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68.店の名は

 朝食をユウトさんと食べていたら


「タミエさん、家は別々になっちまったが迷惑でなければ今後も一緒にご飯を食べないか?」


 と、まさかユウトさんからそんな風に言ってもらえると思っておらず驚いた。自立だなんだと自分に言い聞かせていたが、やっぱり一人の食事は寂しいのでお言葉に甘えさせてもらった。


 更にこの後暇だったら冒険者ギルドで採集しないか?とお誘いを受けたが、今日は一人でウィンドウショッピングをするという予定の為、また後日でお願いした。



 ユウトさんもお家へ帰り、ささっと家の掃除をして村に出かけるぞ!

 広く作ってもらったので掃除する場所が多いのが難点だ。

 むむぅ、今まで魔法で楽をしすぎた。頑張ろう。


 まぁ新築だからそこまで汚れてないのでサクサクと終わらせた。

 今度営業した時はユウトさんにリビングだけでも魔法かけてもらおう。うん、そうしよう。


 準備が終わったので村へ行く。一応なんかあった時の為に、トゥイさんから預かっている緑色のゴルフボールぐらいの水晶はカバンに忍ばせている。

 なんだかんだ持っていていいと言われてからずっと持っている。

 いくら護身術程度でゴザレスさんに短剣の扱いを習っていても実践を経験していないから、きっといざって時に動けない。


 トゥイさんから持ってていいと言われたあれは、きっと時間稼ぎぐらいは出来るだろうから心構えが出来てからだったら護身術も使えると思いたい。

 そもそも何事も無いのが一番なんだけど。


 さて、今日は買わないけど実は考えていたことがあってお店のユニフォームっていうか、お揃いのエプロンもしくは、前掛けがあったらいいなぁと。


 同じもの作ってもらうのにいくら必要かとか、そういう相談しよう。

 この村では今のところ食材屋さんが3店舗、服屋が1店舗、道具屋が1店舗、料理屋が1店舗。

 あとは最近できた屋台がちらほら。そんなにお店がない。

 ただ、最近移住者が増えてるからお店を増やそうという案が出ているらしい。

 お客さんが話しているのを聞いた。


 ライバル店が出来ることによってよりいい物を作ろうと切磋琢磨するだろうし、お客側も選択の幅が増えるのはいいことなので、早く新しいお店が出来たらいいのになと思っていた。


 村に着いたのでさっそく服屋さんに行って相談してみよう。


 お店に入れば、店員さんがみんなしていらっしゃいと出迎えてくれた。

 このお店の従業員さんもうちのお店の常連さんだ。


「あら?タミエちゃん今日は一人なの?」


 まるで子供のおつかいみたいな扱いだ。

 大人だぞ!


「はい、今日はご相談があってきました」


「まぁ、相談事?ではあっちでお話しましょ」


 おばさまに背中をおされ、店の隅っこにある小さなテーブルでお話しすることに。

 お店用におそろいの物が欲しいという旨を伝えると、ふんふんと頷きながら何やらメモを取り始めた。


「なるほどねぇ、いいんじゃないかしら?何か入れて欲しい刺繍とかある?もしくは店名でも入れる?そういえばタミエちゃんのお店って名前ついてたかしら?いつもタミエちゃんのお店としかみんなの間でも会話してなかったから。知らなくてごめんなさいね」


 あ、いえ、私も店の名前知りません。っていうかつけてません。

 そっかぁ店の名前かぁ。考えてなかったな。


 確かにエプロンや前掛けに店の名前あったらいいかもしれない。


「いいですね、お店の名前を入れるの。お店の名前はそもそもつけてなかったので知らないのは当然ですよ。なんとなく始めて今に至るので。名前かぁ……何にしようかな」


「まぁ!じゃああのお店の名前が出来る場に私立ち会ってるのね!これはもう村のみんなに自慢になるわ!」


 きゃっきゃと喜ぶおばさま。

 そ、そんなにすごいことじゃないのにな。


 店の名前……自分の名前を入れるのはちょっと恥ずかしいから、他に何かうちのお店を表すような何か……。


 そもそも私にネーミングセンスは無いんです。

 今だってぱっと思い浮かんだのは『多種多様』。色んなジャンルの料理をだすうちの店っぽい。

 しかしなんかこうさ……もっとあるはずなのに、可愛い感じとかかっこいい感じで表せる何かが……。


 でも、思い浮かんだ『多種多様』が頭を占拠してて他の言葉が全く浮かばない。

 ま、いいか。店の名前でみんなが来てくれてるわけじゃないし。


 今考え付いたものを伝えれば、一瞬おばさまが真顔になったがすぐ笑顔に戻り、ぎこちない感じでいいんじゃない?と肯定してくれたので、もうよいとする。


 うん、慣れてくればなんかいい響きな気がする。『多種多様』

 そうしておばさまと打ち合わせをして、前掛けの注文に成功した。

 とりあえずサンプルで一個作ってみるから、それを見てみて量産するか決めてくれと言われ、サンプル完成時にサンプル料を払う約束になった。


 一人でもお買い物出来たぞ!まだ買っては無いけど。

 ふふふ、この調子でほかのお店も回るぞ、特にお店の為の備品は考えてないけどね。


 そして看板を依頼してから久々に道具屋さんにも立ち寄り、品を見る。

 前回来たときはろくに商品も見ずに看板だけ依頼してお店をでてしまったから、こんなに色んなものが置いてあると気付かなかった。


「おう、タミエちゃん!今日は一人なのか?ユウトはどうした?」


「今日はユウトさんとは別行動してます」


「珍しいこともあるもんだな。うちに来たってことはまた欲しい物でもできたかい?新しい店になったもんな」


「そういうわけではないんですけど、前回はあんまりゆっくり見れなかったから色々見せて欲しくて」


「おう!思う存分見て行ってくれ!」


 本当に色々あって楽しい。私以外のお客さんもいてにぎわっている。

 売り場をぐるりと一周してやはり欲しいものが無いので、おじさんにまた来ますと言って店をでた。


 軽く食材屋さんも見ようかと思ったけど、自炊しないしおとなしく明るいうちに帰ることにした。

ブクマありがとうございます!!


無計画に更新し始めた自分がいけないが、ストックが欲しい今日この頃。


あと、Twitter始めて相互さんの小説とか読ませていただいてるんだけど、面白いのが多すぎて全然時間が足りない。


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●●短編書いてみました。●●
お時間あったら是非どうぞ。

四十肩賢者のダークトランス
……ダークトランスとか厨二感溢れてる気がする。
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