39.捕まえた
ユウト視点
早く終わらせたいがモデアからのゴーサインがでないので部屋で息を潜めながら待機している。
さっさと貴族にギベハルコンを渡してお金のやり取りしてくれたら動けるのに。
「そしてもう一つ、例のモノを入手いたしました」
そういってミステイストは囮役達から受け取ったデスソースをオラガという貴族に見せている。
「これはまだ王族さえ知らない特殊な調味料でして、一度食べたら衝撃的な味でうまみがすごいのです。私も料理評論家として色々な料理を食べてきましたが、先日お話ししたハンバーガーという料理の味付けにこれを使っているらしいのです。無事入手出来ました」
「なんと!」
「取りに行かせた者たちの話では、この瓶はハンバーガー用のカゴに入ってたんだとか。私が食べた時にも赤いソースが入っていたのでこれで間違いないかと」
「王族さえも知らぬ美味な料理。お主が今回は料理人も用意しておくといいと言っていたからな、厨房にて料理を作らせてある。それをかければ衝撃的な味を体験できるというわけじゃな。おいそこの!料理を持ってこい」
そういって側にいた奴隷に料理を運ばせ始めた。
出てきた料理は肉・魚・野菜と色々と出てきた。
「オラガ様、私もいただいてもよいでしょうか?」
「うむ、かまわぬ」
二人は早速肉料理にデスソースをかける。結構たっぷりかけたなぁ、アイツら終わったな。
抱えていたモデアが小刻みに震えている。
笑っているようだが声を出さないのは偉い、だが抱えているこっちの気持ちを考えてほしい。
もう降ろしていいかな。
デスソースがたっぷりかかった肉を頬張る二人。
二人とも盛大に咽ている。
「げはっ!!……ぁっ!!……っ!!」
なんとか喋ろうとする貴族だが声にならないらしい。
水を必死に飲んでいるが、当然治まる筈もなくただただ悶えている。
周りで慌てる用心棒達。
「うえっほ!うえっほっ!なぁ!?……あんだ……ごれあ……」
ミステイストも喋れていない。
毒と思ったのか毒消しポーションを飲んでいるが治まらない様子。
「ぎざまぁ……自分だけ、げっほ、ぼーしょんで回復しようなどと……」
貴族は激オコだが、いかんせん涙目でなんの威厳もないおっさんでしかないのが笑える。
「ギベハルコンを置いて出ていげ!!」
「そ、そんな!やぐぞぐが違うじゃないでずがっ!うえっほ!!」
「今モノを置いて出ていけば命まではどらぬ、ゴホゴホッ!このような事をしでおいで金を要求するとは死にだいようだなぁ」
ミステイストは仕方なく貴族にギベハルコンを渡すようだ。
まぁ命あってのなんとやらだからな、引き際は肝心だ。
抱えていたモデアが俺に降ろしてくれと合図するのでそっと降ろす。
机の上に置かれた二つの身分証。
それを雑に手に取る貴族。
それを見たモデアは高らかに宣言する。
「現時点を以てミステイスト及びオラガ=アクトゥークを違法取引によって捕縛します!」
自分たちの身内しかいないはずの場に見知らぬ声が響き、しかもまだモデアの魔法を解いてないから誰がそれを言ったのかわかっていない。
魔法を解く前にちょっとだけ準備。
俺はアイテムボックスから勇者だった時の名残の品、舞踏会用の仮面をつけてから魔法を解除する。
フード付き外套に仮面をつけておけば身ばれしないだろう。
何もない空間から人が出ればそりゃ驚くだろうな。あいつら面白い顔してやがる。
用心棒達はきっちり戦闘態勢を取っているが俺からしてみれば遅い遅い。
秒で部屋の中にいた用心棒達を気絶させ、メイドももしかしたら襲ってくるかもわからないから一応優しく気絶させておいた。
そしてモデアが捕縛しますと言ったからには、ミステイスト・オラガ両名を準備しておいた縄で縛りあげる。
「すみませんが、屋敷内全ての用心棒・メイドも捕縛お願いします」
黙って頷き部屋を出て行く。
さくっと屋敷内の人間を縛りあげて一か所に集めておく。
それが終わったのでさっきの部屋に戻ると、諦めの悪い貴族だけじたばたしていた。
モデアは俺が部屋に戻ってくると
「度々すみません。ガルギードを呼んできていただけますか?」
再び頷き裏門に居る二人に話しかけようとしたが、マスクをしてて誰だか分らなかったらしくイカツイ奴隷に襲われた。
まぁ遅れはとらないけどな。
仮面を外し俺だと分かるとガルギードが奴隷に命令して攻撃をやめさせた。
謝ってきたが俺も仮面つけっぱなしだったのが悪いし気にするなと言ってモデアが呼んでいることを伝えた。
仮面をつけなおし三人で部屋に戻ると優雅にお茶を飲んでいるモデア。
おい、このやろう。
「呼んできて下さりありがとうございます。ガルギード、確認をおねがいします」
言われたガルギードは気絶しているメイドの背中を見る。
「奴の仕業でまちがいないな。捕えているのはこれで全部か?」
「いや、まだいる。エントランスにこの部屋以外の人間は全部集めておいた」
「確認しに行こう」
そういうとガルギードはイカツイ奴隷をつれてエントランスに向かって行った。
俺はもう帰っていいだろうか?
ここから反撃できるやつはいないだろうし、後はモデア達で何とかしてくれないかな。
タミエさんが心配で心配で。
しばらくして戻ってきたガルギードはイカツイ奴隷に縛られた人間を一人担がせていた。
ミステイスト達のそばに下ろされたそいつは、目の下にクマができていて髪の毛もボサボサもやしっ子って感じの割と若めのやつだ。
「さて、これで後はしかるべきところにつきだすだけですが……お仕置きが必要な人がいますからね」
モデアはデスソースを片手にもやっし子の前に行った。
ご愁傷様。
容赦なくデスソースをもやっし子の口にぶち込み悶えさせている。
ガルギードは興味深そうに見ている。
っていうかソース飲まされてるこいつ何者だ?
ガルギードに聞けば奴隷市場の職人になるべく試験を合格してきた者で真面目に学んでいたが、いざ本番の施術となったとき本性をあらわしたという。
ギベハルコンを埋め込むのに不必要な傷をつけ悲鳴をあげさせるのが趣味らしく、この技術をもって行方を眩ませてしまったらしい。
本来であれば成功した者は秘匿保持のための奴隷契約に似たものをしなければならないらしいが、それをする前に逃亡したとか。
奴隷作成の技術が漏洩しないよう、ガルギードも奴隷を使ってこいつを探し回っていたそうだ。
「ではガルギードお願いします」
デスソースで咽悶えるもやしっ子をガルギードに突き出すと、鞄から奴隷用ギベハルコンを取り出しサクッと背中に傷を作り埋め込んだ。
流れるような無駄のない動作。
これで完了という。
「そもそも商品をむやみやたらに傷付けては売り物にならないからなぁ」
ガルギードの言う通りだが、さわやかにやってのけるあたりこいつもなかなかに癖のあるやつだと思った。
で、もう帰っていい?
ありがとうございます!ありがとうございます!
ようやく捕まえられました。
長かった・・・。
ユウトさんデートできるといいね。
さて今更新時間まで残り20分切ってます!
今日ギリギリすぎ!
書き終わったのでとりあえず寝ます。




