76.ナンと・・・
お客さんの視線が聖女様に釘付けで、同性の私ですらどうしても豊満なお胸に視線を奪われてしまうので、異性の皆さんの性質的に抗うのは不可能ですよね。
あれ、谷間に顔を埋めたら窒息できそうだよ。
親子丼を提供するとスプーンを使って掬い上げふぅふぅと冷ましてから口に運ぶだけの仕草がセクシーで、そんな風に食べられたらお客さんの食事の手が止まりますよね、わかります。
当然初めて食べる聖女様も例に漏れずビクッとなってから勢いよくそれでいてセクシーにお食事をなされておりましたよ。
食べ終わった聖女様のお顔はとても清々しい感じで、私に向かって素敵な笑顔をくれました。
「おねぇさんがお料理を作っているんですかぁ?」
「あ、はい。お口に合いましたでしょうか?」
「えぇとっても!こんなにおいしいものがあるだなんて知りませんでしたぁ。王都の近くにお店は出さないのですかぁ?」
「この村が好きなので他の街に行く予定はないです」
この村の人達はみんな優しくて親切で穏やかだから本当に居心地がいい。
食べに来てくれている村の人達は私の話を聞いてみんなニヤけていてなんだか恥ずかしい気持ちになった。
聖女様は残念そうにしているけど、仕方ないですぅ~と諦めている。
食べ終わった聖女様は帰り際に私の目をのぞき込むようにじっと見つめられてドキドキしてしまった。
また来ますぅと言って店を後にした。
聖女様が帰るまでユウトさんはずっとテンションが下がったままだったけど、特に何も起こらなかったのにどうしたんだろう。
ようやく営業が終わり、置き型看板しまったりして従業員だけの時間になったのでご飯タイム。
従業員だけのご飯タイムの時は一品だけなるべく新メニューを食べてもらっている。
今日のご飯は……カレー!
カレーは最高ですね、毎食カレーでもいいぐらい。
今回のカレーはバターチキンカレーナン付き!
バターチキンはマイルドで本当においしい。
インドカレーやネパールカレーのお店ってナンを頼むとものすごい大きいサイズで来るし、お店によってはそのナンがお替り自由だったりするからお腹すいてるときはありがたい。
銀の深みのある器に入ったカレーに大きいナンのセットを見たユウトさんはテンションを上げていた。
そりゃそうだよね、スパイスがこの世界にあっても作り方がわからないものね。
立ち込める香りが食欲をそそり今すぐにでも食べたいけどゴザレスさんは食べ方がわからないだろうから説明しないとね、と思ったけど出してみたらすんなりナンをちぎってカレーに付けて普通に食べている。
この世界にも似たようなのがあるのかもしれない。
食事を終えて、まったりしているときに玄関がコンコンとノックされた。
ユウトさんが様子を見に行ってくれたが、聞き覚えのある声が玄関から聞こえてきた。
「わたしぃ、もっと話したくて来ちゃいましたぁ~」
ずかずかとリビング兼食事処に来た聖女さまは私が座っていた席の正面に陣取った。
「先ほどはおいしいお料理ありがとうございますぅ。皆様からは聖女様って呼ばれてますけどぉちゃんと名前があるのでご挨拶したいなぁ~って戻ってきたんですぅ」
「は、はぁ」
「シャエジ教会で聖女やってるオキュイですぅ~よろしくおねがいしますぅ」
「タミエと言います。よろしくおねがいします。聖女様」
「やぁ~ぁ、オキュイって呼んでぇ~」
両方の二の腕で胸を挟み確実に強調しているたわわな部位に目が行ってしまう、なんでこんなに好かれているのか全く理解できない。
「オ、オキュイさん」
「ん~、おしい!さんもいらないけど名前で呼んでくれたから我慢するぅ」
上目遣いでちょっとアヒル口になっている。所謂あざとい系なはずなのに、なんだか好きになってしまいそうな……新しい扉開いてしまいたくなるような……変な感覚。
そこに冷め切ったユウトさんの声が響く
「お前は何しに来たんだよ。営業時間終わってるんだが?ずかずかと入ってきやがって」
「えぇ?私はこんなおいしい料理を作ってるタミィにご挨拶に来ただけだよぉ?」
「嘘つくな。お前がそんな理由で来るわけないだろ。大体タミィって……」
「ユウトさんひどぉい。私ぃ本当に挨拶に来ただけだもん。それにタミィはタミィだよ?」
ユウトさんのおかげで少しぼーっとした感じが薄れた。
ほわほわした状態の時にいつの間にか私の呼び名がタミィになっていた。
「ねぇねぇタミィ~お願いがあるのぉ~」
少し潤んだ瞳でこっちを見つめる聖女様に再び意識が持って行かれる。
昨日は更新できなかったのに見に来てくださった皆様本当にありがとうございます。
誤字報告もありがとうございます!!めちゃくちゃ助かっております。
今、猛烈にキンパが食べたいです。(夜中の3時なう)




