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異能力学園の覚醒者  作者: 氷麗
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入学式 1


月日は流れ、桃色の花弁が無数に宙を漂う季節。


天翔学院の新入生達は学院の門を通り、比較的新しく綺麗な校舎へと向かいそれぞれに想いを抱きながら花弁の中を進んでゆく。

 

そしてその生徒達の中に白亜・智夜の両名もいた。

白亜は敷地内を歩いていた生徒達を眺めながら呟く


「…あまりパッとしませんね、中学の頃とほとんど変わりません。もう少し個性的な面々が集うとばかり思っていました。」


「能力者とはいえ大体はこんなものですよ?

お嬢様が特別個性的…いえ、魅力的なだけです。」


「…急に馬鹿なことを言わないでください。」


他愛のない話からサラッと褒められた白亜は前髪を少し弄りつつ目を逸らす

智夜はそんな主人を横目で見れば満足げにくすっと笑いつつ、視線を前へ移すと話している間に随分と進んだようで校舎の入り口に新入生はこちらと言う張り紙がされているのが見える。


「新入生入口はあちらのようです、早めに入っておきますか?」


「…そうですね、校舎探索もどうせ時間が出来た後にでも出来るでしょうしとりあえず…っ、すみません。」


校舎に先に入るかどうかの返答に若干悩み立ち止まると後ろから歩いて来た人物と肩がぶつかる。

急に立ち止まった自分に非がある為、ぶつかって来た青年に対して白亜は謝りつつそちらを見た


「いや…俺も前を見ていなかった、すまない」


深い黒髪の青年は一瞬だけ白亜と目があったが彼はすぐに目を逸らし、一言そう言うと先に歩いて行ってしまった。

向かった方角から彼が一年生だと言うことはそれで分かったが初対面であるはずの彼をどこかで見たことがあるような気がするのか白亜は少し考え込むようなポーズになる。


「大丈夫ですか?急に立ち止まると危ないですよ。」


「わかってますよ、それより智夜さんは彼を見たことありますか?」


「今ぶつかった彼ですか?…どうでしょう、正直自信はありませんが見覚えはあります。

お嬢様は黎様ばかり見ていらっしゃったので覚えていないかもしれませんが、黎様には一つ下に弟様がいたはずです。

雰囲気こそ変わってしまいましたが彼なのではと。」


白亜はそれを聞くと納得したようにああと呟いた。


「…黎さんの弟であるのならきっと彼も優れた方なのでしょう、何もせずともいずれ顔を合わせることになるでしょうね。」


どこかで見たことがあるような気がしていた正体がわかりモヤモヤが解消された白亜は一息つくと同時に再び歩き出す。


正面ゲートを潜れば白亜と智夜は新入生として講堂まで案内された、とても広い学校なので講堂まで行くにもそれなりに歩くことになる。


講堂は到着すると、そこはまるでクラシックコンサートや、オペラに使われてもおかしくないほどに広く、ステージ付近には美しい装飾があしらわれていた。


まだクラスは張り出されていないのでこの時点の始業式では自由席に座ることになるのだが、白亜には既に別の席が用意されていた。


そう、首席で入学した彼女は新入生代表なのだ、その為白亜の座る席はステージに近く、教員達とも近い。

その分一般生徒とは少し離れた場所にある。

白亜は離れた場所にある自分の席を見つけると智夜に声をかけられた。


「お嬢様、緊張して噛まないよう気を付けてくださいね。」


「…そんなことはありえません、私を誰だと思っているんですか?」


「そうでしたね、では撤回して別の言葉を…頑張ってください。」


「…はい、しっかりと私の勇姿を見ていてください。」


白亜は智夜としばしの間別れつつ、指定の席へ向かうと役員から軽く始業式流れを聞かされる。


その確認が済む頃には開始時間までもう数分もない訳だが、正直いたたまれない気持ちでいっぱいになった。


ステージに近い位置と言うこともありとても会場の生徒から見やすい位置にこの椅子はある。

自信が目立つ容姿をしていることは自覚しているし、これまでもそう言う経験は多々あった。


しかし、今日は首席としての答辞や入学初日という緊張は多少なりともある、その上智夜も近くにいないこの状況は極めて珍しく気持ちがどうにも落ち着かない

かといって残り時間数分の間を立ち歩くという気分なもならずない。


結果取った手段は【無心】だった。


もはや何も考えず、目を瞑り静かにしている白亜だったが不意に声をかけられた


「もしかして白亜か?」


白亜は視線を上げるとそこには深い黒髪をした青年ーー珀神黎だった。


[珀神黎]


彼は白亜より一つ年上で天翔学院の二年生。

深く黒い髪とワインレッドの瞳が特徴的であり、白亜が幼い頃に何度か面倒を見てもらった事がある。


想像していたよりもずっと大人っぽく成長していたが、一目で彼だと認識する事ができた。

幼い頃自分によくしてくれた頼れるお兄さん、そんな雰囲気は相変わらず残っていたのだ。


「…お久しぶりです、黎さんですよね…?

なんだか記憶よりもとても大人っぽくて、少し変な感じです」


「白亜こそ、昔から綺麗になるだろうとは思っていたが…正直想像以上だ、また会えて嬉しいよ。

ネットニュースを読んだが随分活躍してるみたいだな?」


白亜と黎は久しぶりの再会を喜びつつ、お互い何気ない会話をしているとふと疑問が浮かぶ。


ここは一般生徒が来る席ではない、しかし黎はここにやってきたのだ、自分に挨拶をする為だけにここに来たわけではないだろうと思ったのだ。


「そう言えば、黎さんは何故こちらに?」


「…?ああ、ここ辺りなら何処でも良かったんだが途中白亜を見つけてな、緊張してるんじゃないかと思って」


ここに来たのは白亜のせいだった。

どうやら白亜が緊張している事に気付かれていたらしい、先輩である黎に気を使わせてしまったようだ。


しかしここは一般生徒が座っていて良い席ではない為、これ以上の話は式の後の方が良いだろう


「…心配をおかけして申し訳ありませんでした、そろそろ始業ですし、私はもう大丈夫なので戻ってください。」


「戻る?いや、ここで大丈夫だぞ?」


「いや…でも…」


白亜はなんとか黎を一般生徒席に戻さなければと言葉を選びながら話すものの、黎は大丈夫だと言ってその先を動かない

このままでは黎が怒られてしまう為どうにか戻ってもらわなければと白亜は考える


「何をそんなに心配してるんだ?」


黎は首を傾げながら白亜の顔を覗き込む、白亜はこのままでは埒があかないと思ったのか失礼を承知で覚悟を決めた


「黎さん…ここは一般生徒が座る席ではないんです、ここに座り続けていると黎さんが怒られてしまいます…ですから、一般席は戻ってください…」


白亜は言った。

めちゃくちゃ気まずいがちゃんと言った。

言われた側の黎はと言えば、キョトンとして何を言われたのかまだ理解していないようだ。


『生意気だと思われたでしょうか…』


白亜はぎゅっと手を握りつつこの嫌な沈黙に目を閉じる


その沈黙を先に破ったのは黎だった。


「そうか、俺の心配をしてくれてありがとう、でも俺は怒られないから大丈夫だ。」


黎は不安げにこちらを見る白亜の頭をポンポンとしながら続ける



「俺は今季の生徒会長だからな」


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