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ゴミくず  作者: 多田のぶ太
3/9

3

「ユウミはいつもあんな連中と付き合ってるの?」

 舞は思わず単刀直入に聞いてしまった。オブラートに包むのは苦手な方だ。

 結局、テーブルから落ちたツミレは、マモルが目に見える小さな埃を取り除いて食べたし、秘密結社の話もうやむやのうちに終わってしまった。


「うん?結構楽しいよ?この前はスーパーの駐車場にアイドリング調査に行ったんだけどね」


「アイドリング?ゴミとか食糧廃棄とか関係ないじゃない」


「そうなんだけどね、資源が無駄に消費されるとかどうとかで、あと大気汚染やら温暖化やらいろいろあって、うまく説明できないんだけどね。それで、アイドリング調査に行ったんだけど、あ、行こうとしたんだけど結局行けなかったの。途中でマモルさんがゴミを投げ捨てた車を見つけて追いかけてね。カーチェイス、ハラハラドキドキだったよ。死ぬかと思った。あはは」


 死ぬかと思った出来事を楽しそうに話すユウミに、相変わらずだな思いながらと話を聞く舞。


「マモルさん、前はね、今もやってるのかな?知らないけど、アイドリングしてる車を見つけたら、その車のエンジンを止めてキーを抜いて、どっかに放り投げてたんだって。ね、面白いでしょ?」


「それって犯罪になるんじゃ?」


「うーん、そうかも。でもね、マモルさんに言わせると、鍵をかけてないヤツが悪いんだって。エンジン止めて、鍵をかけてから車を離れるべきだって。防犯意識を強化させるためにも役に立つって言ってた」


 確信犯か。悪いと思ってやってる故意犯と違い、自分が正しいと思ってやってるってことね。舞は父親が弁護士ということもあり、多少の法的知識は持ち合わせているようだ。でも、ホントに捕まって報道でもされたらどうしよう。知らないふりでもするしかないかな。もし父親に聞かれてもそういうことにしておこう。舞は心に誓った。


「ところでさ、ユウミって、マモルさんのこと好きなの?」

 相変わらずど真ん中の直球で聞く舞。


「え?え?え?なんでそう思うの?」

 動揺しているのが手に取るようにわかる。


「さっきからマモルさんの話ばっかじゃない」


「そうかなぁ?でも私は恋愛とかまだできないの。お兄ちゃんが結婚してくれなきゃ」


「お兄さん?」


「お兄ちゃんが結婚してくれなきゃ心配で自分の恋愛なんか落ち着いてできないもん」

前にも同じこと聞いた様な気がする。だが今回、舞はピンときた。


「あ、もしかして、それで私とユウミのお兄さん、えっと、ユウジさんだっけ、とをくっつけて、ユウミはマモルさんとくっつこうとしてるわけ?」


あたふたするユウミ。電話越しでもそれがわかる。どうやら当たったらしい。


「そ、そ、そんなつもりは無いんだけどね、もし会って、それで気が合うようならそれもいいかなって」


「ふーん、ま、いいけど。でも、オヤジギャグばかり言う人は正直疲れるよねー」


「ああ、確かに。じゃあオヤジギャグ封印させるわ。でも、できるかなぁ。ギャグのことだけに逆切れされるかも」


「あんたもね」


「え?何が?」


 自分がオヤジギャグを言っていることを自覚していないのか、あるいはそれもギャグで返しているのかわからない。もしかしたら、自分はオヤジじゃなくピチピチのOLだから何を言ってもオヤジギャグにはならないと勘違いしているのかもしれない。わからないので、最後の「何が」にツッコむことことができない舞だった。


 時計は十一時を指している。親ももう寝室に向かう時間だ。ユウミの部屋の壁は薄く、音はかなり両親の寝室にも聞こえるらしい。そのため声を殺しながら電話している。

 舞はというと、ベッドに明日着ていくスーツを並べて選びながら電話している。


 舞は賃貸マンションで独り暮らししている。ユウジのアパートほどボロくない。ちゃんとユニットバスも付いている。防音対策も施されているので普段話する程度の電話の声が隣の部屋に届く心配もない。

 ユウミはあいつのどこがいいんだろう。舞はそう思いながら、たわいのない話を続けた。


***


 仕事がずいぶんと遅くなり、駅に着いた頃は日付が変わっていた。駅から自宅マンションへと向かう舞。仕事はできる人が押し付けられる職場のやり方に憤慨するが、やりがいがないわけではない。ただ、仕事量に波があるのは何とかしてほしいと思いながら疲れた体を進める。


 路地裏に目をやると、ポリバケツにゴミを捨てている飲食店従業員の姿を目にした。今日もたくさんの食べ物がゴミとして捨てられているのだろう。時間帯はまちまちだろうが、スーパーでもコンビニでも高級レストランでも居酒屋でも、食べることができるのに捨てられる運命となった食品たちが、誰にも味わってもらうことなく、栄養になることもなく、ゴミ箱の中へ吸い込まれていく。養豚場の飼料となるのであればまだいい。餌にさえなれずに、ゴミの焼却施設へと運ばれる食糧たちが多いのも事実だ。この状況をマモルは懸念しているのだろう。気持ちはわかる。だが、どうすることもできないでしょう。飲食店を経営しているわけでもないし。いや、経営していたとしてもどうすることもできないのかもしれない。客が残した食べ物を自分たちで食べるわけにもいかず、使用期限の切れた食材を調理して客に出すこともできない。コンビニなどでも、消費期限の切れたパンやおにぎりは捨てるしか方法がない。コンビニでバイトしていたこともあるので、店側の立場もわかる。客が食中毒になってしまったら店としてはおしまいなのだ。

 信号待ちで立ち止まった時、ふと、何故こんな事を考えているんだろう、と思った。


 夏が近いとはいえ、まだ夜更けは肌寒い風が頬をすり抜ける。

 これまでは見てこなかった、目を背けていた食糧のゴミ問題。だが、考えたところで解決できるわけではないのだから、今までと何も変わらないのだ。結局頭の片隅に追いやることしかできない自分に苛立ちを覚えた。


 あいつだって、どうすることもできないはず。結局何も変わらないし、考えるだけ時間の無駄ね。


 自宅近くの公園に差し掛かった時、薄暗い中、垣根の向こう側に何やら動く気配を感じた。

 公園の中に照明はなく、街灯の光は公園の奥まで届かない。ベンチはほとんど陰になっているので、カップルにとってはうってつけのスポッとだったりする。先日は高校生らしき男女が接吻していた。今日もカップルがイチャイチャしてるのかもしれない。でも、ちょっと気になるので、前回同様、そおっと覗いてみた。


 晴れた休日の日中には親子ずれで賑わうこの公園だが、今はひっそりと静まり返り寂し気な様子を醸し出している。月も星も雲に隠れているせいか、さらに暗闇が広がっている。こんなところに不審者が出没しそうだ。そんな考えが一瞬頭をよぎり、好奇心で覗いてみたことをちょっと後悔した。

 ベンチの上には誰もいないようだ。だが、ベンチの脇に小さい影があり微かに動いている。ガサガサと音がする。その瞬間、その影が大きくなった。人が立ち上がっただけなのだが、舞はそれに気付くのにも時間がかかり、ビクッとしたまま、しばらく動けなかった。人影はこちらに気づいた様子で、コツコツと足音をたてながら近づいてくる。手からはビニール袋らしきものがぶら下がっている。舞はゴクリと唾を飲み込んだ。何かの犯行現場を目撃してしまったのかしら。口封じに何かされるのかも。そう思ったが、蛇に睨まれた蛙のように身動きが取れない。息ができない。


 その時スゥッと雲が動き月が顔を覗かせた。もちろんその時だけ雲が動いたのではなく、大きな雲が風に乗って動いているところでその隙間から月が見えたに過ぎない。その僅かな月明かりが人の顔にぶつかる。見覚えのある顔だ。舞はゆっくりと息を吐きだした。久しぶりに呼吸ができた気がした。


「こんばんは。何?こんな夜更けにゴミ拾い?」

 舞は冗談のつもりでそう尋ねた。


「ベンチの下に空き缶が落ちてたから」そう言いながら手に持っていた袋を開いて見せる。コンビニでもらうようなレジ袋の中には、コーヒー缶、ビール缶、それとタバコの吸い殻が入っていた。


「本当に?こんな時間に?そんなに好きなの?」

「いや、コンビニに行った帰りにたまたま見かけたから拾ってただけだよ」

 マモルはポケットから缶ビールを取り出して舞に見せた。会計が終わった印のテープも貼られている。


「あ、この袋も拾ったものだよ」

 舞が聞く前にマモルは自分から言った。


「エコバッグは持ち歩かないの?」

「エコバッグねぇ…。これしか買わない予定だったからね。でもさ、エコバッグって言うけど、なんでエコなの?材質が再生プラスチックだったりするから?レジ袋が不要になるから?なんかさ、いろんな種類のエコバッグと言われるものがあちこちで販売されてて、エコバッグ自体がゴミになるんじゃないの?って思うくらい。それのどこがエコなんだって思っちゃってさ。だからエコバッグっていう呼び方は抵抗があるんだ。マイバッグでいいじゃん」

「ふーん。私はマイバッグって言い方に抵抗があるけどね。まるで私のバッグみたい」

「あぁ、なるほど」

 名前が舞だと、マイバッグと言う呼び名が嫌なのか。マモルはそう思いながらうつむいた。

「えー?今のは笑っていいとこですけど?」

 顔を上げて不思議そうな表情で舞を見るマモル。マモルにはどこが笑うところなのか理解できなかった。


「まいっか。それより、ビール買ったの?カエルなんでしょ?」

 半分馬鹿にしたように笑った感じでマモルに尋ねる舞。

「うんまあ、飲めるようにならないと。酒の席で、飲み残されたビールを残さないためにね」

「え?本気で?お酒飲める人でも、大量に残った酒を飲むと酷い目にあいますよ。吐いたり記憶飛んだり」

 舞は過去の悲惨な思い出を呼び起こしながら、頭を振ってその思い出を追い払おうとしている。

「なんでそんなに残すんだろうね。飲む分だけ注文すればいいのに」

「そうなんですけどね……」

 注文する時は飲むつもりであっても、半分ほど飲んだところで気持ち悪くなって残すことが度々あったので、言葉を濁して苦笑いするしかなかった。


「ねえ、ゴミ拾いが趣味って、本当なの?」

 そう問いかける舞に対して、溜息まじりに答えるマモル。

「外科医がさ、趣味は手術だって言ったらどう思う?」

「何それ」

「患者がたくさん居ると喜ぶ医者ってどう?嫌じゃない?病気で苦しむ人は少ない方がいいと思うんだ。

ゴミも、落ちていたら拾うけど、落ちていて喜ぶことなんてないよ」

 ゴミは街にとっての病気で、それを取り除いている、そういう感覚なのだろうか。舞はそう解釈した。


 ふと、マモルは公園出入口付近の植木の下に転がっている缶を見つけた。

「ほんと多いよな」とブツブツ言いながら缶を拾うマモル。


 そのうしろから男の声がした。

「こんな時間にゴミ集めしてるぞ。ホームレスか?」

 見ると若い男女が腕を組んで歩いている。

「そんなに欲しいならこれもくれてやるよ」

 男はそう言って空缶を放り投げた。カランカランと静かな公園に響き渡る。

「ちょっとやめなよ」一緒にいる女は言うが

「別にあいつが拾わなくても、町内会でゴミ拾いしてるんだから大丈夫だって。むしろ仕事を与えてやってるんだぜ」

 溜息混じりに男が捨てた缶を拾うマモル。缶を手にして体を起こした瞬間、舞がその缶を奪い取った。そのままヒールの音を響かせながら男に近づき缶を突き出す。

「ゴミはくずかごへ!小学生でもできることを大の大人ができないの?」

 男は目を丸く見開いて舞を見た。

「町内会だって好き好んで掃除しているわけじゃないんだから。掃除しなくていいくらい常に町が綺麗なら余計なことをしなくて済むの」

 町内会行事に参加したこともない舞だが、いかにも大変な思いで掃除しているような口調で話す。

 男は手渡されたアルミ缶をクシャっと握りつぶした。

「ねぇ、もう行こ」

 怒鳴ってくるか暴力に出るか、身構えていた舞だったが、一緒にいた女にそう言われて二人はその場を後にした。


 胸を撫で下ろしつつマモルの元に戻ってきた舞。マモルはブツブツつぶやいている。

「あいつが社会のゴミだ。死ねばいいのに」

 舞にはそう聞こえた気がした。月も再び雲に隠れ、街灯だけの灯りを頼りにそれぞれが自宅へと足を運んだ。


***


 タダシとユウジは居酒屋から外に出た。二人とも程よく酔っている。

 ユウジはもう一軒行こうと誘ったが、タダシは妻子がいるのを理由に断った。

「じゃあ、また今度な」そう言って別れようとしているところで、罵声が聞こえてきた。


「この前はよくも女の前で恥かかせてくれたなぁ!」

 5人くらいの若い男に女性が一人絡まれている。


 あまり関わりたくないところだったが、その女性に見覚えがあった。ユウミの友達の舞だ。

 タダシとユウジは顔を見合わせ、無言でうなずいた。

 ユウジが近づいていき、舞の腕をつかんで引っ張り、タダシの方へと渡す。


「何があったか知りませんが、女性一人に男五人ってどんなもんですかね?」

と割って入るユウジ。

 舞はタダシに受け止められて、見覚えのある顔に安堵した。

「あ、ユウジさん、タダシさん、この前ゴミをポイ捨てしてたのを注意したことに腹が立ったみたいで」

 その男が仲間を連れていたところに、偶然鉢合わせしたのか、待ち伏せされたのかはわからないが、文句を言ってきたとのことだ。


「てめぇ、ボコボコにされてえのか!」

 ガタイのいい男がユウジに向かって怒鳴る。指を鳴らしたり腕を回したりして、いかにもという具合に攻撃態勢を取っている。


「ユウジさん、大丈夫なの?」

 舞は心配そうにタダシに聞いた。

「あいつは大丈夫だよ。空手やってたしね」

 気の優しそうなユウジは、身体(からだ)はガッチリしているが、見た目スポーツが得意そうにも見えなかったので、舞は驚いた。


「そうなの?強いの?有段者?」

「いや、段とかは取ってないんだけどね…。まあ、安心して見てなよ」

 安心してとは言われても有段者ではないことで、いささか不安になった舞だが、黙って様子を見ることにした。

 ユウジは空手をやってたというだけあって、サッと構えて相手の攻撃に備えた。

 パンチを上段揚受(じょうだんあげうけ)で受け流し、ローキックを下段払いで止め、中段蹴りを両腕を交差させてガード、後ろにも目があるかのように背後からの攻撃も軽やかにサッと避ける。

 五人掛かりの攻撃を喰らうことなく見事に受けている。

 が、その様子を見ていた舞は違和感を感じた。


「空手ってよく知らないんだけど、相手の攻撃を受けた後って突いたり蹴ったりするんじゃないの?」

 左腕の中段外受で攻撃をかわしたら右腕で逆突きする、そういうイメージを言っている。タダシも、舞が言いたいことはわかっている。


 ユウジはサッとジャンプした。飛び蹴りが繰り出されれば、相手の一発KOは必至だという絶好のタイミングだった。だがユウジの脚が前に出ることは無く、そのまま着地。ただジャンプしただけだった。

「あいつは優しすぎるんだよ」

 タダシが事情を話す。

「優しすぎて、攻撃できないんだ。ただ、受けるだけなら天下一品、黒帯相手にも負けないよ」

 もともと気が優しい性格のユウジは、人を守るためにと習い始めた空手だったが、練習中寸止めさせるべき攻撃を勢い余って相手に当たってしまいケガをさせた過去があるのだった。正確に言うと、ユウジはちゃんと止めたのだが、相手がバランスを崩してよろめいたため、ユウジの拳が当たってしまったのだ。たいしたケガではなかったのだが、ユウジ自身の心に受けた傷の方が大きかった。その時から寸止めであっても攻撃の手が出せず、結果昇級試験も通らなかった。もともと級や段や帯の色に興味を持っていなかったユウジはその後もひたすらに受けだけを練習していた。『型』も体で覚えてしまっているが、攻撃のところになると、体重移動や足の運びは攻撃体勢になるのだが、腕が伸びない。肩までは力が入る。こぶしや手刀もしっかり作る。だが相手の方に繰り出されることは無い。蹴りにしても同様だ。膝が伸びない。しっかり攻撃を繰り出していれば、一分もかからず決着がつくくらいの技量の差が素人から見ても分かる。ユウジの動きは無駄がなく流線形を描き、見ていて美しいものだった。


 男五人はダメージにならない攻撃を繰り返してバテてきていた。ユウジはもともと空手で鍛えた体力もあるのだが、無駄な動きをしていないため、平気な顔をしながら攻撃を受け流している。フラフラな足元で無理に攻撃を繰り出す男たちは、勝手に転んでケガをしている者もいた。ユウジがよけたことで仲間からのパンチを喰らい、鼻血を出している者もいた。ユウジは他の攻撃をよけながら、ケガをした男たちに「大丈夫?」と声を掛けている。

 男たちは疲れ果て、「覚えてろよ!」と捨て台詞を吐いて去っていった。

 その様子をユウジは心配そうに見送っている。

「ユウジさん、ありがとうございました」

「ああ、うん。でもあいつら大丈夫かなぁ」

 優しすぎるユウジはケガをしていった男たちの心配をしている。


「でも、酔いが醒めちまったな」タダシがつぶやく。

「二人で飲んでたの?マモルさんは?」

「あいつは面倒くさいからな」とタダシ。

「店に飲みに行くときは、たいていタダシと二人だね」とユウジ。

「マモルは、割り箸使うと怒るし、食べ物を残すと怒るし、窮屈なんだよな。舞ちゃんもそう思わない?」

「え?二人はマモルさんの友達じゃないの?」

「いや友達だけどさ、それとこれとは別でしょ」

 二人は口を揃えて言う。

「あいつの言いたいことは、分からなくはないんだけどね」

 舞が二人を怪訝そうな顔で見ていると、タダシが付け足したように言い出した。

「もちろん、尊敬する面はあるよ。芯が強いしブレないこととか、面倒なことでも一生懸命やってることとか」

「ああ、こまめに電気消したり、ゴミ拾ったり、分別したり、な」

「行動力もあるよね」

 マモルの良いところを言い合う二人。

「大事なことだと思うんだよ。マモルがやってることは。環境保護とかさ」

「でも、とても真似できないんだよね」

「ついつい忘れたり、面倒くさくなったり。自分に甘いのかもな」

「そういうところをマモルに見られると、文句言われるしね。だから面倒くさくなって、遊ぶのもなかなか誘えなかったりするんだよね」


「なんだ、二人ともマモルさんと同じ考えなんだと思ってましたよ」

と舞が口を挟む。


 舞は、二人の気持ちを知らないマモルが滑稽であり可哀そうにも思えた。

「マモルは暴走するところがあるからな。俺たちはそれを止める役目ってことかな」

 タダシが遠い目線でつぶやいた。

 そういう関係性ってあるのか。半分納得しつつも、いまいち理解できていない自分もいる。

 友達って、何なんだろう。

「仕事も結構変わってるしね。転職って意味ね。根気があるようで無いのかもしれないね」

「いや、あいつは芯が強すぎて、会社とうまく行かなかったらしいぜ」


 舞は二人に挨拶をして帰路についた。閑散とした夜の町をヒールの音を響かせながら歩いた。



ご拝読、ありがとうございます。

誤字脱字等ありましたら、遠慮なくご指摘ください。


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