３６．ついに行動開始
すっごいニコニコしたメリカさんは何やらお願いごとがあるらしい。
「キッチンお貸ししますので、何か作っていただけませんか？」
あぁ……これはあかんやつだ。
きっとキッチンに連れて行ってどうやって作っているのか見たいやつですよね。
だめだめ。ユウトさんにもここで料理召喚しないようにって言われてるんだから、また約束破るわけにはいかない。
材料がないのでごめんなさいをしたけど、粘るメリカさん。
「私はなかなかこの支部から動くことが出来ないので、食べに行きたくても行けないのです。モデアさんがうざい顔で自慢してくるので、どうしても食べてみたいのですがダメでしょうか？」
モデアさん何してくれてんの。
お姉さんはうるうるとした瞳でこっちをずっと見てくるよぉ・・・。
そうだ！営業用にストックしてるやつをカバンの中でアイテムボックス開けばばれないかな。
料理召喚してるわけじゃなくて、カバンから出したってみえるよね。
テーブルの下に置いていたカバンをがさごそと漁るふりをして、メロンパンを取り出す。
「あの、これ旅のご飯用に作っていたもので良ければ……」
そうしてメロンパンを見た瞬間にメリカさんの顔がそれはもうすっごい顔になった。
バーゲンセールのおばさま達みたいな圧があった。
「こ、これをいただけるんですか！？」
「えぇ……」
こっちが引くぐらいに切羽詰まってるようなメリカさん。
どうぞとメロンパンを渡すと、それはもういろんな角度から見たり匂い嗅いだり、メモを取らないモデアさんみたいな感じになっている。
そして一口食べたメリカさんは、目が落ちそうになるほどがん開きしている。
そうこうしてるうちに、私のもとにもメリカさんが頼んでくれたご飯がやってきた。
この世界で一般的な固いパンとまっ白いスープ、スクランブルエッグみたいなものに、一口サイズのお肉が三つほど入っている何か。
店員がメリカさんが食べているメロンパンを見て、すっごいうらやましそうな顔をしている。
いや、もう出しませんからね。収拾つかなくなったら困りますから。
パンをちぎってスープに浸し食す。
うんイケる。ミルクベースのスープに何だろう？なんか程よい塩みとよくわからないけど、コクみたいなのがある気がする。
スクランブルエッグと一口サイズのお肉も美味しかった。
私が食べ終わるとメリカさんはすっごい、いい笑顔でこっちを見てるけどもう出さないよ！？
「タミエさんここにいたのか」
振り返るとユウトさんと……トゥイさん！？
「どうしてトゥイさんがここに？」
「俺が信頼できるなって思えるやつは今のところゴザレスやトゥイぐらいだからな。今回の作戦はトゥイに頑張ってもらうことにしたんだ。本当はゴザレスも呼びたかったんだが別の仕事してるらしくてな」
「タミエさんよろしくね。一緒に頑張ろう」
知り合いが増えると心強い。
トゥイさんが戦ってるイメージは湧かないけどユウトさんが言うんだからきっとすごいんだと思う。
それからというもの基本的に私はモデアさんに用意してもらったお部屋で待機で、ユウトさんとトゥイさんが下準備をする日々。
私は商業ギルド内を見て回ることしかできてない。
そうこうしてるうちに、ついにミステイスト達を捕える日になった。
囮役の人達からモデアさんに連絡が入ったそうだ。
夜ミステイストと落ち合うと。
場所や時間をみんなで共有し準備をする。
ユウトさんはモデアさんと一緒にミステイストと貴族が落ち合うと予測される場所に。
私はトゥイさんと一緒に囮役の人達の護衛らしい。
と言っても私に戦えるような力はない。
ミステイストと囮役の人が会うのが街の外れにある公園だという。
そこにはベンチとかでいちゃついてるカップルとかがいるらしく、それに紛れるんだと。
少し綺麗めな服をモデアさんが用意してくれて、髪型もメリアさんが張り切ってセットしてくれた。
普段の私らしからぬ格好だからミステイストにばれないだろうと。
珍しい格好になった私を見たユウトさんは似合っていると言ってくれたし、そしてトゥイさんも可愛いよと言ってくれてこそばゆい。
私のそばにいたトゥイさんをすっとユウトさんが連れていき向こうでこそこそと何か話しているけど最終打合せかな？
戻ってきたトゥイさんは小さく「お～こわ。」って言ってたけどどんな刺客が来るんだろう。
トゥイさんがこわって言うぐらいだからね、足を引っ張らないように気をつけなきゃ。
時間になりそれぞれ行動を開始する。
トゥイさんと公園に行き良い場所を探す。
「タミエさん、腕組もう？」
「う、うんそうだね」
そうかカップルぽく周りから見られないとだめだよねと腕を組んで歩く。
身長は大して変わらない。少しだけトゥイさんの方が高い。
そして唐突に不安になった。
トゥイさんは美少年って感じだから、私誘拐犯とか思われてないよね？
そんな話をしたらめちゃくちゃ笑われた。
「あはは、タミエさん面白いね」
いや、こちらは真剣に悩んでいるのだよトゥイさん。
「僕タミエさんより大人なんだよ」
可愛い顔して何言ってるんだろう？
子供って大人ぶりたい時期があるよね、そういうお年頃なのか。
そんな話をしてたらトゥイさんが足を止めた。
視界の先にはあのメタボ……ミステイストと思われる人物が歩いている。
街灯があるけどそこまで明るくないからはっきりと断定できない。でもトゥイさんが止まったってことはそういうことなのだろう。
公園の少し大きめの木々が立ち並ぶところへ入って行くメタボ。
トゥイさんと気づかれないように後をつける。
人目に付きにくそうな場所に囮役の二人とメタボの三人がいた。
ここからだと会話は聞こえないけど、二人が例のアレをメタボに渡したのが確認できた。
木を背に立っていた私の視界をふっとトゥイさんの顔が奪った、横を見ればトゥイさんの腕。
か、壁どん！！？
壁どんって言うか、樹どん。
唐突にどうしたのぉぉぉ。
そんなキレイな顔近づけすぎないでぇぇ！へこむ！！
おでことおでこがこつんと当たると、小声で
「囮役を始末するためのやつらが動き出したみたいだよ。あいつらに気づかれないように、僕達も恋人のふりしながら移動しよう」
ふぉぉぉ～。びっくりするから！そいうことするなら事前に打ち合わせとかして欲しい。
見に来てくださりありがとうございます。
ようやくミステイスト討伐？が始まります。
はやく終わらせて、あの人とあの料理を・・。
