２２．ふふふ・・・おいしいでしょ？
この世界にないタレがついて、柔らかいパンにはさまれているカツサンドだよ？
お店でもまだ出してないんだよ？
「今度うちのお店の新商品として出してみようかなって思ってるんです。お味はいかがですか？」
一口サイズのカツサンドだからすぐに食べ終わった二人はお互いに目が飛び出しそうな状態になっていた。
「な、なんだこの料理いままで食べたことがねぇ！」
「めちゃくちゃうめぇ。王都で食べた料理よりうめぇ！！」
「ご意見ありがとうございます。じゃあ、ユウトさんあとは煮るなり焼くなりよろしくお願いします」
「お、おいアンタ、皿にまだ残ってるじゃねか。寄越せよ」
「え？夜中に侵入してきて、謝罪もせず、誰が依頼者かも言わない人たちにどうして全部差し上げる必要があるのですか？」
「それをくれたら喋ろうかと思ったんだけどなぁ」
「先ほど、毒かもしれないからいらねぇよって仰ってましたよね。私が無理やり一口分突っ込んだだけですから、本来いらないんですよね？」
「い、いやぁ～？そんなこと言ったか？」
短髪の男が少し動揺しながらも否定してきたけど、こっちはお前がいらねぇっていったの覚えてるからね！
すると、
「こいつは確かにいらねぇって言った。だが、俺は言ってねぇ」
坊主頭の男が相方を見捨てた。
「確かにそうですね、貴方はいらないって言ってませんでしたね。じゃあもう一つどうぞ」
あえて坊主の男に二個目をあげる。とてもおいしそうに食べている。
そりゃそうだろう、朝のスープとパン以降何も食べていない空腹状態で、料理召喚の特別なご飯。
空腹は最高のスパイスと言いますからね。とてもおいしく感じたことでしょうよ。
まぁ、空腹じゃなくてもこの世界の人達からしたらめちゃおいしいでしょうけど。
それを食べれる方と食べれない方。
横目に見ていた相方が、当然のように口喧嘩を始めた。
「てめぇ、何一人だけ食ってんだよ！」
「お前いらねぇって言ってたじゃん」
「言ってねぇよ」
「言ったよ。お前はスープの方がいいんだろ？」
「なんだとぉ～！」
ふむふむ、この二人絆があるわけではないとみた。
言い争っていた短髪が坊主相手じゃ話にならないと話し相手を私へ変えてきた。
「おい、その皿に残っているやつ全部俺にくれたら、依頼主について話す。だからくれ」
「ユウトさんあげたら喋ると思いますか？」
「いや、喋んないだろうな。俺が今まで色々としたが全く口の割らないやつだ。食い逃げされるだけだやめた方がいい」
「おっさんは黙ってろ！」
すっと割り込みこちらの言いたいことをさらっと言っておく。
「このカツサンドはお二人の反応からしてもきっと売れ筋商品になりそうなので時機を見てお店の定番メニューに加えます。値段は４５０Vか５００Vぐらいでしょうか。別に喋らなくてもいいですよ？今後お二人はうちのお店に出入り禁止になるだけですので」
「「はぁ？」」
「いや、ずっとこのままなわけないじゃないですか。村の警備の方に引渡したりしますよ。そうしたらいずれ解放されますよね？自慢じゃありませんが、うちの飲食店は並ぶほどみなさんに贔屓にしてもらってますので、あなた方がもし列にいるのなら、排除してもらうだけです。しっかり顔も覚えましたし。たとえお金をどれだけ持ってきていただいても、ご協力していただけない方に料理は提供しません」
たとえうまくこの場を逃げられたとしても今後ここに来ても食べることが出来ない。
事前に値段を言ったのも、そこまで高くない値段でこのクオリティのものが食べれるはずなのに、協力しないと今後食べれないと思ってもらうため。これはかなり痛手のはず。
「それにもし今後の営業に害になりそうなら、足を切り落としてから警備の方にお渡しすればいいだけですし。ユウトさん足って切れますか？」
「余裕だな」
そういうと、近くにあった太さがちょうど成人男性の胴二人分ぐらいの幹の太さの木に向かって持っていた剣を軽々と一振りしたユウトさん。
剣をしまって切りつけた木に手を軽く触れたら、木がドッシーンと倒れました。
え？ えええええ！？ 軽くお芝居で威嚇しましょうと言ったけど、あの太さの木を余裕の一振りで切り倒しちゃうの！？
切り口がめっちゃキレイ。
ひええぇぇ、これ切られたのが一瞬わからないやつなんじゃないの？
縛られて動けない状態の二人も、自分たちの足は簡単に切り落とされかねないと思ったのか真っ青な顔している。
「なんならあのぐらいの木に人間二人分ぐらい縛り付けておいても一撃で切り倒せるぞ」
私も二人と同じぐらいびっくりしてるけど、それを表に出さないようにして縛られている二人に話しかける。
「それでお二人はご協力くださらないんでしたっけ？」
「「すべてお話します！！」」
ようやくちゃんと話してくれる気になってくれたので、縛り付けたままにして家の中で話を聞くことにした。
座りたいもんね。
この二人はミステイストに雇われたと白状した。
どうやら調味料や食材で見たことが無いものがあるはずだから、それを取ってこいと言われたらしい。
うーん、なるほどぉ。営業妨害っていうのかな？窃盗？盗まれてないから窃盗未遂かな？法律詳しくないからわかんないや。
リベール商会のモデアさんの名前出したらミステイストは顔色変えたけど、モデアさんに相談できないかな。
自分じゃ難しいことは得意そうな人にお願いするのが一番だよね。
餅は餅屋って言うし。
でもどこにいるかわからないな。困った。
ユウトさんにこの世界に電話みたいなものがあるかどうか聞いたけど、個人での所有はほぼなくギルド間の連絡用であるぐらいということだった。
ミステイストに、この二人を見せつけて雇ったでしょ！って言ったところで知らないと言われるのが目に見える。
そして、ここに捉えている二人がなかなか帰ってこなかったとしても、向こうは異常を察して別の対策をしてくるかもしれない。
もっと手練れとかそういう感じの人たちが来るかもしれない。
早めに解決したいけど、どうしたらいいのか。
「俺の知り合いに情報屋がいるから、モデアさんの場所を調べてもらおう」
ユウトさんが提案してくれたので、お願いすることにした。
とりあえず、証言をしてくれるこの二人は何としても確保しておきたいので、物置小屋に軟禁しておくことにした。
ユウトさんが言うにはその情報屋さんは本当に仕事が早くて、たぶん明日の夕方にはわかるはずだと。
ちょっと連絡してくると言って心配性のユウトさんはお家と私の部屋に魔法をかけて家を出て行った。
さすがに反省している私は、今度こそ自分の部屋から出ないと心に決めて眠ることにする。
臨時で明日も営業することになったし。
ゆっくり休んでおかないとね。
あ！ユウトさんが言ってた３つの新しいおにぎり何にするか聞くの忘れた！！
まぁ、朝までには戻ってくるよね。
明日看板作りしよう。
うみゃああああ。
読んでくださりありがとうございます！！！
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