェルがどんな環境で生きているかは知らないけど・・・・・・親が大悪党だったなんて、辛いよ? 在日であることもそうだけど、マフィアであることも永遠に抜け出せない、スティグマだよ。俺は・・・・・・普通でいたかったんだ」


 そう言うと、レイチェルは月を見上げながら「治道君ってさ? デザイナーベイビーって知っている?」と聞いてきた。


「概要だけはね? 遺伝子操作された新生児で、人口子宮の中でーー」


 そこまで話した、治道は驚愕を覚えた。


 レイチェルがアメリカ政府にここまで擁護される理由はそれか・・・・・・


 そして、アークエンジェルとかいう、テロ組織に狙われる、理由は恐らく、レイチェルが神の領域に触れた存在だから。


 だから、彼らからすれば、消さなければいけないのか・・・・・・


「ごめん」


「何が?」


「レイチェルがその・・・・・・その・・・・・・」


「察したんだね? いいよ、事実だから」


 そう言って、レイチェルはスニッカーズを取り出してきた。


「食べる? コーヒーに合うと思うよ?」


 甘いのは好きなんだけどなぁ・・・・・・


 俺はそう思いながら、スニッカーズを貰い、それにかぶりつく。


 レイチェルもスニッカーズを頬張る。


「明日、私たち、アメリカへ行くらしいよ? 私はその後にドイツか韓国に渡るらしいけど?」


「羽田へ行くの?」


「治道君、戦争物の映画を見るくせにそういうところ無頓着だね? 横田からワシントンへ向かうんだよ。本格的に私たちはこの国から逃げることになる」


「何で、レイチェルはドイツとか韓国に行くんだよ?」


「だからさぁ? デザイナーベイビーだから、キリスト教の福音派からすれば、神の道から外れた存在だからこそ、私を処刑したいのよ。アメリカのリベラル派の現政権が、私を守る為に日本に渡らせたんだけど、日本も危ない事が分かったからね? アメリカ軍の影響が及んで、身の安全が保障されるとしたら、ドイツと韓国しかないのよ。もっとも、この二か国は日本以上にキリスト教の布教率が高いから、私は疑問に思うけど?」


 それを聞いた、治道はジェイコブスから言われたあることを思い出していた。


「横田から、出ないの?」


「そうじゃない? 赤坂の大使館から国防総省の高官が来るらしいけど?」


 ジェイコブスは何を考えているんだろう?


 父さんを絡ませるにしても、ここまで警備が厳重だと、しょせんはマフィアでしかない自分たつも行動を起こせないだろう・・・・・・


「レイチェル、治道、何をやっている。早く、寝ろ」


 ジェイコブスがそう言いながら、近づいてくる。


「フレディだって、寝てないじゃん?」


「フレディ?」


「俺の愛称だよ? 言っとくが、俺はオジサン。君らはティーンエイジャーだから、成長ホルモンの違いがあるのさ? 早く寝ないと背伸びないぞ?」


「知らないの? フレディ? ティーンエイジャーの夜は深いのよ?」


「とにかく、寝ろ。明日、早いんだから?」


「・・・・・・分かった」


 そう言って、レイチェルは自分の部屋へと向かう。


「おやすみ、治道君」


 そう言って、レイチェルが手を振る中で、治道も一応は手を振る。


「ファーストネームで呼ばれるとか、治道も男だなぁ?」


「そんなことはどうでもいいけど、明日、父さんをどう関与させるんだよ?」


「おい、おい、ティーンエイジャーにとって、恋愛は重要イベントだぞ?」


「俺は韓流アイドルじゃないし、韓流ドラマの主人公でもないから、そういうのに疎いんだよ。旧北朝鮮系ってだけで近づく、女もいるけど、そういう奴は大体、俺個人のことは見えていなくて、大体が韓国に夢を抱いている連中だよ」


「お前、中々、ひねくれているなぁ? 俺は本格的にお前が好きになったよ。友達としてだが?」


「えっ、そういう志向?」


 治道がそう言うと、ジェイコブスは「友人としてだよ!」とだけ言った。


「友達になるにしても、歳が離れすぎていなくね?」


 すると、フェンリルが「友情に年齢差は関係ないと思うぞ? 少年」とだけ言った。


「その少年っての止めてくんない?」


 すると、ジェイコブスは笑いながら「お前らが名コンビになることを祈るよ。ちなみに言っておくが、大人の俺は裏工作が得意でね? 抜かりはないさ。お前たち、子どもは背を伸ばすためにも寝ろ」と言って、その場を去った。


「というワケだ。少年、動画を観ずに寝ろ」


「・・・・・・コーヒーでギンギンなんだけどな?」


 そう言って、治道はコーヒーのカップを洗いに向かった。


 スニッカーズの甘さも口の中にまだ残っていたのが、何故か、印象に残っていた。



 平日の朝早くに羽田空港にアメリカ国防総省の高官がやってきて、警視庁警備部は極秘裏ながら、警護活動を行っていた。


「僕が狙撃なんて、絶対にミスキャストだと思うんだけど?」


 そう言いながら、亜門は警視庁上層部から与えられた、スナイパーライフルである、ナイツアーマーメント社のM110K1を組み立てながら、そう言う。


「六年前に比べて、手慣れたな?」


「いや、海原には敵わないよ。扱い方も狙撃センスも」


 すると、津上が「嫌味にしか聞こえねぇんだけど? 俺は狙撃出来ねぇし」と口を尖らせる。


「いや、レイザは白兵戦用の装備主体じゃん?」


「進藤係長が現役の時は無理やり、狙撃用に改造していた時期があったって聞いたぜ?」


「お前、じゃあ、やれよ。嫌なんだ、狙撃」


「嫌だよ。俺はお前以上に下手なんだ」


 そう言い合いながらもマルタイ(警護対象者の意)を乗せた、車列は赤坂のアメリカ大使館へと向かうために赤坂・・・・・・正確には溜池山王の辺りの首都高都心環状線の出口を出ようとする。


「ISAT小隊から警備本部。マルタイは首都高C1出口へ到着」


〈警備本部からISAT小隊へ、ヘリコプター部隊によって誘導する。現在地を確認しーー〉


 そう通信をしていた、中道と浮田だが、そこに小野の舌打ちが重なる。


「明朝新聞のヘリがウチのヘリの進路を邪魔している」


「またですか? 多いですよね? 米軍にしても自衛隊やウチにしても?」


「報道の自由を履き違えているのよ。重大なミッションの途中なのに邪魔でしょうがない」


 確かにあの進路の・・・・・・渋谷方面の方向に報道のヘリがいるのは邪魔だな?


 場合によっては大使館で用事を済ませた後にそのまま、六本木の赤坂プレスセンターで米軍のヘリに乗り換えて、横田へ向かうかもしれないのに?


 後で本部が明朝新聞に抗議するだろうな?


 そう思った瞬間だった。


 何か、鉄の衝突する音が聞こえたと同時に明朝新聞の所有するヘリが突然、バランスを崩し始めた。


「どうしたの!」


「不明です! ヘリが突然、バランスを崩しました!」


「これは・・・・・・墜落する・・・・・・」


 浮田と中道が絶句する中で、明朝新聞のヘリは見事にマルタイの車列の前に墜落をして、爆砕をした。


 その際にヘリのブレードがはじけ飛んだが、警戒中だったので民間人や警察官に犠牲は無かったのが不幸中の幸いだった。


 しかし、首都高の都心環状線出口に落ちたそれは、間違いなく、自分たちの足を止めていた。


「恐らく、狙撃だな? ヘリのローターの部分を狙ったんだろう?」


「何で、無関係な報道ヘリを狙ったんだよ!」


 亜門がそう怒鳴ると、メシアは冷静に「見せしめじゃないか? 奴らは軽く、赤坂中の人間を人質に取っている。狙撃という手段ならば、無差別殺傷も可能だ」とだけ言った。


〈ISAT小隊! こちら警備本部! 状況を知らせろ!〉


「こちら、ⅠSAT小隊! 現在、報道ヘリが何者かに狙撃され、マルタイは棒立ちの状態! 誘導を願いたい!」


 すると、また金属音が聞こえ、今度は警視庁のヘリがバランスを崩し始めた。


 そして、警視庁のヘリも首都高環状線入り口を塞ぎ、二機のヘリの残骸が、目の前で障害となり、燃えている光景が広がっていた。


「最悪だ! あいつら、どういう腕してんだ!」


 津上がそう言う中で、レイザは「航空機はこれで使えずね」とだけ言った。


「民間人に犠牲が出ない分、幸いだけど・・・・・・」


 そして、どこからともなく、トラックが首都高都心環状線入り口の周囲に現れ始め、中から、迷彩服を着た、外国人達が雪崩のように現れ、一気にソルブスを装着して、マルタイへ向かって行った。


 アメリカ製の陸軍専用旧式ソルブスのアンゴレアスだ。


「亜門! すぐに出ろ!」


「作戦開始! ISATアルファ、ブラボー、チャーリーの各小隊はマルタイの警護と敵の排除を最優先!」


 小野とメシアがそう叫ぶと同時に亜門はメシアドライブがあることを確認して、トレーラーの外へと出る。


「くそぉ! 装着!」


 そう言って、亜門の体の周りを赤い閃光が包み、赤と白のパワードスーツを着ることになった。


「警視庁はまた失態な訳だ・・・・・・装着!」


 津上がそう言い放つと、青色の閃光が走り、青と白のパワードスーツに身を包む。


「ⅠSAT小隊、各員に告げる。現在、敵テロリストの歩兵部隊がマルタイへ攻撃を仕掛けている。各員は敵スナイパーの狙撃に留意しながら、歩兵部隊の排除に全力を尽くせ!」


〈ⅠSATブラボーワン、了解!〉


〈ⅠSATチャーリーワン、了解!〉


 中道と第二、第三小隊の小隊長たちがそうやり取りする。


 そして、各トレーラーから、自分達とⅠSATの第二小隊と第三小隊が一気にトレーラーから現れると同時に敵のアンゴレアスに銃撃を始め、相手も応戦。


 銃撃戦が始まった。


「敵にスナイパーがいるというのが事前に分かっているのが幸いだけど、CIAって凄いな? 事前に敵の情報が分かるんだもの?」


「まぁ、情報戦において、相手はザルだが、歩兵は中々で、スナイパーは特A級だな? 高い狙撃銃をアメリカ軍から警視庁が借りているんだ? 何としても潰せ」


「海原ぁ! 恨むぞぉ! 何で、いない!」


 そう言いながら、亜門は新装備の市街地専用のギリースーツを羽織った。


 この最新ギリースーツは透明になる機能が搭載されているが、相手が暗視ゴーグルを装備していると筒抜けになるという、装備で、レインズ社がまたもや警視庁にプロトタイプの試験を押し付けてきたのだ。


「相手は暗視ゴーグル持っているかな?」


「まぁ、朝だからな? 持っていないと思うが、護衛がいない方が、気付かれないからな? 一人で行け」


 そう言って、亜門が一人で赤坂のビル群の辺りを飛行していると、第二小隊のガーディアンサードの頭部に狙撃が当たる。


 脳みそがはじけ飛び、隊員は即死した。


〈秋山ぁぁぁぁぁぁぁ!〉


〈隊長! チャーリーフォーがぁ! 秋山が撃たれたぁ!〉


〈取り乱すな! 取り乱せば、スナイパーの思うつぼだ!〉


 秋山が撃たれたか?


 お笑い好きの良い奴だったのに。


「メシア、秋山巡査が撃たれた弾着から狙撃位置を逆算!」


「了解だ。すぐに出る」


 そうして、出てきた狙撃地点はここから、赤坂インターシティAIRの屋上からだった。


「あんな急な屋上から狙撃しているのか?」


「風の勢いを受ける中であの腕か? さすが特A級だな? しかし、ソルブスを装備しているから、出来る狙撃のやり方だ。あんな高層ビルの屋上に着くのも無理があるが、ソルブス装着時の超人的な能力と相手の狙撃技術が相まってーー」


「話が長い!」


 亜門はメシアの話を遮る。


 すると、二発目の弾丸が放たれたのであろう、断末魔の叫び声が聞こえる。


〈今度はブラボーファイブ! 丸山が!〉


〈丸山! 大丈夫か!〉


〈足が! 足がぁぁぁぁぁ!〉


〈落ち着け! 足だろう! まだ、死んじゃいない!〉


「詰めが甘いな? 敵のスナイパーも? 腕は良いが? 東京のど真ん中で狙撃するということを理解していない。大体が俺のような自立志向型AIがいて、狙撃地点の計算が出来ることも気付いていない」


 確かに詰めが甘い。


 腕は良いのにまるで、自分自身がここにいると言っているような感じだ。


 もっとも、これだけの警備をしていて、狙撃に関しては相変わらず、甘い警備体制を敷いている警視庁の失態であることは明白だ。


「恐らく、アメリカ軍ОBもいるから、砂漠や東アジアしか戦場を知らない田舎っぺだろうな? もっとも、台湾有事の際の台北の例があるがーー」


「カウンタースナイプの位置は?」


「ここだ」


 そう言って、山王パークタワーの屋上に着くと、急いでM110K1を構える。


 相手との距離は七八四メートル。


 周囲に高層ビルは無い。


 距離はかなり、遠いが、十分、カウンタースナイプは出来る。


「海原・・・・・・本当に恨むよ」


 相手は開けた高層ビルの屋上から狙撃している。


 だが、距離が遠い。


 僕の狙撃能力で倒せるだろうか・・・・・・


 そう言っている間にも狙撃は止まらず、一気にアルファ以外のブラボー、チャーリー小隊の中でも五人は何らかの形で死亡と負傷をしていた。


〈隊長、足がぁぁぁぁ!〉


〈落ち着け! 丸山! お前、サッカンだろう!〉


 仲間達の断末魔の叫び声が上がる中で、亜門はM110K1のスコープを眺める。


 そこには高層ビルの屋上でアンゴレアスに大きな通信用装備を施した、狙撃兵がスポッターと共に狙撃銃を構えていた。


「Mk11 Mod2か? 海兵隊使用の狙撃銃で俺たちの扱っている奴とは兄弟的な関係だ?」


「海兵隊か? ならば、東京で狙撃なんて、慣れていないだろうな?」


 そう言いながら、狙撃の照準を合わせる。


 今日の港区の気温は八度。


 風速は一・六から三・三。


 風速は正常。


 問題はミル(軍隊で使う角度の単位)だ。


ここから相手は七八四メートルにいるとして、それを脳内で割続けて、亜門はそこに千を掛ける。


 割り算の結果、これは割る対象は十が適当な距離になるから、これは十ミルの範囲だ。


 距離が遠く、かなり、高度な狙撃が求められるが、とにかく、考えている暇は無い。


 スコープの中心に相手のソルブスを入れて、照準を合わせる。


 風速が大体で四メートル以下で、右から左へ吹いている時点で、六十センチ右へ偏流。


 そして、仮に五〇〇メートルで撃つと、一メートル近くは弾丸が落ちる。


 これを計算して、一メートル上を狙う。


 つまり、スコープ上は縦のドットで十ミルのドットを使う。


「瑠奈・・・・・・当たらせてくれ!」


 何故か、瑠奈の事を思い浮かべながら、トリガーを引くと、スポッターの脳髄に弾痕が当たった。


「当たった・・・・・・」


 すると、すぐに反撃の狙撃が来る。


「来たか!」


「大丈夫だ! 相手は暗視ゴーグルを装備していない!」


 ならば、こちらに分があるか!


 そう思った、亜門は照準を敵スナイパーに合わせた。


 今度も外さない・・・・・・


 そう思い、一呼吸をした後にトリガーに指を掛ける。


 相手からの反撃が辺りに飛び跳ねるが、相手は自分の位置を分かっていない。


 そして、相手の動きが一瞬だけ止まった瞬間にトリガーを引く。


 すると、敵スナイパーの頭部から脳みそが弾け、見事に絶命した。


「ⅠSATアルファスリーから、ⅠSATアクチュアル(司令部の意)へ! 敵スナイパーを排除! 繰り返す、敵スナイパーを排除!」


 そう言う中でも、地上では激戦が続いていた。


 すると、上空に大きな飛行物体が現れた。


 アメリカ軍の大型輸送機である、Cー17だった。


〈こちら、ISATアルファツーだ。現在、新装備を持って、上空に到着〉


 広重かよ・・・・・・


〈ついに来たわね? 待っていたわよ〉


 すると、Cー17のハッチが開き、そこから大きな装甲車・・・・・・と言っても、タイヤのない、存在が降下された。


「何だ、あれ?」


「どうせ、またレインズ社だろう? それよか、亜門、狙撃で地上部隊を掩護しろ」


「了解」


 亜門はそう言って、M110K1を構える。


 上空からは謎の新兵器が降下をしていた。



「エンジン正常、ホバリングリニアシステムオールグリーン」


 岩月大輔巡査は新兵器の操作機器をいじりながら、効果準備に入る、その瞬間にどぎまぎしていた。


 ここにいる、広重や海原や自分も含めて、すでにガーディアンサードを装備した状況でこの新兵器に乗り込み、これから地上に放り捨てられるかのように降下されるのだ。


 緊張するなと言う方が無理な話だ。


〈東洋の島国のお巡りにこのⅠFⅤ(Infantry Fighting Vehicle 歩兵戦闘車)を付与することもあり得ないが、IFVをそのまま空中で投下するのも、問題あると思うがな?〉


 自分には理解できるが、相手のアメリカ兵の英語は典型的なアメリカンイングリッシュだった。


 すると、海原が「アメリカ軍の好意には感謝します。この新装備も使いこなして見せます」とネイティブ顔負けの英語で言い切った。


〈まぁ、タイヤが無くて、ホバリングしながら、道路を通行するから車両なんだろうが・・・・・・レインズ社もあんたたちを体のいい、実験体にしているからな? 申し訳ない〉


「いえ、ようやく、強力な装備が手に入りますから」


〈そのパチモンバットモービルで連中をぶっ殺してくれよ〉


 そう言って、アメリカ兵士との通信は切れた。


「お前ら、英語できるんだな? 俺、さっぱりだわ?」


 広重がそう言うと、海原は「分隊長が女の子の事ばかり、考えて、勉強しないからですよ」と手厳しい、言葉を放った。


「まぁ、いい・・・・・・それよか、大体、ソルブスって飛行機能あるのに、なんで、こんな装甲車に乗らなきゃいかんのだよ?」


「普通に考えて、歩兵よりも戦車の方が形状的にまだ有利だからですよ。各国が安価にソルブスを量産できる時代ですからね? それならば、お金ある前提でその二つを同時に乗せちゃえば万々歳ですからね?」


「岩月・・・・・・さすが、軍オタだ」


 そう言う中で、小野と通信が入った。


〈作戦状況は理解しているわね?〉


「はっ!」


〈機銃操作は海原巡査が担当。軽量砲は岩月巡査が担当。広重分隊長は操縦を担当。これから、投げ捨てられるけど、準備は良いわね?〉


「・・・・・・これ、タイヤ無くて、動くんですか?」


〈時代はリニアカーよ。投げ捨てられるのは嫌だろうけど?〉


 すると、そこにアメリカ兵の通信が再び入る。


〈降下させるぞ〉


「アイハブコントロール」


〈グッドラック〉


 そう言って、本格的に輸送機から降下・・・・・・というよりは投げ捨てられる準備が始まった。


「機銃及び、軽量砲などの武装も全て、クリア」


 すると、広重が珍しく、真面目な口調で言い放つ。


「これより、作戦を開始する! ソルブスモービル、起動!」


 ダサい名前だよな・・・・・・


 もろ、ダークナイトに出てくるバットモービルのパクリじゃん。


 そう思っている中でついにそのダサい名前のソルブスモービルは投げ捨てられた。


 機体が落下する。


「ホバリング起動」


 ホバリングが起動して、赤坂の道路へと近づくと同時に降下を始め、そこからリニアの機能が発動する。


 すると、道路に機体が付くことなく、見事に浮く形となった。


「マジで近未来だわ・・・・・・」


「一場と津上、第二や第三小隊を助けに行くぞ!」


 そう言って、広重がソルブス特有の強靭なパワーで車のアクセルを踏む宜しく、ソルブスモービルを起動させる。


 恐ろしい、機動速度で赤坂の街を駆け抜ける。


 すると、そこに敵の歩兵が現れて、こちらに攻撃を仕掛ける。


「市街地にまで連中が来ているのか? 海原!」


 すると、海原は外に頭と胴体を露わにする形を取り、機銃を掃射する。


 薬莢が激しく飛び散る中で、敵の歩兵はハチの巣になりながら、血を吹き出し、死んでいった。


「薬莢って、銃刀法的にまずいんじゃないですか? ここ、赤坂だし?」


「後で鑑識が拾うよ!」


 そう言いながら、広重がアクセルを踏み込み続ける中で、岩月はこの装備を警察が扱うことに恐怖を覚えた。


「まともじゃない・・・・・・」


「何か、言ったか!」


「何でもありません!」


 頼むから、俺の出番はないようにしてくれよ・・・・・・


 そう言う中でも、海原が機銃掃射でどんどんと敵の歩兵を惨殺していく。


 地獄だ・・・・・・


 時刻は午前九時十五分。


 赤坂の街は完全に地獄絵図の戦場と化していた。


  続く。



 次回、機動特殊部隊ソルブスウルフ。

 

 第三話 大罪の始まり。


 少年が純粋なまま、悪に染まる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ