86.屋敷に帰ろう
先ほどまで視野が狭くなっていて王都の街並みをまじまじと観察は出来てないのがバレていたのか、明日少し見て回ろうということになった。
とりあえず王都にあるユウトさんの屋敷に戻ることにしたけれど、戻ったら確実に質問攻めにあうだろうからそこだけごめんなと先に謝罪された。
屋敷に帰ると、玄関に入ったらロマンスグレーの執事さんがすぐやってきて出迎えてくれた。
「お帰りなさいませユウト様。ただいま食事の準備をしておりますのでお待ちくださいませ」
ユウトさんへの挨拶を済ませた執事さんは私の方へ向き丁寧に挨拶をしてくれた。
「先ほどはろくにご挨拶できず申し訳ございません。わたくしこの屋敷の管理を任されておりますラングと申します。以後お見知りおきを」
「こちらこそご挨拶遅くなり申し訳ございません。タミエと申しますよろしくお願いします」
私の名前を聞いた執事さんはぴくっと眉を動かしたがすぐ元の表情に戻り、
「もしや王家の紋を最近授かったという店の店主の名と同じですねぇ、失礼ですがご本人様でしょうか?」
「あ、はい」
私の返事に、両手をパンッと合わせ目を細めながらニコニコしている執事のラングさん。
「こうしてはいられませんね!すぐさま準備に取り掛からなねば!タミエ様後程またお話しさせてください」
そうしてスタスタと奥へ行ってしまった。こういう時って部屋まで案内してくれるのでは?
自由にさせているってユウトさんが言ってたけど本当に自由なんだ。
ユウトさんに案内された部屋に入ると豪華なソファにローテーブル、きれいな風景画が壁に掛けてある。
室内を観察していたら、コンコンとドアがノックされメイドさんが入ってきた。お茶を入れてくれるらしく、ソファーに大人しく座って待機した。手際よくお茶を入れて去って行った。
あ、話しかけられるってユウトさんが言ってたのは執事さんだけか。
メイドさんは特に絡んでくることなく出て行ったもんね。
おぉぉぉ!!なんか貴族っぽい!貴族っぽい!!
人生で貴族みたいなもてなしなんてされたことないけど、執事やメイドさんが色々やってくれて自分は何もしないっていうのが新鮮!
元の世界に居た時にはメイド喫茶に行ったことあったけど、やっぱ本物のメイドさんとは違うね。
そしてメイド喫茶で思い出して、スマホを呼び出して過去の写真を漁る。
あった!アニマルパフェ。
ウサギや猫ちゃんの顔が書いてるかわいらしいパフェ。すべての動物を制覇するべくしばらく通っていた。
当然有名なオムライスもあったけど、個人的にはパフェの方が映えたのでパフェが印象に残っている。
これ、今度の営業終わったとの従業員のご飯タイムのデザートに出してみようかな。
どんな反応するんだろう。
「何をニヤニヤしてるんだ?」
ユウトさんに声をかけられてハッとするとすぐ横までユウトさんが来てスマホをのぞき込んでいた。
うぉう!近い!顔が近い!
今までも近いことはあったけど、なんか今日はいつになく近いことで顔が熱い。
「そのパフェ好きなのか?」
動揺を悟られないように平常心を心掛けた。
「あ、なんかメイドさん見たら、そういえばメイド喫茶行った時の写真あったなぁって思って」
「へぇ、意外だ。メイド喫茶に行ったことがあるんだな」
「結構いろんなものを写真に収めたくて沢山お店に行ってたんでメイド喫茶もありますし、忍びをモチーフにしたところとか、囚人をモチーフにしたところとか結構色々行ってます」
「あぁ、囚人のところは俺も行ったことがある」
懐かしい元の世界の話題でユウトさんと盛り上がり、あっという間に時間が経っていた。
すっかり外が暗くなっているのも気付かないほど二人で盛り上がっていたら、ドアのノック音。
ラングさんが食事の準備が出来ましたと呼びに来てくれた。
食堂に行けば長方形のテーブルがドンっと置いてあり一気に12、3人ぐらいは座れるだろう。
ただ、不思議なことに既に同じ料理が各イスの前にセッティングされている。
これを見たユウトさんは横で小さくため息をついていた。
ラングさんに促されるままユウトさんの隣の席に案内された。
するとぞろぞろと個々の屋敷の使用人と思われる人たちが入ってきて、それぞれが着席した。
「では、ユウト様お願いします」
何かをするように言われたユウトさんはちょっとめんどくさそうな態度をとりながらもグラスを片手に持ちながら言葉を発した。
「今日は急にもかかわらずここまで仕度をしてくれてありがとうな。みんなで楽しく食事をしよう。乾杯」
乾杯とグラスをみんなが掲げ上げると賑やかな食事が始まった。
メイドさんも普通にご飯を一緒に食べている。
給仕はおそらく料理人達なんだろうけど、なんか雰囲気が家族や友達と食べている感覚だ。
ご飯もおいしい。前菜のサラダや、スープ、魚のソテーなどどれをとっても味付けがしっかりしている。
パンもふわふわのパンが出てきたのには驚いた。
てっきり固いパンが出てくるものだとばかり思っていたから。
ようやく食事が落ち着いたころに、ラングさんが給仕をしていた料理人達と私の方を交互にみてから話しかけられた。
「タミエ様、我が屋敷の料理はいかがだったでしょうか?」
「とってもおいしかったです。全部おいしかったですけど、スープがおいしかったです。パンもふわふわでしたし。素敵な食事をありがとうございます」
料理人たちはお互いに顔を見合わせて小さくガッツポーズをしていた。
いや、私別に料理評論家じゃないですからね?
すると料理人の人がおずおずと話しかけてきた。
誤字報告本当にありがとうございます。
そしてすみませんでした( ;∀;)
ブクマと評価も本当にありがとうございます。
コロナとかテンション下がる話題もありますが、私はこうやって読んでいただける、反応をいただけてテンションぶち上げの幸せ者です。
もし、都市閉鎖になったら、これはもう頑張って小説のストックが作れるようにしたいですね。




