81.はい問題がやってきましたー
あれからしばらく、ユウトさん・ゴザレスさん・オキュイさん・トゥイさんという豊富な人材で営業を数回していた。
トゥイさんが来て初めの日に至っては前掛けが嬉しくてしょうがなかったのか私に抱きついてきた。
なんだろう、まだまだお母さんが恋しい年頃かな?
と精神年齢38歳の私はハグし返したたけど、なんか部屋の温度が一瞬にして冷えたと思ったら、トゥイさんはサッと離れて店内確認してくるね!といってリビングに行ってしまった。
色んなものに興味があるお年頃なんだね、っていうか何で冷えたの?ここ気候安定してるのに変なの。
そして案の定というかやってきましたよ教会の人達が。しかも営業日にね。
今日の営業はユウトさんとオキュイさんに店内の接客を、テラス席をトゥイさん、外の整列をゴザレスさんにお願いしている。
何回転目か覚えていないがざわついてるなぁと思ったけど、私は次の回の為に水差しに水を補給したりしていた。
何かあっても大体ユウトさんがなんとかしてくれていたので特に気にしてなかった。
ふとオキュイさんの声が聞こえてきた。
「あれぇ?皆さんも食べに来てくださってたのですかぁ~?嬉しいですぅ」
聖女様!と複数の人の声が聞こえてきたので、オキュイさんの知り合いが来たんだなぁぐらいにしか思っていなかった。
ところがほんの少しして店内から「店主を出せ!」と騒ぎ立てる声がキッチンに聞こえてきた。
何事かと出てくれば、お揃いの教会の服を着た男達がぎゃーぎゃーと騒いでいる。
オキュイさんは「みんなどうしたのぉ?」とまったりと話しかけていたが、教会の人達は何故かオキュイさんに同情というか憐れんでいるっていうかそんな感じだった。
私が出て行ったことで、教会の人達の視線が一斉にこちらに向いた。
「お前が店主か?」
「あ、はいそうですが、皆様は一体……」
ご丁寧にシュウェーラの街に在中している教会の人間だと自己紹介をしてくれるあたりなんか拍子抜け。
考えれば、律義にしっかり外の行列にも並んでくれているのも、もしかすると教会の評判を落とさないようにするための配慮なのかもしれない。
そんなことを思っていたら、人目を気にせずというかむしろ私がいかに悪者かをここにいる人たちに説くかのようにわざわざ大きな声で喋りだした。
「聖女様をたぶらかしたのはお前か!」
「ここの料理は他にない味と聞くが危ないクスリでもはいってるのではないか!?」
「ここに居る者たちは騙されているのだ。聖女様はこやつに何か弱みでも握られたに違いない!卑怯な真似をするような奴だ!」
「聖女様を強制的に働かせるようなやつだ、王家の紋もきっと何か黒いことをして手に入れたに違いない!」
お、おぉう。ひどい言われようだね。
教会と王家って仲が悪いって言ってたけど、この場に王家の紋を出してくるの?
ちょっと頭悪くない?
どれもこれも事実無根だし、村のお客さん達はこの人達の話をあまり聞いてないみたいだけど、新規のお客さんはちょっとそわそわしてる感じ。
変な噂流されるのは困るなぁ。
「みんな落ち着いてよぉ~私は好きでここで働いてるんだよぉ?誤解だよぉ~お手紙もちゃんと書いたじゃん」
教会の人間をなだめようとしてくれているけど、そんなお構いなしだ。
「そういう風に言えと言われているのですね!今お救い致します!」
「何という卑劣な奴だ!魔族の血を引てるんじゃないか?」
なぜそんなに盲目でいらっしゃるのかさっぱり見当がつかないけれど、これ以上騒がれても困る。
村の人達やここにきている常連の冒険者たちが少しイライラとし始めた。
その空気にユウトさんが介入しようとしたとき、オキュイさんが万歳したポーズをながら声を上げた。
「はぁい!聞いてくださぁい!わたしはここ『多種多様』を聖なる場所と宣言しまぁす!」
な、なんだってぇぇぇぇ!?
その場に居た全員が固まった。いや、そうだろう。ユウトさんに至っては片手を額に当てて天井を仰いでいる。
聖なる場所って何ーーーー!?ここはただのご飯処ですよ!!
「みんな言う事聞いてくれるよねぇ?」
可愛い上目遣いとたゆんとお胸を揺らせばその場に居た教会の人達全員が、ははぁ!って傅いた。
え?何この手のひら返し。唐突すぎません?
しかも先まで席に着かずに立って騒いでいたのに、オキュイさんの宣言を聞いてからまるで別人のように空いてる席にきっちり座っている。
あまりの態度の豹変ぶりにその場にいたお客さん達も開いた口が塞がらないみたい。
本当君達何し来たのかしらねぇ……。
見に来てくださりありがとうございます!!
本当もう、嬉しくて嬉しくて小躍り!!




