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96.悩める弟

 走り寄ってきたトゥイさんは手にキレイな黄色い花を持っていた。


「はい、タミエさん。この花は幸運呼ぶって言われてるんだ枯れるまで持っててほしいな」


「ありがとうございます」


 そう言って私に花を手渡してくれた。

 人から花をプレゼントされるなんていつあっただろうか?

 大切に保存しよう。


 戻ってきたユウトさんの片手には狩られた鳥が二羽ほどいた。

 既に血抜きが終わり羽も毟られている。

 うぅ、スーパーで見てるパックに詰められたお肉と違って生々しい。

 もしかすると解体現場をみてマァルさんは具合を悪くしてるのかもしれない。


 こちらに近寄ってきて横たわっているのがレイアさんだと気付いたユウトさんは言葉を失っていた。


 とりあえず今はお腹が空き過ぎて意識を失っていると説明すると深いため息をこぼし、再び森の方へ行ってしまった。


 野営をしたことのある人達がせっせと準備をしてくれていて、私も何か出来ることは無いかと聞いたがトゥイさんに聞いてもオキュイさんに聞いても、大丈夫だよと言われるだけでお手伝いできることが何もなかった。


 同じく野営をろくにしたことのないというマァルさんと二人で準備を眺めていた。

 そういえば、亜空間にものがしまえると言っていたけどアイテムボックスでいいのだろうか。

 話してくれるかわからないけど、聞いてみよう。


「マァルさんは亜空間にものがしまえるって言ってたのですけど、それってどんな感じなんですか?あ、話したくなかったら別に無理に話さなくていいですからね?」


「いえ、兄さんが信頼してる人たちだから問題ありません。さっきユウトさんにも同じこと聞かれました。僕は兄さんみたいな能力じゃなくてたいして役に立たないんです。物をしまえるだけの能力で一族中でも落ちこぼれで……」


 話はしてくれたけどとても辛そうだ。

 嫌な記憶を思い出させてしまっているのかもしれない。


「生きているもの以外は収納出来ますが、大きすぎるものは幅が合わなくて入れられません。僕は樽ぐらいの大きさが最大ですね。でも樽は10個ぐらい入れられます。だからさっきユウトさんと兄さんと手分けして果物を採ってきました」


 そういって何もない空間に手を伸ばすと光の円が出来てそこに手を突っ込み果物を取り出した。

 見た目リンゴのような感じのものだ。

 それを眺めながらぽつりと本音をこぼす


「僕じゃ村のみんなを説得できない、兄さんがみんなに説明してくれないと……」


「トゥイさん以外に候補の人はいないんですか?」


 素朴な疑問を聞いてみれば


「今の族長さまに近い特殊能力を持っているのは兄さんだけなんです。兄さんは木々の声を聴いて一部の植物を操ることが出来るから、その力があれば僕らの村は外からの侵入者に対応できるから」


 という。そういえばミステイストを捕まえるときに暗殺者の動きがわかっていたのってそういう事だったのか。

 マァルさんの村は鎖国でもしてるのかしら、外からの侵入者って。もしかして秘宝がって言ってたからそれが狙われているの?


「村の大事なものが狙われているんですか?」


「それはおまけ程度だと思います。僕らは人攫いに狙われていて今も耳を隠してますが、ほら、ほんの少しだけ尖ってるでしょ?僕らはピエニエルフだから僕らを奴隷にしたい奴らがいっぱいいるんです」


「え……」


 少しだけかき上げた髪か覗いたのは、ほんのり尖った耳だった。

 知らなかったエルフだったのかぁ。しかもただのエルフじゃなくてピエニエルフ。

 どういう意味だかさっぱりだけれど、きっと珍しいってことなんだろうね。

 そういえばトゥイさんもあの前下がりの髪で隠してるからなのか耳を見たことが無かった。


 っていうかそんな狙われているのによく村を出てきてお兄さんを探してるね。

 危ないんじゃ……。


「その、狙われているのによくここまで来れましたね」


「あぁ、兄さんがお守りをくれてるのでなんとかここまで来れました」


 そう言ってポケットから取り出されたのは私が預かっている物と一緒の緑色したゴルフボールぐらいの玉だった。


「これには兄さんが操れる植物が封じられていて、この石の保有者の危機を察知すると敵対する者を植物がからめとってくれるんです」


 ですよね。前見ましたもの。

 ぐるぐる巻きにされた黒ずくめの人。


「はぁ……僕だって兄さんの夢を応援したい。族長になってしまったら村から出れなくなるから、だから族長にならなくていいって思ってるんです。兄さん程凄い人はいないけど、力が強い人だったり魔法が得意な人はいるから、その人が族長をやればいいと僕は思っているんです。だけど落ちこぼれの僕の話なんて村のみんな聞いてくれないから。だから村の人達を止めることも出来ない。兄さんには申し訳ないけど直接村の人達を説得して欲しい」


 大変な事情があるんですね。

 話している間ずっとトゥイさんのことを見ていた。マァルさんはトゥイさんのことが好きなんだね。


「マァルさんは村の人達から認められることがあったら、族長になっても良いって思ってますか?」


「……はは、そんなことは起こりえないですけど、もしそうなっても僕は族長にはなりたくありません。兄さんのこと言えませんよね…」


「理由を聞いても?」


「村を守るなんて大役僕には無理です。それに僕にも夢があるんです。今回兄さんを探して村を出てみて強く思いました、僕お店で働いてみたいんです。村では全体が家族みたいなものなのでみんなで助け合って生活してます。だからお店とか無いんです。一度だけ兄さんに町に連れて行ってもらったことがあって、そこで初めて店があることを知りました。僕も何か提供して人に喜んでもらえたらなって思って。まぁ何を売りたいとか今は具体的に決めてないんですけど」


「夢があるのはいいことだと思います。やらないよりやって後悔した方がいいです」


 マァルさんはきょとんとした顔でこちらを向くと、しばらく目を合わせたのち柔らかく微笑んだ。

 うっわぁ美少女みたいだ。

 トゥイさんはキレイな感じだしマァルさんは可愛い感じだし、本当この兄弟心臓に悪いわ。


「ありがとうございます、タミエさん。僕……少し頑張ってみます」


 話したとこで少しスッキリしてくれたみたいで、今までで一番いい顔になった。


あああああああああ、ブクマと評価ありがとうございます!!

おかげさまで一時的かもしれませんが、総合評価が888!

パチパチパチ!


ありがとうございます!ありがとうございます!!


あぁぁ、めっちゃよく寝れそうです。

おやすみなさい!!

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●●短編書いてみました。●●
お時間あったら是非どうぞ。

四十肩賢者のダークトランス
……ダークトランスとか厨二感溢れてる気がする。
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