85.雑炊の効果?
呼び出しがかかり通された部屋には白髪で長髪のおじいちゃんがベットに横たわっていた。
教会の人の手をかりながら上半身を起き上がらせてこちらを向いた。
……すこし頂頭部が薄くていらっしゃる。
「よく……来てくれた……わしが教皇のカーミッツ……である」
「初めまして教皇様、わたしはタミエと申します。オキュイさんから依頼を受けてこちらにやってきました」
挨拶をするのも辛そうだ。
そんな状態なのにご飯食べれるのだろうか。
側付きの人が教皇様のベットのすぐ横に小さめのテーブルを用意した。
ここに料理を用意しろという事なのだろう。
雑炊は事前に召喚済みで、ユウトさんのアイテムボックスにしまってある。
大き目のカバンをユウトさんが持っていて、一応そこから出したという事にしている。
用意されたテーブルの上に黒い鉄鍋を置き、取り分け用の器も用意した。
「これは雑炊と言うものです。内臓に優しい食材を使ってありますお口に合うといいのですが」
そう伝えてから、部屋の端に移動した。まじまじと見られながらの食事は食べづらいだろう。
どうしても視界に入ってしまうけど、近距離で見られるよりはマシなはず。
側付きの人が一応毒味として軽く食べてからなのだけど、やはり初めて食べるからだろうか、ビクッとなって普通に美味しいと言葉をこぼしている。
教皇様用のご飯だけれど側付きの人がすっごい料理を凝視している。
きっと食べたいんだろうけど今日はこの一個しか用意がないからね。
新たに取り分けたものをふーふーと冷まして側付きの人が教皇様の口に運んだ。
すると自分で動くのもやっとのはずの教皇様が、側付きの人から器を奪い取り、ゆっくりだけど自分でもぐもぐと食べ始めた。
器に取り分けたものをあっという間に食べ終わると早くお替りをよそえと側付きの人をせっついている。
そんな勢いよく食べなくても雑炊は逃げないのになぁと思いながら、教皇様が食べ終わるのを待った。
鉄鍋に入っていた分をあっという間に完食すると、さっきまで喋るのもやっとな感じだったのに幾分かスムーズに会話ができるまでに回復した。
「この雑炊とやらは誠に美味であった。こんなにうまい物があるとは……ルディのやつばかり何故……」
後半愚痴になっていたけど、とりあえず一時的にしろ少しは回復したみたいで良かった。
「お主、タミエと言ったか?どうだろう、教会の専属料理人にならないか?高待遇を約束しよう」
そんな目的で来たわけじゃない。オキュイさんの暴露話を聞いて言葉は悪いかもしれないけど、同情でここに来ている。せめて死ぬ前ぐらいにおいしい物を食べさせてあげてもいいんじゃないかと偉そうにきこえるかもしれないけど。
教会の後ろ盾が無くても問題ない。
お断りしようとしたら、教皇様の側付きの人が
「聖女さまよりこちらの料理人の店を聖地と認めると宣言されたようです」
と伝えていた。それを聞いた教皇様は今までろくに表情筋が動いてなかったのに、にんまりと笑った。
「そうかそうか聖女が既に聖地としていたか、であるならお主の店は既に教会とも縁があるということだな。後日店に石碑を送ろう」
な、なんですと!?
オキュイさんが聖地と認めるって言ったのは深い意味があったの!?
てっきりこのお店はいいところだという意味でうちに乗り込んできた教会の人達を説得するためだけのことかと思ってたのに。
これじゃあまるでルディさんにもらった王家の紋と同じような意味なんじゃないの?
王家と教会両方からお墨付き出たってことでしょ?
えぇ……どうしよう派閥争い的なものに巻き込まれたら……って既に巻き込まれてるのか!!
ご機嫌になった教皇様は側付きの人に指示をしてまるで仕事が出来る人みたいになっている。
私が混乱している間に、色々とスピーディーに決められていた。
「というわけで、おぬしの村に優先的に教会を作ることなる。今後ともよい関係でいようではないか」
私の意見は関係ないまま物事が勝手に決まり、急に忙しくなったみたいで教皇様の部屋を追い出された。
私が自分から問題ごとに首を突っ込んでしまったのがいけないのだろうか。
っていうかオキュイさんに聖地認定された段階でほぼ同じ未来だったのかもしれない。
教皇様にご飯を食べさせたことによってそれが早まったに過ぎないのかも。
とぼとぼとユウトさんの後に続いて歩いていた。
「タミエさん、今日は色々あって疲れてるだろ?屋敷に帰って休もう。教会の人間から何かされても俺が守るから、何も心配しなくていい」
頼もしいユウトさんからの励ましを受けたけど、なんて言うか問題はそこじゃないっていうか自分自身っていうか。
今不安に思っているのは、結局自分がこの世界の情報に疎いのがいけないんだなってこと。
王家の紋と今度強制的に送られてくる教会の石碑。
それら二つある店はあるのだろうか。
もし、王家VS教会みたいなことが起きた時私は対応できるだろうか。
……普通にめんどくさい。
どちらにも属さない中立で居たい。
本当にめんどくさくなったらこの国出て行っていいかな。
「あの、ユウトさん。もし王家VS教会ってなったら……私のお店どうなっちゃんですかね……」
そんなことユウトさんに聞いたところで解決はしないのは分かっている。
けれど、さすがに一人で悶々と考えるだけだとマイナスな考えばかりが浮かんでしまうから、ついユウトさんに言ってしまった。
「そんなめんどくさいことが起きたら……一緒に別の国へ行こう!……二人だけで」
まさかユウトさんからそんな提案がくると思っておらず、俯いていた自分の顔をばっと上げてのぞき込むようにユウトさんを見つめた。
そんな私を見てユウトさんは安心させるようないい笑顔で私に微笑んだ。
今まで抱えていた不安がウソのようにスッと消えて温かい気持ちになった。
いや、むしろ胸がドクンと熱くなった。
その影響か顔も熱く感じる。
勇者って……本当……人類の希望の塊なんじゃない?
ふぁああああ!
ブクマありがとうございます!
花見シーズンですけど世間の状況的になかなか難しそうですね。
飲みすぎてしまったときはよく雑炊やおかゆに頼っている作者です。




