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64.あの時俺は

ユウト視点

 ロム爺のいらないおせっかいのせいでタミエさんの家が建つことになった。

 タミエさん自身はめちゃくちゃ喜んでいて、鼻歌を歌うぐらいにはご機嫌だ。


 彼女の幸せを願うのなら一緒に喜ばなければならないところだが、自分の器の小ささよ。

 家が少しずつ出来て行くことで、一緒に暮らせる時間が残りわずかだと理解せざるを得ない。

 せめて一緒に暮らせる貴重な時間を大切に過ごそうというのに、面倒事はたたみ掛けるように俺にやってくるわけで。


 何なんだ?俺は幸せになってはいけないのか?

 ただでさえこの世界に半ば誘拐みたいな感じで連れてこられて勇者としてやることやったのに。


 いつも通り営業日に外で整列対応してたら、俺の勘が緊急退避をせよと指令をだした。

 俺は瞬時に気配を消して林に避難し、様子を窺えば予想どおりめんどくさい奴がやって来た。

 レイアだ。

 あいつは確か南のダンジョンに潜っていたのではないのか?


 ゴザレスの場合は発作が起きてしまった時のみ戦うだけで、日常では戦わなくていい。


 だがレイアは別だ。


 実は一度めんどくさいから決闘を受けてやったが、負けたことが悔しいのか去り際に「鍛え直してくるから首を洗って待っておけ!」と言い残し、久々に会えばより突っかかってくるようになったし、何より俺と一緒にいる奴らに問答無用で決闘を申し込むようになった。決闘を断れば今度は問答無用で襲い掛かってくるからな。それによって被害を受けた人間は少なくない。



 あいつの戦闘に関する腕は、槍を使わせたら勝てるやつはそうそういないだろう。

 にもかかわらず強さに貪欲なのか全人類のトップになりたいのか知らないけど、自分が勝つまで俺はいつまでたっても狙われる。


 とりあえずレイアの行動パターンさえ掴めば、逃げやすくなると一時期様子を観察していた。

 まずは冒険者ギルドで強いやつの情報収集。

 その後は腹ごしらえ。

 街の周りの魔物の強さを確認しに行く。

 街の飲み屋で情報収集兼腹ごしらえ。

 それで3、4日は村に滞在する。長ければ10日のときがある


 だいたいこの流れだった。だからタミエさんの店に来たのも腹ごしらえの為だろう。その後は街の周りの魔物の強さを確認しに行くだろうから少しは時間があるはず。


 さすがに今キッチンに戻ってタミエさんに事情を説明しようにも、近すぎてレイアに気がつかれるかもしれない。レイアのスキルを見ることが出来ないからわからないが、気配察知の能力がある気がする。


 何も伝えられぬままいったん村の近くの山までテレポートする。

 すばやく村の入口までもどり、人通りのないところでアイテムボックスからフード付きの外套を羽織り、冒険者ギルド近くで待機する。一応顔見知りの冒険者に今日ゴザレスを見たか? と確認すると、依頼を受けて出ているようだとの情報をつかんだので、そのうち帰ってくるだろう。


 本当はマーシェルにお願いしたいところだが、あいつは冒険者じゃないから何かあった時に対応できないだろう。

 信頼できるのはトゥイとゴザレスだが……トゥイは最近タミエさんと会うと距離が近いから、駄目だ。

 かといってゴザレスもこの間のあの反応、もしかするとタミエさんに想いを少し寄せているかもしれない。

 だがトゥイよりマシ!という理由でゴザレスが帰ってくるのを待つ。


 今のところ俺の勘はレイアが冒険者ギルドに近づいてくるとは示していない。


 日が暮れ始めたころ、レイアが外の探索を終えて村に帰ってきたと思われる。

 トラウマ的なのか俺の勘がそう訴えている。


 くそっまだゴザレスに伝えられてないのに見つかるわけにはいかない。

 勘を頼りに距離をとる。今なら家に帰れるかもしれないが、飲み屋で俺の話が出たらまずい。

 この世界では珍しいユウトなんて名前がついてる人間がここに居るのがわかれば、あいつはきっと血眼で探しに来る。

 しばらくは別の町まで逃げなければならない。


 はやくゴザレス帰ってこい!

 俺の思いが通じたのか、村の入り口から帰ってくるのが見えた。


 だが、レイアにも少し近づいてしまう。だが今なら間に合う。

 急いでゴザレスに走り寄り、腕を掴み路地裏にて要件を伝える。


「面倒な奴が村にいて見つかるとまずいんだ。俺はしばらく王都で隠れる。その間店の手伝いとタミエさんのことを守ってくれ報酬はだす。俺の家で泊まって護衛して変な客を追い返してくれればいい。それから多分タミエさんに頼めばご飯作ってくれるはずだ。悪い話じゃないだろ?ただし、タミエさんに手を出したら……半殺す」


「おいおい、人に頼み事するくせにその言い草はなんだよ」


「時間がないんだ、あとは頼んだ」


 確実にレイアが迫っていることを俺の勘が告げているので急いでテレポートした。



 王都には実は国王からもらった家がある。

 基本俺は自由に冒険者業してるからほとんど帰ることは無いんだが、緊急避難場所としてはありがたい。


 貴族と同じぐらいの家をあてがわれ、家には執事やメイドが居る。

 まぁこの家で働いてる奴は国から給料がちゃんと出てるから、俺が心配することは何もない。

 俺が玄関をノックをしてから開けると、執事のラングが駆け寄ってきた。


「おや、ユウト様おかえりなさいませ。ただいま支度をしますね。食事でよろしいでしょうか?」


「あぁ。突然帰ってきてすまない」


「いえいえお気になさらず。どんなことにも対応出来てこその我々ですから。それに、こちらも()()()やらせていただいておりますので」


 本当ここに居る奴らはみんな優秀だからな。

 今会話してるラングも王家に仕えていたが、歳を理由に隠居すると言っていたのに、なぜか俺の家の管理をしてくれている。


 テキパキとメイドたちに指示を出して準備に取り掛かってくれている。

 俺はとりあえず椅子に座ってゆったりしたいから、すぐ近くの客間の扉を開けると居てはならない人間がそこに居た。


な、なんか評価が★になってる。Σ(・□・;)

そしてブクマありがとうございます!ありがとうございます!


ユウトが失踪してた時のお話。次回にも続きます。

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●●短編書いてみました。●●
お時間あったら是非どうぞ。

四十肩賢者のダークトランス
……ダークトランスとか厨二感溢れてる気がする。
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