99.決闘の理由
条件をのんだレイアさんにはモーウが焼けるまで余っていた白身魚焼きを食べてもらったけど、男性陣より勢いのある食べっぷりにちょっと驚いた。
あっという間に魚は無くなってモーウが焼けるのを今か今かと待ちわびている。
そりゃ、オキュイさんの言う通り自分で獲物狩ってこいってなるよね。
レイアさんがお肉から目を離し私に視線を向けると
「わ、私もさっきのパンをもらえないだろうか」
と食欲丸出しの飢えた獣のような危機迫る感じ。魚をあれだけ食べておいて胃袋ブラックホールですか?
個人的には何の問題もないので出せるけど、ユウトさんがこっちを見ている。
出していいの?悪いの?え?どっち!
困惑した私の顔を見て察したのか、ユウトさんはゆっくりと頷いた。
オッケーということだろう。
カバンに手をつっこみアイテムボックスからパンを取り出す。
「どうぞ」
「ありがとう!!」
受け取ったレイアさんはそりゃあもうおもちゃをもらった子供のようにキラキラと目を輝かせていた。
なんだかんだ面倒見のいいユウトさんはそのままレイアさんが自分で狩ってきたルルシェも焼き始めたりと火の番を率先してやってくれている。
こちらは最後に美味しいモーウを食べたのでお腹いっぱいになっており、食べ終わっている組で軽く雑談をしてたら、マァルさんがちょっといいですか?と声をかけてきた。
「二人きりでお話ししたいことがあるのですがいいでしょうか?」
すでに日は沈み暗くなっているので火があるところから離れすぎない浜辺でマァルさんは立ち止まると真剣な面持ちで私に尋ねてきた。
「タミエさんが持っているカバンはアーティファクトなんですよね、誰にもらったんですか?」
「あの、アーティファクトってなんですか?」
「え?知らずに使ってるんですか!?」
古代魔道具のことをアーティファクトと呼んでいるらしい。
何千年前に今より栄えていた時代に作られたといわれている魔道具で、現代では作れるものがいないという。
マァルさんは私のカバンがおとぎ話に出てくる無限にものが入るカバンと思っているらしい。
私を信頼して自分の秘密を教えてくれたマァルさんなら、私がアイテムボックス持っていることを伝えてもいいかなと思い話すことにした。
もちろん、料理召喚については言うつもりはない。料理召喚はゴザレスさんにばれてしまっているけどこれ以上知られないようにしなきゃ。
「実は……」
マァルさんと同じ能力を持っていると告げるとそれそれで驚いていた。私がアイテムボックス持ちだと知ってるのは今のところユウトさんだけ。だから、マァルさんも秘密にしてくださいね、と言えばコクコクと頷いてくれた。
皆のところに戻れば、野営に慣れてる組がテントを設営していた。
ユウトさんのアイテムボックス準備万端過ぎる。
何かあったときに野営できるようこういう事前準備って必要だねとマァルさんと話して、お互い帰ったらアイテムボックスに準備しておこうとこそこそ話していた。
一通り準備が終わり、再びみんなで火を囲むとオキュイさんがレイアさんがどうして浜辺にうちあげられていたのか質問した。
「港町まで行ったんだが強い奴はいねぇしお金が無いから皿洗いしたらご飯をくれそうな店を探してたら、おいしそうな匂いがしたから行ってみたら船に積み荷を運んでいて、ちょうど次の町に行こうと思ってたからこっそり船に忍び込んだんだ。そしたら嵐にあったみたいで船が壊れちまって海に放り出されて気が付いたらここに居たわけよ」
「運がよかったねぇ~」
のほほんと返事しているけど、無断で乗ったことには突っ込まないんですかオキュイさん。
「どうしてそんなに強い人と戦いたいんですか?」
そもそもみんな気にならないのかな?どうしてそんな強さにこだわるのかを。
すでに魔王という存在が消えて今は魔物から身を守れるだけの強さがあればそれでいいのでは?と思ってしまうのは私が戦いとは無縁の人間だからなのかな。
私の質問に言おうかどうしようか悩むしぐさをしたレイアさん、ようやく口を開くと小さく呟き最初が聞き取れなかった。
「……とうになりたいから」
「え?」
と聞き返せば、腹をくくったかのような表情で私をまっすぐに見た。
「対等になりたいと思ったからだ。今の自分じゃユウトと対等じゃない。これは私の問題なのはわかっているんだ。だが、ユウトに負けたままだと自分が劣っていると感じてしまって、同じ魔王討伐メンバーで私が一番弱く感じてしまうんだ……」
それを聞いたユウトさんはやれやれとため息をついて
「確かにお前自身の問題かもな。これだけは言っておくが俺はお前のことを弱いとか能力が下だとか思ったことは無い。そもそも武器からして違う、槍と剣じゃ戦い方も違うだろ?対等というなら同じ武器を持った状態で戦うべきだろ、それに正直に言うが俺は槍を使ったらお前に勝てないぞ?」
「ちがうんだ!互いの得意な武器を使って全力で戦って引き分けにすらならない!私は弱い!それが悔しい」
「そんなこと言ったらぁ、私なんて回復と防御しかできないし体力も二人に比べたら少ないから役立たずになっちゃうよぉ。自分が得意なことをあの戦いではしたんだから、みんなすごいじゃだめかなぁ?」
「……すまないそういう意味で言ったわけじゃないんだ。オキュイには本当に助けられている。ただ、私はやっぱり……もうこの話はやめよう」
なんかごめんなさい、私が余計なことを聞いてしまったばっかりにちょっとどよんとした空気になってしまった。
いままで我関せずだったトゥイさんがぽつりとこぼした。
「だったら、ゴザレスに鍛えてもらえば?ゴザレス教えるのうまいよ。ゴザレスだって定期的に動きたいんじゃない?」
それを聞いたユウトさんは何かを納得したかのように頷いた。
「なるほどな、ゴザレスがいいならその案はありだな」
当の本人であるゴザレスさんはどっちでもいいと言う顔だ。
そうか、時々戦ったほうがゴザレスさん的にも魔族の衝動を抑えられるのかな。
「俺は別に構わないぞ。元勇者パーティと戦えるってのは中々できないからな」
「じゃ、決まりでいいよね?レイアさん」
トゥイさんに問われたレイアさんはよろしく頼むと頷いた。
遅くなってごめんなさい!!(´Д⊂ヽ
昨日は本当に文字にならなくて、こんな気持ちになるんですね。
タイトル入れ忘れてた!!




