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昭和二十年 七月二十八日 実方辰顕 朝
昭和二十年 七月二十八日 土曜日
最低気温24.5℃ 最高気温31.6℃ 快晴
朝、繁雪と紘は起きなかった。
大人達が、怪我人は寝かせてやろうと言うので、辰顕は二人を起こさなかった。
窓覆を開けて、眩しい陽光が部屋に入ってきても起きなかったので、二人とも、体が相当疲れているものと思われた。
綜は朝から俊顕や顕彦、栄と一緒に、軍服を着て出掛けてしまった。
辰顕は、誠吉と周と一緒に、畑に行った。
誠吉の働きは見惚れてしまいそうなくらい素晴らしかった。
畑から戻ってからの働きも、一体、如何いうわけで、こんなに草刈りや薪割りが早いのかと、辰顕が首を傾げたくなるくらいだった。
正直、紘より手際も良く、紘の分も充分働けていそうな気がする。
周は、其の静吉の働きぶりに、何度か、うひゃあ、と、喜びの声を上げた。
其の他は、何時も通りの朝だった。
成子と逸枝は、二人で堆肥小屋まで野菜屑を運んでいた。
貴顕は了の手を引っ張って、自分の家の庭から卵を取って帰ってきた。
朝の仕事が終わると、子供達は、何時も通り庭を走り回っていたし、初も安幾も、実に、何時も通りだった。
こんな朝には、辰顕には昨晩の事が信じられない。
結局誰にも、紘から聞いた話の内容を何一つ言えない儘、辰顕は朝の仕事を終えた。




