35.到着シュウェーラ
ご飯を食べ終えて支度が終わったので、エクシー町の観光することに。
トーン村→シードゥ町→エクシー町→シュウェーラ街
シュウェーラ街の一個前の町だから栄えているのかなって思っていたら、意外や意外シードゥ町の方が栄えていることが発覚。
エクシー町は穏やかに時が過ぎる感じの町だった。
町で見るものが無くなったのでシュウェーラに向かうことになったが、馬車はやめて徒歩で行けるところまで行ってみたいとユウトさんに言ったら、全力で止められた。
以前シュウェーラまで行くのに約一か月かかると言ったのは徒歩で行く場合でらしく、エクシーからシュウェーラが一番距離があるんだと。徒歩だと17~20日だそうで野宿にも慣れてない私には無理だと止められた。
た、確かに戦えるわけじゃなし、野宿のノウハウもないから、ユウトさんに迷惑を掛けてしまうかもしれない。
私が何を考えているのかわかったのか、こそこそっと耳元でユウトさんがテレポートするから平気だと伝えてきた。
っふ……もうドキドキなんてしないんだからねっ!
ということでテレポートでシュウェーラの町に行くことになったけど、シュウェーラはミステイストの本拠地、街でうっかり出会う可能性もあり得る。
なので、冒険者用のフードのついた外套を用意してくれた。
ユウトさんはもともと持っているものがあるのでそれを着用している。
夜になり、人通りが少なくなってきたのでユウトさんの後を歩き町の端っこの裏路地につく。
奥まった場所で人目につかないからここからテレポートするようだ。
「タミエさん……手をいいか?」
そうだ、ユウトさんに触れてないとだめなんだった。
出されている手を握るとユウトさんはしっかりと握り返してきた。
剣だこ?と思われるちょっとごつごつした手に触れて、戦うって大変なんだなって思った。
一瞬で足元に魔方陣があらわれ視界が歪み、次に見えたのは、とても立派な大きな石の壁に囲われた街だった。
私達は街の手前にある林にテレポートしてきた。
そこからは徒歩で歩いて門まで向かう。
作っておいた冒険者の身分証のおかげですんなり入ることが出来た。
今日はこのまま宿を探すのかと思ったら、ユウトさんはまっすぐ商業ギルドに向かった。
モデアさんから話があると言われているらしい。
夜だけど行ってモデアさんいるのかな?
家に帰ってたりしない?
大きな街の商業ギルドはそれはもうとてつもなく大きくてびっくりする。
三階建てのデパートみたいな大きさだ。
ユウトさんは慣れた感じで受付の人に話をつけて三階に案内された。
ふわふわのソファーにきれいなローテーブル。
壁もとっても綺麗。
これはちょっといいホテルみたいな感じだ。
ソファーに座って待っているとコツコツとドアをノックされ、入ってきたのはティーポットを持ったきれいな女性。
これはメイドさんなのかな?
リアルメイドさんとかちょっとテンションあがる。
所謂メイド服は着てないけど流れるような動作がきれい。
ユウトさんとまったりお茶を楽しみながら待っていたら、モデアさんがやってきた。
「大変お待たせしました。いろいろ立て込んでまして」
「で、言われた通りにここに来たが新たな情報でもあんのか?」
「えぇ。実は色々な所にご協力いただきミステイストの周辺を調査しておりまして、その結果どうやらやつは貴族から優秀な護衛を与えられているようなのです。ユウトさんには囮の人達を守っていただきたかったのですが、出来ればミステイストを捕まえる方にご協力いただきたいのです」
「それは構わないが、そうしたら囮役やつらどうするんだ?」
「なので、ユウトさんの友人で優秀な方にこちらへ来ていただくことはできないでしょうか?もちろん来ていただくのに必要なお金はこちらでお支払いします」
なんか大人の話だなぁ・・・ユウトさんとは同い年だけど。
私に出来ることがなさそうなので、ただまったりとお茶を飲むことしかできない。
二人は話をして色々決まったみたい。
もう私にはわからない領分なので、二人に任せます。
ぼーっと過ごしてたら話も終わったみたいで、宿を探しに行くものだと思ったらモデアさんが客室を用意してくれたということで案内してもらった。
入った部屋にはふかふかそうなベッドが二つ。
ベッドが二つ!!
一緒の部屋ですって!?
な、な、な、なあああああああああ!
モデアさんどういうことですか!!何故!部屋が一緒なのですか!!
わなわなと震えていたら、ユウトさんから
「じゃあ、俺はさっき話してた通り仲間集めしてくるからこの部屋自由に使ってくれ。ここにいれば安心だから。ゆっくり休んでくれ」
あ、話を聞いてなかった私のせいですね。
ユウトさんは私の方にやってくると耳元で
「ここで料理召喚はしない方がいい。モデアの手のものが見てる可能性がある。飯は料理屋に行こう」
それだけ言って、モデアさんと共に部屋から出て行ってしまった。
えぇ・・・何忍者でもいるの?
そういうフラグみたいなことを言って去る癖? やめてもらっていいですか?
とにかく普段味わえないようなふわっふわのベッドで休むことになった。
それはもうぐっすり寝れました。
ベッドのふわふわ具合って大事だなぁ、一人暮らししたらこのベッド買って寝れたらいいな。
ま、まだまだ先の話ですけどね。
部屋を出てとりあえずモデアさんを探すことにした。
きっとユウトさんの行き先を知っているだろう。
すると向こうから書類を抱えた背の高いお姉さんがやってきたので会釈で通り過ぎようとしたら声をかけられた。
「どちらに行かれるのですか?」
「えっとモデアさんを探していて……」
「でしたら私と一緒に来て下さい」
そう言われ後を付いていくと二階に降りて奥にある部屋の前で背の高いお姉さんが止まった。
ドアをノックするとモデアさんの声で、どうぞと返ってきた。
「おや、タミエさんが一緒とはどうしたんですか?」
「三階で迷われていたので連れてきました」
「それはそれは。タミエさんどうかしましたか?」
「あのユウトさんはまだ戻ってきてないですか?」
「えぇ、今のところ戻ったという知らせは来て無いですね」
「そうですか。そしたらご飯が食べれる所を教えてもらってもいいですか?」
モデアさんは両手をパンと叩くと、すごくニコニコして隣にいるお姉さんをみている。
「では私が……」
「わかりましたご案内します。モデアさんはこの書類お願いしますね。」
モデアさんの言葉を遮ってお姉さんは抱えていた書類をドンっとモデアさんの前に置くと、私に向ってこちらですと案内を始めてくれた。
後ろでモデアさんがすごくがっかりした顔をしていた。
同じ二階に小さなカフェテリアみたいなエリアがあってそこを案内してくれた。
お姉さんはそのまま私と一緒のテーブルでくつろぎ始めた。
お仕事は大丈夫だろうか。
メニューをみても今回はユウトさんみたいに解説してくれるわけではない。
「お姉さん、おすすめがあれば教えていただきたいのですが」
そういうと頷いてから店員を呼び適当に頼んでくれた。
「申しおくれました、私はこのシュウェーラの街の商業ギルド代表のメリカと申します。モデアから聞いているのですが、あなたがとてもおいしい料理を作られているタミエさんですよね?」
「あ、えっと……とてもおいしいかどうかは人それぞれだと思うのですが、たくさんの方には来ていただいてます」
するとお姉さんがすっごくいい笑顔してる。
なんていうのモデアさんみたいな笑い方って言うのかな。
「少々お願があるのですけど……」
だいたいこういうお願いはあんま良い話じゃないって知ってる。
見に来てくださり本当にありがとうございます。
さぁてメリカさんの頼み事とは一体。
商業ギルドで働くと意味深な笑顔が身につくんでしょうね。
あ、無事恵方巻食べれました。




