28.腹が減っては何とやら
リビングに着くとやたら意気込んでいる縛られたままの二人。
満足げな顔をしているモデアさんがいた。
「あの、これ見たことないものになりますよね?」
そう言ってデスソースの瓶を見せると、モデアさんがすごい勢いで私から瓶をとって凝視している。
「この赤いのはハンバーガーに入っていたソースですか!しかもこの瓶についてる飾りの骨は……まさか妖精は実在したというのですか!?」
あ、キーホルダー取っとけばよかった。なんか誤解してる。
おもちゃって言っても頭蓋骨のおもちゃなんて物騒だよねぇなんて言い訳しよう。
「ハンバーガーに入っている赤いやつではありません。その飾りは、えっと……」
言い淀んでいる私にユウトさんからの助け船が。
「それは危険を示すマーク代わりの石の彫物だ。その赤いやつ食べると大変な事になるぞ」
それを聞いたモデアさんは少しがっかりしたものの、頭蓋骨の形した石ということになったキーホルダーに興味津津のようだった。
「こんな精巧な彫り物ができるなんて素晴らしい技術……しかもこの石は異様に軽い。ふむぅ……」
とぶつぶつ何か言っている。
そこに縛られている二人から逃げたりしないから縄をほどいてくれと要望があり、ユウトさんとモデアさんから許可が下りてようやく自由の身になった二人は空腹を訴えてきた。
「朝しか食べてないからめっちゃ腹減っているんだ。なんか食い物くれ……」
そう言えば私達はハンバーグディッシュ食べたけど、この人たち物置部屋にいたから食べてなかったわ。
ご飯の恨みは怖いからね、これからミステイストを捕える時に役に立たないと困るし。
かといって同じハンバーグディッシュって言うのも違うよなぁ。
何にしようか悩んでたらユウトさんが二人に話しかける。
「お前らはここの住人に夜中にやってきて怖い思いをさせたんだ、することがあるだろう?」
「「本当にすみませんでした!!俺たちに出来ることがあれば何でもします!!」」
その言葉を聞いたユウトさんは満足そうにしたかと思ったら、びっくり発言が飛び出した。
「何でもするんだな。よし、今持っている有り金全部ここに出せ」
ええええええ!?
かつあげぇぇぇ!!な、何も全部じゃなくても……す、少しぐらいで。
言われた二人も「え!?」ってなってるけど、大人しくお財布を机に出してきた。
中身を空けて金額をチェックするユウトさん。
すると、それぞれの財布からいくらか抜き取って二人に返した。
疑問符が頭の上に出ている二人をよそに、お金を握りしめたユウトさんが私の腕を引っ張ってキッチンに誘導した。
「タミエさん、これであいつらにハンバーガーを一個ずつ頼む」
そう言って握りしめていたお金を渡してきた。そこにはハンバーガーの売値である250Vが二人分あった。
私は言われた通りハンバーガーを二つだしてリビングに持って行く。
この程度で済ませてくれているユウトさんに、あの二人は感謝をした方がいいなって思ったけどそれを言うのは野暮ってもんだよね。
二人にしてみれば見たことのないハンバーガーが出てきているが、カツサンドの時の信用があるからかすんなり受け入れて食べ始めた。既にお分かりかと思うが、ビクッとなっていつものパターンでしたよ。
そんな食べている二人にお茶を用意している間に、モデアさんとユウトさんがひっそりと外へ出て行った。
ハンバーガーを食べた二人は私に再度謝罪をしてきてくれた。
「あんたには怖い思いさせて本当に悪かった。けじめはつける。ミステイストを絶対に捕えてみせるぜ」
「はい、頑張りましょう!こんな思いをする人を増やさないためにもお互い出来ることを精一杯やり遂げましょうね!」
「「おう!」」
なんだか小さいけれど絆が出来たような気がします。
そこからはなんだかんだと談笑をしていました。
しばらくした時にユウトさんとモデアさんが外から帰ってきた。
するとユウトさんがそのままこちらにやってきて、ぼそっと「あとで話がある。」と耳元で囁いてきた。
あ……あ…………あかーーーーーん!
そ、そういう、囁くとか……反則!
独身貴族そういうの慣れてないから!普通に面と向かって言えばいいじゃない!
な、なんで囁いたのぉ……。
耳まで赤くなっているその様子をモデアさんがにやにやしながら見ていたことをテンパりすぎてた私は気付かなかった。
評価ありがとうございますぅ( ;∀;)
ブクマも、めっちゃ嬉しいです!
っていうか雪が降ってきてめっちゃ寒いですね。冬眠したいです。




