名前の由来を調べよう
日曜日のリビングで、小学2年生のゆうが聞いています。
「どうして、ゆうちゃんの名前は『ゆう』なの?
どうしてひらがななの? みんな漢字があるのに」
学校の宿題で、自分の名前の由来を調べることになったのです。
お母さんは答えます。
「名前は、あかちゃんへの初めてのプレゼントだからね、お父さんもお母さんも、どうしようかずっと考えてたの。
それで、生まれたばかりのゆうちゃんの顔を見て、お父さんが『ゆう』にするって決めたのよ」
「『ゆう』っていうのは、いろんな漢字の、『ゆう』」
そう言って、お母さんは、メモ帳とペンを持ってきました。
「優しさの『優』。
勇気の『勇』。
きれいな夕日の『夕』
楽しい遊びの『遊』。
たくさんの友達の『友』。
人との縁を結ぶ『結』。
悠然とした『悠』……」
お母さんは、ちょっとむずかしいかな、と言いながら、メモ帳にペンを走らせます。
ゆうは、メモ帳に躍り出た漢字を見つめて言いました。
「この紙、もらってもいい?」
「もちろん。
とにかくね、お父さんもお母さんも、すてきな名前を、ゆうちゃんに贈りたかったんだ。これから大きくなっていく、ゆうちゃんにね」
お母さんは、なんだか照れくさそうに、お父さんのほうを見ました。
お父さんが、コーヒーを飲みながらうけとります。
「そう。お父さんもお母さんも、よくばりなんだ。
だから、ゆうちゃんの名前は、いろんな『ゆう』の意味がある、ひらがなの『ゆう』なんだよ。
どうですか、ゆうさん、わかりましたか?」
「わかりました」
ゆうが、えくぼを見せて返事をしました。
お父さんがおどけて続けます。
「ゆうさん、あなたは、自分の名前の由来を知りました。
おめでとうございます、レベルアップです。
2年生のお姉さんですからね。
だからこれからは、自分のことは『ゆうちゃん』じゃなくて、『わたし』と言うように。……いい?」
「……わたし、わかった」
ゆうは、くすぐったそうにこたえました。