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さまようよろい そして別れ

 



「ふー......」


 聖女は息を吐く。彼女は山沢の起こした襲撃の後処理に追われていた。


(本当に、あのままだったら確実に滅ぼされていましたね......)


 しかし、彼女には朗報もある。魔王国ヴェイスの魔族が何故だかいなくなっていたのだ。


 結果、中央教会に正当性を訴えることができ時教国クロノアは存続を認められた。


(しかし、海皇国、そして商業連邦......)


 しかし、彼女にとって更に目の上のたんこぶができた。


 海皇国スヴィ及びマルナイ商業連邦だ。


 この二つの国はヴェイスの空白地帯を自分の国の領土だと主張。結果、合議に1日かかってしまった。


 しかし、クロノアはなんとかスヴィとマルナイから王都を奪うことができた。魔族がいなくなっただけで王都などの都は残っている。


(とにかく、まずは調査隊を出さなくてはいけませんね......)


 聖女は調査隊の編成をした。



 §



「......できた。」


 掲示板で質問後、華座理は人型の魔物を製作していた。横では河瀬がリスカしては眠りを何度も繰り返していた。


 その中で気づいた。防御力のあって、かつ弱点が狙いにくい魔物がいい。人型でも脳のない魔物がいい。そうして4日目に出来上がった魔物———今華座理の目の前にある。


 黒光りする魔物だった。鉄の飾り気のない鎧の魔物だった。鎧を着たわけではない、鎧の魔物なのだ。そしてそこに首はなかった。


 その魔物、リビングアーマーは静かに佇んでいる。


 華座理は作業台から立つ。ここ数日彼女は寝ていない、よって無視しているが体が限界なのだ。


「エントランスで構えておいて.....武器はそれ拾って......侵入者がいたら殺しといて......」


 華座理はそれを伝え、ふらふらとしながら横になり雑魚寝を始めた。


 残されたリビングアーマー、さながら黒騎士は命令を聴き、行動する。武器の剣を拾い、エントランスに出る。そして入り口の前に立った。



 調査隊の三人は王都に着いた。着いたはず、だった。


「なんだこりゃあ......」


 そこには王都がなかった。あるのは平原、王都跡と思われる荒野だった。


 これはある種当然であり、王都はダンジョン機能を使って作られたため初期化と同時に消えたのだった。


「どうします?このまま帰ります?」

「ばか、んなことできるわけねぇだろ!成果ありませんでしたで帰れるか!ただでさえネコババもしてねえっつうのに......」


 彼らは一足先に行かされ、野営場を設営する義務がある。その代わりといってはなんだが、兵士団内では調査隊は多少ならばネコババするべきという風習ができていた。


「じゃあどうします?元々探す予定だった王都無くなってますよ?」

「何って......あの真ん中の穴調べるしかねえだろ。まずはあれ探してからだ。ほら、行くぞ!」


 三人は進む。そして中央に着いた時、そこには地下に続く階段があった。


「あの......ここは入ります?俺怖いんすけど......」

「うっせえ。さっさと行くぞ」


 そのまま三人は階段を降りる。そして大広間とその奥にある扉にたどり着いた。


「おーし、じゃあ探させていただきますか......!」


 調査隊隊長が生き生きと入っていく。そして扉を開けた瞬間、


「お......?」


 隊長は視界が逆さまになった。何が起きたのか理解できなかった。目の前に黒い鎧があることだけが隊長に理解できた。


「た、たいちょう......?」


 そのまま意識を失った隊長を眺める隊員は状況を理解する。


 黒い首のない鎧の魔物が、隊長の首を切り裂いた。


「う、うわああああ!」

「う、うおおおおお!」


 二人の反応は違った。一人は逃げるもの、そしてもう一人は立ち向かうものだ。


 立ち向かう隊員は持っていた槍を突き出す。しかし避けられる。


 そのまま腹を貫かれて彼の人生が終わった。黒騎士は刺さったまま抜けない武器を放る。


「ひぃ、ひぃぃぃぃ!」


 そして逃げ出したものはなんとか階段まで辿り着く。あとはここを登れば———


「がひゅっ!?」


 しかし彼はできなかった。彼の胸からは拳大の氷の刃が生えている。黒騎士の放った魔法だ。


 そのまま彼はドサリと倒れた。残ったのは黒騎士だけだった。


 そのまま黒騎士は死体から剣を引き抜きエントランスに戻る。そして次の侵入者を待ち構えるのだ。



 §



「うぉぉ......」


 河瀬がエントランスにやってきた時、感嘆の息を漏らした。そこにいたのは黒い首無しの騎士だった。


「デュラハン.....?でも首持ってないし馬もいないしな......」


 河瀬は首無し騎士———黒騎士に近づく。そしてチョンチョンと触った。


「んー反応なし。やっぱこういうのは華座理じゃなきゃなー」


 無反応の首無し騎士を見て、河瀬は呟く。そしてエントランスを出た。


「おー壮観壮観」


 三つの死体の並ぶ大広間を見て、河瀬は言った。そして入り口近くの隊長の死体に近づき、


「これも生きるため.....全ては回っていくのだ」


 という言葉をふざけた口調で言い、装備を剥ぎ取った。


「おしおし、一回こういうの着てみたかったんだよなー。」


 剥ぎ取った装備を身につけて、河瀬は言う。元々の制服はリスカの血と華座理が開けた穴でぼろぼろと言ってもよかったのだ。


「って、やっば。華座理起こさなきゃ!」


 そして彼は黒騎士の横を抜け、マスタールームに戻っていった。



「おーい、かーざーりー!」

「んん......」


 華座理は自分を起こす声に目を覚ます。そこには河瀬がいた。


「ぉはよう、河瀬君......」

「おはよー、華座理」


 二人は挨拶する。華座理はこの5日間で河瀬のこういった感じに慣れきっていた。


 寝ぼけた目を擦る華座理。そして目を開くと為替の装備が変わっていることに気がつく。


「ふぁ......その装備、何があったの?」

「あ、そうそう!華座理、こっちきてくれよ!」


 そのままついていくと、そこには死体が三つあった。一つは下着のみだ。


「おお、なかなかいい感じ」

「だろ!?じゃあ運んで分解しようぜ!鎧さんにも手伝ってもらってさ!」


 華座理は扉を開け、そこで構える黒騎士に「死体運んで」と命令する。黒騎士と河瀬は共同して死体を一つ持ち、華座理は死体を二つ担いで行った。


 そしてマスタールームに辿り着いた彼女たちは兵士の体の分解を始める。


「おおー」


 ポイントを確認するとなんと200ポイント以上も入っていた。華座理は気分が良くなった。
















「でさでさ!華座理、俺そろそろここから出て行きたいんだけど、いいかな!?」














 しかし華座理のその気分は河瀬のその一言で消えた。


「え......」

「いやー、もう兵士の装備も手に入れちゃったからさ、俺ボウケンシャ?とかになってみたいんだよね。じゃあ華座理、バイバイ!」


 そう言って河瀬は去っていく。華座理はそれを呆然と見つめた。


 ここまででわかっている通り、河瀬は楽観的で自分を含めた命をなんとも思わず短絡的で刹那的で、そして薄情な人間である。そしてもう華座理のところにいるよりも楽しいはずのことを見つけたので華座理の場所から去るのだ。


 それを理解した時、華座理の目から涙が落ちた。


「あ......あ......」


 華座理は彼に出ていってほしくない。そう思った。だが彼を止めても彼はまた出て行こうとするだろう。


 それに気づいた華座理は河瀬に近づく。そして、



 河瀬の、頭を、貫いた。



 しかし河瀬は『超再生』の持ち主だ。そんなことはわかっている華座理は、倒れた河瀬の頭を何度も踏み潰す。


 河瀬の『超再生』と華座理の『再演』は燃費の面では華座理が上だ。また、この世界ではスキルの持ち主は生命を殺すたびに『格』が上がっていくという法則があった。


 既に二人殺した華座理と誰も殺していない河瀬では、華座理との耐久戦に勝つことはできなかった。


 ......もし勝ったとしても、黒騎士が河瀬殺しを何度も行って結局死んでいただろうが。


「あ......か、わせ、くん......」


 華座理はもう二度と動かない。もうどうやっても動かない。


「......」

『サブマスターの死亡を確認......死体をポイントに変えますか?』


 そこでコアから無情の声が響く。華座理はコアを向く。


「......変換する」


 華座理は河瀬をポイントに変えた。後には服だけが残る。ポイントを確認すると82ポイント増えていた。


 82ポイント。それが河瀬のポイント(価値)だった。


「......ハハッ」


 何故だか変な笑いが込み上げてきた華座理は、笑う。


「ははっ、ふふ、はふっ、ひひ、イヒヒッ、ヒヒヒッ!」


 笑う。咲う。微笑う。破顔う。そして、嗤う。


「あははははははははははははははははは!」


 そのまま華座理は笑った。



 華座理はしばらくの間、笑い続けた。




ごめぬ......バカっぽい作品書きたかったけどやっぱ女の子が酷い目に遭わなきゃ無理だった......あらすじとタイトル変えとくね......

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