表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヒロインになれなかった転生者

作者: サコラン
掲載日:2020/08/03

誤字脱字、感想などお待ちしております。

(そんな……、嘘でしょ……?)


その声を聞いた途端、私は心の中でそう思った。



『婚約破棄』。



長い間、信用していた彼に裏切られた。

優しい反面に、腹黒い反面をもち、貴族の中で位は高い。

そのせいかとても美形で、周りにはいつも女性がいた。

私はその彼の優しい方だけを見ていたから、腹黒い面を向けるなんて、思ってもいなかった。


裏切るなんて、あり得ない、と。


しかし、現実はいつも残酷。

こうして彼は、私に婚約破棄を訴えている。私は捨てられたのだ、彼に。

不幸な人に、救いの手をわざわざ差し向ける人などいない。

周りを見ても、誰もしゃべろうとはしなかった。そう、だれ一人。


つまり今この瞬間、私は運命にも見捨てられたのだ。


「では、アリス。さようなら」


信用していた彼は、新たな婚約者と腕を組み、ともに歩いて行った。

嬉しそうに笑う、陰キャの私とは正反対の女性。

それに笑顔で答える、私の元婚約者。


もともと、ウマが合わなかったのだろうか。転生者という、この私と。




始めは、死んでから赤ん坊に転生して、とてもうれしかった。

人生を、もう一度やり直せる。今度こそ、まっとうに生きられる、と。


でも、それは違った。

それは容姿、環境が変わっただけであって、私の性格は変わっていない。

根暗ボッチで、口数が少ない。そんな人を好きになるのは、一部しかいないだろうに。

ましてや、私の貴族位は下の方だし、わざわざ婚約する人はいなかった。


そんな時、唯一婚約を申し出たのが、彼。

天使のような笑顔を見せて、私を口説く。

その時、私は彼を『救世主』だと思った。そして私はヒロイン。


そんな夢物語が頭の中に渦巻いていた。



……。…………。



はは、私バカだ。


そんなこと、あるわけない。



私はただでさえ貴族位が低い。そんなことは乙女ゲーなら婚約者が救ってくれる。

でも、現実は乙女ゲーのように甘くない。


こうして、先ほども言ったように私は捨てられているのだから。




ぽろぽろと涙を床に落とす。

ただ裏切られたぐらいで、何を泣いているんだ。


もう人生は二度目なのに、涙だけはいつも制御できない。

これだけは、私は正直なんだな、と思う。




涙をごしごしぬぐい、ひたと前を見据える。鼻がつまっているが、そんなの気にしない。


裏切られた? それなら、やり直せばいい。

乙女ゲーの主人公のようにはいかないけど、汚い手でもあがいて見せる。

限界まで、生き延びる。この、厳しい貴族社会で。



アマチュアな私。さようなら。

厳しい私に、こんにちは。



今のことは、もう忘れる。これからが大事なんだ。



「私は、転生者であり、下級貴族のアリス」



声に出して自分の名を呼ぶ。

心がいくらかすっきりすると、私はもう一度涙をぬぐった。




「よし、いくわよ。私は、まだまだこれからなんだから!」




一人の転生者は、こうして決意を胸に、新たな道を探すのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ