56.秘密を知るその前は。
ゴザレス視点
俺が出会って最初に思ったことは、何に対しても普通そうだなという事だった。
マーシェルがすげーうまい飯があるといって、強制的に連れてこられたのがユウトの家だった。
確かに俺は飯にうるさいほうだ。
何せ飯の為に種族を裏切るぐらいには飯を優先している。
そんな飯にうるさい俺に、マーシェルがうまい飯というのだから多少期待していったのだが、現れたのはまだ若い女。どうやらそいつが作るらしい。
こんな若い奴がうまい飯を作れるのか?
今まで俺がうまいと思った飯は、料理屋の店主がたくさんの年月をかけて完成させたものばかりだ。
だからこんな若く普通そうなやつが作る飯は平々凡々なものだろう、そう思っていた。
しかし、現れたのはパンとパンの間に肉と野菜が挟まれたハンバーガーと言うものだった。
見たことのないそれは、衝撃的な味だった。
こんな柔らかいパンはじめてだし、中の肉もさることながら赤いソースが肉の脂とマッチする。
こんなうまいものをこの娘が!?
ユウトは勇者だし、いろんな人脈があるだろうがどうして今、この娘の料理を俺に……。
もっと前から教えてくれてもいいだろうに。
名前をタミエと言うらしい。
珍しい名前だからこそ分かった。ユウトと同じなのだと。
ユウト達が店を始めてからは定期的に訪れた。
まだまだ俺が知らない料理をこの娘は知っている。
俺がこの村を拠点にしてるのは村の料理がおいしかったからだが、タミエの料理を知ってからは申し訳ないが、物足りなく感じていた。
そうしてようやく少し仲良くなったころ店は突然臨時休業した。
いつ再開するかもわからない状況。
だからこの村でなるべく厄介な案件を積極的に受けて、俺の本能的衝動を抑えようとしたが所詮人間にとっての脅威は魔族の俺にとっては大したことがない。
本来であればダンジョン最下層あたりまで行くべきなんだろうが、この村からダンジョンまでが遠すぎる。絶対途中で発作を起こしてしまうだろう。
難しい案件をソロ受けてたらいつの間にかトゥイまで居なくなってしまっていた。
村に居続けたら迷惑になりそうだと逃げこむように森に移動したが、襲い掛かってくる魔物どもは弱すぎて少しも欲が満たされない。
トゥイが俺を探しに来てくれた時には、既に人間に変化することも出来ないほどだった。
周りにあるすべての生き物を殺したくて仕方がなかった。
トゥイは俺の状態をみて、すぐフード付きの外套と村の料理屋の飯を持ってきてくれた。
ここしばらくは森の魔物どもを食い荒らしていたから、手間をかけてある料理を食べ少し落ち着いたものの、人間に変化できるほどではない。
タミエの料理がうますぎて、もう普通の料理を食べても身体は欲を満たせなくなっていた。
トゥイに支えられながらなんとかユウトの家まで来れた、来る途中トゥイには本当に申し訳ないことをした。
体格差もそうだが、なるべく理性を保とうとしたがやはり生き物を殺したくてうずうずしてトゥイを爪で刺してしまった。
トゥイは回復魔法で傷を治しながら、平気だよと言ってくれた。
そしてユウトの顔を見た途端、本気を出せる相手がいる事に喜んでしまい少し理性が飛びそうになった。なんとか堪えて、今度はユウトに支えられながら、家を後にした。出る前に俺の角をタミエに見られてしまった。
きっと次会うときには怯えられてしまうんだろうな。もう店に入れてもらえないかもしれないな。
ユウトのテレポートによって久々に来た無人島は、相も変わらず穏やかな海に囲まれた岩場だ。
誰かに見られる心配せず本気で戦える。
何度かここでユウトと戦っているのでクレーターがそこかしこにある。
久々に全力出して戦えるのは楽しかった。どんなに魔法を連発しても相殺してくるし、接近して爪で切り殺そうとしてもちゃんと防いで反撃までしてくる。手ごたえのある戦闘はいい。さすがは勇者だ、魔王様を倒しただけある。
数時間ユウトと楽しい手合わせをして、だいぶ落ち着くことが出来た。
ユウトはきっと俺を殺さないように手加減してるから本気が出せず、逆に大変な思いをさせてしまったな。
よし、飯を奢ろう。
そうして帰ってきてからは、普段できない贅沢をさせてもらった。
店の営業時間じゃ一人一品までと決まっているが、今は無制限に頼んでいる。
ユウトは美味い飯を毎日食えてるんだろうな、ったく羨ましいぜ。
飯を食べ終わった後俺の過去の話をしたら、タミエは面白い奴で俺に魔族の姿になってくれと言ってきた。
いや、普通の人間からしたら魔族なんて恐れの対象でしかないのに、その姿を見たいとか好奇心旺盛すぎるし、俺が魔族の姿になったら襲ってくるかもしれないのに……そんな簡単に人を信じるもんじゃないと思うんだが。
更には角を触らせて欲しいと言ってくる……物好きにもほどがあるだろう。
自分で言うのもなんだが、俺の角はけっこう禍々しい感じだから同族からも魔王に近い男と言われていたぐらいだ。
そんな見た目の角を普通に触れてくるなんて。
本来であれば触られたくはないが、俺に出来ることであれば何でも言ってくれと宣言してしまったから許した。……意外に悪くない。
優しく触れてくるタミエの手の感触が心地よくさえ感じた。
今までにない感覚に何だが自分がおかしくなってしまいそうで、タミエには悪いが早々に切り上げてもらうことにした。
しかも触った角を褒めてくる。魔族の男にとって角を褒められるのは、好きだと言われているようなものだ。
もちろんタミエは魔族と縁遠い生活をしててただの好奇心なのはわかっているんだが、告白されたみたいに感じてしまいまともにタミエの顔が見れなかった。
ユウトはタミエが好きなのだろう、俺がタミエと仲良くしていることに対して不満があるみたいで、早々に人間の姿に戻れと言われた。
ったく器が小さい。
そうこうしてたら珍しくトゥイが俺を迎えに来た。
明日雨でも降るんじゃ……。
そして何故だかわからんが、帰ってきたことを連絡しなかったことについて怒っている。
過去に発作が起きた一番初め以外は迎えに来たことなんてなかっただろうに。
トゥイの怒りの矛先がユウトに向いたのでその間に、タミエに今日話したことは内密にしてくれと頼みに行ったとき、あり得ない光景を見た。
誤字報告ありがとうございます!!
助かりました( ;∀;)
読みに来てくださりありがとうございます!そしてブクマもありがとうございます。
今3時過ぎました。激しく眠いです。
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