77.王都に来てよ
オキュイさんからお願いごとがあるといわれて嫌な予感しかない。
そもそもはじめましての人からのお願いごとにいいことがあった試しがない。
こっちの困惑した状況などお構いなしに話を続けてきた。
「タミィには是非教会の教皇様にご飯を作って欲しいのぉ。教皇様は身体を悪くされていて出歩くことが出来ないからぁ、最後の晩餐に美味しいタミィの料理を食べさせてあげたくてぇ~。だめぇ~」
なかなかにひどい言いようだ。最後の晩餐って。本当に教皇様のこと思っているのかな?
私が教会の信者とかだったらきっと喜んでお手伝いするんだろうけど、全くもって見知らぬ人だしそもそも教会の人から何かしらの恩を受けた訳でもないので私が行く理由がない。
こう言っては冷たい人間に思われるかもしれないけど、メリットがない。
王都は遠いところだしこのオキュイさんに付いていくってなると馬車移動しなきゃいけないし、そうなると乗り物酔いしちゃうだろうし、何よりお店をしばらくの間お休みしなければならない。
私にとってのメリットが王都が拝めるぐらいだ。
全く興味が持てない。
渋る私にオキュイさんがじっと目を見つめてきた。
しかし、私の心は行かないという気持ちだ。
「ごめんなさいオキュイさん私、王都には行けません」
「どうしてもだめなのぉ?」
うぅ、何故だろうこの潤んだ瞳に見つめれると行かねばならないような気がしてくる。
心の動揺を悟られないように、意思を強く持つのよ私!
そんな私たちのやり取りに今まで何も口をはさんでこなかったユウトさんが今までより低い声でオキュイさんに話しかけた。
「オキュイ、いくらだと言われたんだ」
私を見ていた潤んだ瞳が一瞬泳いだ。
「な、なんのことぉ~?」
「とぼけるな、お前が動くときは大体金が絡んでいるだろう。教皇にいくら報酬を出すと言われたんだ」
全く話に付いていけない私はぽかんとユウトさんを見た。
「王都までタミエさんの料理が広まっているんだろ。ロム爺が知ってるってことは噂はそっちに届いてるってことだ。しかも王家の紋を発行した場合、商業ギルドから街に通達されているはずだったよな?王家からのお墨付きをもらったこの店の料理が教会からすると邪魔なんだろ?また民の支持が王家に持って行かれるから」
「……」
「そこでタミエさんを教会の招待客にしてこの店の営業をさせなければ、民は長期間やっていないこの店の噂をすることが少なる。そうして噂を静まるようにしたいんだろ?」
唐突に始まったユウトさんの推理ショー。
間抜けな顔して聞いていた私と、我関せずとベンチで横になっていたゴザレスさんがその現場にいるだけだった。
黙って聞いていたオキュイさんが深いため息をついてユウトさんを見つめた。
「あ~ぁ、せっかくいい案件だったから受けたのにお店に来てユウトさんが居る時点で無理だなぁって気が付いてたけど、どうしてそんなに状況把握がすごいのぉ?無理無理ぃ勝てないよぉ」
小さく両腕をあげて降参のポーズをとっているオキュイさん。
今ユウトさんが語っていた通りだというのだろうか?
「お前は一応聖職者のくせに金がもらえないと動かないもんな」
「生きていくにはお金はあればあるだけいいのですぅ~」
あっかんべーをしている聖女様の姿に驚きを隠せないし、ユウトさんとも仲がいい感じだ。
「あ~ん、こんな田舎まで来たのに報酬なしかぁ~。ちぇ~」
「残念だったな。まともに教会で働いとけ。お前は全てにおいて金が絡まないとやる気なさすぎだ」
「いいですよぉ~だ!またなんか見つけてがんばるもぉ~ん。なんかいい仕事ないかなぁ~」
オキュイさんは開き直って人目も気にせずお金になる仕事したーいと騒いでいた。
そんな中ユウトさんがこっそり話しかけてきた。
「タミエさんよく断れたな、オキュイの誘い」
「え、だって王都に興味が無くて……。長い時間をかけて行ってまでわざわざ王都見たいと思いませんし」
「いや、オキュイはおそらく人間相手に魅了の魔法を無意識に使っているみたいなんだ。大体普通だとオキュイの言うことを聞きたくなっちまう。俺はそういう状態異常に耐性があるから平気だが、だいたいのやつはかかっちまうんだ」
それでか……オキュイさんに見つめられると気持ちが揺らいでしまっていたのは。
え、オキュイさんの能力怖いやん。
味方だったら心強いかもしれないけど。
っていうか、こんな人野放しにしておく方が危なくない?今回は何とかなったけど、また別の人間にお金の話をちらつかせられたら、ほいほい付いて行っちゃうわけでしょ?
仕事探してるみたいだし、いっそのことこっちに引き入れた方がいいんじゃない?
そう思って、オキュイさんに提案をしてみた。
「あのぉ、お仕事お探しでしたら、うちの店でお仕事しませんか?」
それを来たユウトさんゴザレスさんがびっくりしていた。
横になってはずのゴザレスさんは視界の端っこで勢いよく起き上がったのが確認できたもの。
「あ、でも聖女様って教会で忙しかったりします?」
「いや、教会に居ても特に暇だから刺激が欲しいなぁと思っていたんだけどぉ。私ここで働いていいのぉ?」
「オキュイさん可愛いしお客さんからもきっと人気出ると思うんですよね。お試しで一回働いてみて駄目だったらそれで終わり。でも楽しいとか続けたいって思ったらこの村に移住してみるというのはどうでしょう?」
私からの誘いにオキュイさんがとても目がキラキラしはじめた。
「楽しそう!私こういうのやってみたかったの!」
「じゃあとりあえず次回の営業日また来てください」
そういって右手を差し出せばオキュイさんも手を差し出してきて固い握手をした。
誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。
そしてお手数をおかけしてすみません。
しかもブクマ増えててめっちゃ嬉しい。
まさかまさかの200にそろそろ到達しそう。
次はなにしようかな~200行ったら・・・全く何も思い浮かばない。
喜びの舞でも踊る?そんなことしてないで更新しろって話ですよね。ストック作れるようにがんばりますぅぅ。




