立地オワタ\(^o^)/
「そういえば、このダンジョンって何処にあるの?」
マスゾンを覗いた華座理が達した結論は『何も買えない』ということだった。
マスゾンはフリーマーケット形式であり、他のダンジョンマスターが出品した魔物や奴隷、装備、そして設計図を買うことができる。
ただ、どれも100ポイントを超えていたし設計図に至っては一律10000ポイントからだったため、マスゾンの使用はいくら手に入れられるかわからないが当分不可能だという結論に達した。
これは高いのは何故かというと安いのくらい買うなら自分で作ってしまえるからである。
その旨を伝えるとダンジョンコアは『MASUZONNではなく物理的な外部から取り寄せてみてはいかがでしょう?』と言った。
そう考えた時華座理はダンジョンが何処にあるのか気になったので聞いてみる。何処の武器を手に入れられるのか、どんな魔物がいるか、それを確かめるために。
『それではこちらをご覧ください』
そうして出された電子地図には七つの大陸が写っている。地図は拡大され、そのうちの一つである右下の大陸に近づいていく。
『現在このダンジョンはウィルフルド大陸最東部の地下30mに位置しております。周辺には空白地帯を経て時教国クロノア、海皇国スヴィ、マルナイ商業連邦が面接しております。』
そうして映し出された画面には確かに三色の土地と円形の空白の土地、そしてその中央に浮かぶ画面についたゴミのような黒色のドットがあった。
「なんでこんなに空白の部分が多いの?」
『ダンジョンの初期化の際に支配権である魔王国ヴェイスが消滅したためです。現在この支配権は無人の土地となっております。』
「ええ......?」
それは余りにも厳しすぎるのではなかろうか?華座理はそう思った。
「戻すことってできない......?」
『不可能です。支配権登録のために地上に出ても確実に周辺の三国家に攻められるでしょう。ダンジョンマスターも今回のような事態を見逃すはずがなく、現在外に出るのは得策ではないと思われます』
「おおう......」
(これは......詰んだ?)
華座理は思った、ハードモードどころかルナティックぐらいの難易度だと。
実際その通りであり、大抵のダンジョンマスターはまずは生存圏外に出現。外部の植物や小動物を取り込み地道に増やしたり、やってきた人族をダンジョン内で殺害したりしてポイントを増やす。
だが華座理のいるダンジョンは周りが空白地帯のため、すぐに周辺国家が取り込むだろう。そして、魔王国ヴェイスの残党の警戒のために2か月ほど捜索をする筈だ。
ダンジョンには一つの法則があり、外部と必ず繋がってはならないのだ。そういうわけで、確実に華座理の今いるダンジョンは見つかるだろうという予想があった。
(あ......でも......)
確か時教国クロノアは中央教会に滅ぼされるとかなんとか、と聖女が言っていたのを思い出す。
「クロノアは滅びるって聞いたけど?」
『不可能でしょう。彼の国は恐らく今回の魔王国ヴェイスの滅亡を自らのものだと宣言いたします。事実ヴェイスの魔王......ダンジョンマスターはクロノアによって倒されているため正当性は少なからずあります。その功績をもって彼らの失態は帳消しになるはずです。』
「そっかー......」
クロノアが滅びててくれればよかったのだが、世の中はうまくいかない。
どうしようもないのだ。華座理は諦めようとした、だがそこでふと思う。
———ここで諦めたら河瀬はどうなるのか?
恐らくこのダンジョンに攻め込まれた際に河瀬も自分も殺されてしまう。そう考えた時華座理は諦めの考えを捨てた。
「......なら、どうすればいい?」
華座理は決意のこもった顔でダンジョンコアを見つめる。
『周辺から取り寄せるべきかと。マスターに搭載されたスキル『再演』をもってすれば雑兵程度ならば殺害可能です。』
「うーん......」
しかしダンジョンコアの返答は変わらない。そこで華座理は思い出す。そういえば、自分をこのダンジョンまで連れてきた魔族の青年がいたはずだ。
「エントランスにいる魔族の体を分解してどうにかできない?」
『不可能です。初期化の際に世界から魔王国ヴェイスで製造された魔族は消滅いたしました。エントランスを確認していただければ衣服、装備のみが見つかることでしょう。』
やっぱり出るしかないか。そう華座理は思った。
「ふぁぁぁ......おはよう!華座理!」
そこでやってきたのは河瀬だ。彼は欠伸をしながら華座理に挨拶する。
「おはよう河瀬君......気分はどう?」
「おう!バッチリだぜ!まあ服の真ん中あたりが空いててスースーするけど」
そこで華座理は思い出す、そういえば河瀬の胸に風穴を開けていたなと。
「そういえば、胸に開けた穴は大丈夫だった?痛くなかった?」
「ん?痛かったけどそれだけだしなぁ。それ以外なんともないぞ?」
河瀬はそう返答する。華座理は良かったと思った。
「ところで華座理、何悩んでたんだ?俺にわかることじゃないかもだけど一緒に考えることはできると思うぞ」
「あ、うん。えっとね———」
華座理は河瀬に伝える。河瀬は考える、どうすれば華座理を助けられるか。
しばらくすると河瀬は、
「じゃあ、ちょっと待っててくれ!」
と言って、エントランスに戻る河瀬。そして帰ってきた時には一本の剣を持っていた。魔族が持っていた剣だ。
「これここうして......こうじゃ!」
そう言って河瀬は自分の手首を切った。いわゆるリスカである。
「河瀬君......?」
華座理は河瀬のやっていることがわからず、訪ねる。河瀬はそのままダンジョンコアに
「じゃあこの俺の流れた血液を還元してくれ」
と言った。すでに傷口は塞がっている。
『血液分解中......ポイント還元完了しました』
華座理はマスゾンの残高を確認する。すると確かにポイントが24になっていた。
「河瀬君......」
「おし、じゃあもう一回だ!」
そう言ってまたリスカする河瀬。それを見て胸騒ぎのする華座理だったが、これ以外にいい方法がないのも確かなのでそのまま見守ることにした。
そして、また河瀬が眠るまでに溜まったポイントは128になっていた。
「これなら......いける?」
そう思った華座理はマスゾンを開く。条件検索の部分に『魔物』と打ち込み、ポイントが128までの魔物を探す。
「んん......」
しかしなかなかいいのがいない。そう思った華座理は自分で設計図を書き魔物を製造することにする。
「ねえ、ダンジョンコア?このままだとこの場所はいつ見つかる?」
『恐らく4日後には見つかるかと。それまでに先ほどの方法で作成できるのはいいところ500ポイントほどでしょう。』
「と言ってもなぁ......」
ここで華座理は詰まった。何せ華座理には戦いがわからぬ。故に戦いに何が強いのかもわからず、どう制作すればいいのかわからなかった。
「どうしよっかなー......」
『いかがなさいましたか?マスター・カザリ』
「んーとね......」
華座理は戦いがわからないので戦闘用の魔物が作れないことを伝える。すると、ダンジョンコアは一つのサイトを開いた。
『マスターちゃんねる』
そう題名されたサイトは、所謂掲示板だった。