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異能力学園の覚醒者  作者: 氷麗
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覚醒者


この世界には【異能力】と呼ばれる力が存在する。


そして自然にその【異能力】を持つ人間のことを世間では【異能力者】と総称するようになる。


能力者たちはこの国の総人口の約3割と決して少なくない数存在しているが、その中でも特別な能力に目覚めた能力者たちのことを尊敬と畏敬の念を込めて【覚醒者(かくせいしゃ)】と呼んだ。


プロローグ


「や、やめろ…やめてくれ、俺たちが悪かった…‼︎だから、だから命だけはっ…ヒィッ!?」


ガラが悪く体の大きな男三人組はみっともなく尻を地面に擦り付けながら後退り目の前にいる少女に命乞いをしていた。


「おや…命乞いですか?ふむ…そうですね、どうしましょうか…」


雪の妖精のように美しく、そして愛らしい恵まれた容姿を持つ少女[雪之丞白亜(ゆきのじょうはくあ)]は男たちにゆっくりと歩み寄りながら、自身の顎先に指を当てうつむき思案する。


そうして数秒ほど悩み、白く美しいセミロングの髪をセミロングさらりと指の甲で流すような仕草で垂れてきた前髪を耳にかけると思わずうっとりしてしまうような美しい笑みでクスッと微笑んだ。


男たちは目の前にいる少女が敵であるということも忘れ見惚れてしまう。

が、次の言葉でのんきな男たちの表情は青ざめた。


「わかりました…私も悪魔ではありませんからね、反省しているのなら慈悲を与えましょう…。

出来るだけ、極力苦しまないようにしてあげますよ…ですがその感想を直接聞けないのは残念です。」


「なんっなんで!!出頭するっ!!もう悪さはしねぇっ!だからっ!!」


「…あなたが出頭する、悪さをしない…それってあなた方の存在が消える以上のメリットですか?

消えてしまえば悪さもされませんし、国が罪人であるあなた方の為の生活費や指導費、その他雑費を税金で賄う必要もありません。

ふぅ…なんだか疲れてしまいました、終わりにしましょうか。」


うっすら開かれた瞼の奥に光るサファイアのように深いブルーの瞳はその美しさと反比例するようにあまりにも冷たく男たちを見下す、そうして女は残酷な言葉を男たちに伝えるとともに周囲の温度は一気に低下していき、恐怖と寒気に男たちはガクガクと震えあふれだした涙や鼻水さえも凍り付く。


「それでは皆様、ごきげんよう。」


男たちの視界はその言葉を最後に真っ白になった。


_________________________________________________________________________________________


「お嬢様…また一人で無茶をしましたね?」


「失礼なことを言わないでください、あの程度の雑魚能力者を3人相手にする程度なんてことありません。」


その事件のあった日の夕食の時間。

食事をとりつつ優雅に紅茶を飲んでいた白亜はその従者である[夜兎神智夜(やとがみともや)]に給仕されつつ小言を言われていた


「有事に控えていなかった貴方が悪いんですよ、執事失格では?」


「それはお嬢様が私に無理難題を…はぁ、私が悪いのでしょう…力が至らず申し訳ありません。」


従者である智夜は白亜と同じ年齢であり、男性にしては長めの綺麗な黒髪、優しげな印象のある栗色の瞳をしており、整った顔をしており眼鏡をかけていることもありとても落ち着いた様子の男性だ。


執事である智夜は主人の少女に強く出ることは出来ないので片手で頭を抱えつつ深い溜息を吐きながら確認する


「それはそれとして、殺していませんよね?」


「ふむ…どうでしょう?加減はしましたがあまりにも弱すぎたので。」


「お嬢様、私は真面目に聞いているのですが」


従者である智夜は自らの主人の頬に手を添え、無理矢理に自分の目と目を合わさせる。


「むぅ…殺してませんよ…当たり前でしょう。」


ーー回想中ーー


『それでは皆様、ごきげんよう。』


その言葉と同時に放たれたダイヤモンドダストの波は男たちの目の前まで迫ったもののそれはギリギリで上方向へと反れていたのだ


『クスクス…冗談ですよ、本当に殺すわけないじゃないですか…大の大人がそんな顔を…おや?もしもし、大丈夫ですか?…はぁ、安堵に情けない顔をしている大人が見れると思っていたのですが…情けないにも程がありますね。』


それでも凍える寒さということは変わりなく男たちはその寒さと恐怖から意識を失ってしまっていた。


中には失禁をしている男もおり、あまりにもこの様は情けなさすぎではと呆れて果てながら彼等を探しているであろう警察に連絡をして警察到着と共に入れ替わりで白亜はその場を後にした。


ーー回想終わりーー


「さようですか、なら良かったです。」


智夜の手から解放された白亜はふいっと顔をそらし、不満げに言葉を続ける


「あんなに気が弱いのなら初めから強盗などしなければ良いのです、ああいう連中のせいで能力者が白い目で見られるのですから…もう少し自覚をですね…何故こちらを見ているんです?」


「…はぁ、確かに、お嬢様はもう少し自覚を持った方がよろしいかと…」


「それは従者としての自覚があっての発言ですか…?

なるほど貴方は職を失いたいらしいですね、貴方のお父様に話をつけましょうか」


白亜は智夜の失礼な発言に思わずピクリと眉を引き攣らせる、対して自らの主人に対して厳しいことを言っている智夜は苦情を浮かべながら両の手のひらを自らの主人には見せつつ言葉を続ける


「それはご勘弁を…しかし、お嬢様は能力者の中でも【覚醒者】の一人。お嬢様の行動は皆が注視しています…暇つぶしに事件解決をしてストレス発散をするなど、もし誰かに見られなどしたら大変なことですよ。」


「それはわかっていますよ…だからこそいつも人気のない場所でやっているでしょう?」


「そうですね、ただ訂正をさせて頂くと、最終的には人気のないところでです。…これで何度目ですか?」


不満げに文句を言っている主人に対して智夜は小さくため息を吐きつつ自身の携帯端末の画面を見せる。


それを見せられた白亜はその文章を口に出して読み始めた。


「何度目って…『宝石強盗を見事鎮圧、お手柄は警察ではなくその場に偶然居合わせた覚醒者!?』…。」


白亜は書かれている内容を途中まで読むと眉を寄せつつむむっと押し黙る、智夜は黙っていては分かりませんねと代わりにその記事を読み進めた。


「『警察関係者によるとお手柄を立てた覚醒者は最年少で能力が覚醒し、絶対零度の二つ名を持った雪之丞白亜(16)さんと判明している、これまでも数回記事に取り上げて来たが、度々偶然事件現場に現れては犯人鎮圧に貢献している。今回も彼女の貢献により事件が解決された。

それにしても偶然居合わせる、と言う状況が後何回続くのか、今後の動きにも注目したい。』…バッチリバレているじゃないですか、何を気をつけているんですか?」


「それは…それは、警察関係者が私のことを話してしまうせいです、私はきっちりやってますから。

それにそもそも悪いことはしていないでしょう、良いじゃないですか、お手柄ですよお手柄。」


白亜は智夜に記事を読まれ、その後痛いところをツンツンと突かれるとティーカップを口に運びつつ一口飲みながら目を逸らし、言い逃れが出来なったのか開き直った。


その言葉を聞けばこのお嬢様は何もわかっていないと再び大きく深いため息を吐くと共に指を立て言い聞かせるように危険を説く


「良いですかお嬢様、お嬢様は今年の4月からあの天翔学院に通われることになるのですよ?」


「はあ…それとこれと何の関係があるんです?」


天翔学院(てんしょうがくいん)

今や全国に数ある能力者育成校の中でも比較的新しく、現在から3年前に新設された能力者学校である。

大体の学校では運営資金などの問題もあり、「一般」「福祉科」「能力科」などで別れているところが多い中天翔学院は能力者のみしか入ることが出来ず、入学試験の内容でも能力による試験が導入されており教員含め、能力者しか入学することが出来ないと言われている。


新しい学校と言うこともあり施設は最新設備が揃っており、その他の半端な学院とは授業内容も能力育成に特化している為エリート達が集まっていると言われ、部活や学問に置いても数々の成績を残し関東圏では今一番注目能力高校である。



「あの学院は基本能力主義です、その上お嬢様以外にも覚醒者がいる所に通われるんですよ…?そんな方達に目をつけられないように最善の注意を払い、目立たぬ様にしなければー」


「…特に何かをしなくてはダメですか?」


智夜は話している最中にその話の先端を折られた上にそんな言葉を聞けば若干困惑の顔をうかべる


「はい…?ですから気をつけなければ目をつけられて…」


「目をつけられたとしても、私はいつも通りに過ごすだけです。もし力で何とかしようなどと言う人が現れるのならそれを退ける。いつも通りでしょう?」


「しかし、それが通用しない可能性があると言う話で…」


「通用しなかったからと言って、そんな方に媚び売るような生き方はしません。一度敗れたとしても2度目は必ず私が勝ちます、それでも敗れるのなら私の努力不足です…勝てるまで努力を積み重ねます。」


智夜は白亜の言葉に少し頼もしさを感じてしまい自らの主張を引っ込める。

しかしいくら頼もしいはいえそれでも白亜はまだ幼い、その上挫折を知らないのだ。それ故に智夜が主人を心配であることには変わりないのかそばでサポートすることを胸に決めた


「頼もしいと言うか、危なっかしいと言うか…はぁ…何を言っても無駄なのでしょう、私もできる限りのサポートはするつもりですがあまり期待はしないでください。」


「期待なんてしませんよ、一人でだって何とかしますから。」


従者の心主人知らず、智夜は胸に決めた想いを蹴飛ばされたような気がして切ない気持ちになりながら涙を飲み込む


「天翔学院…あのお二人にも会えるでしょうか、しばらく会っていませんでしたが…会うのが待ち遠しいですね。」


白亜はそう呟き学院に通っている知人の姿を思い浮かべながら窓の外を眺める。


波乱に満ちた学院生活が始まるまであと少しーー


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