19.武器召喚?本来は飲み物です。
すこし暴力的な描写があります。苦手な方は、あとがきまで飛んでください。
簡単なまとめを書いておきます。
ゆっくりと階段に向かって行く重たい足音。
私はあるものを複数呼び出し準備する。
階段を降りるミシッミシッという音を確認してから部屋を出た。
忍び足で階段に向い、ゆっくり下りている負んぶをしている坊主の男がいた。
男が持っている明かりで二人組の特徴が、坊主と短髪というのだけはわかる。
絶対許さぬ。
こんな怖い思いをさせておいてこのまま逃げられたら誰がやったかわからないままになって、誰からも罰せられることが無いなんて。
私は容赦なく男達を階段から突き落とした。
当然二人とも派手な音を立てて階段から落ちた。
しかし、この程度ではすぐ起き上がってくるかもしれない。
すぐさま階段を駆け下り、召喚しておいた瓶ビールで坊主頭をフルスイングしてやった。
瓶ビールはビールをまき散らしながら砕け、容器として体裁を保てなくなった瓶は光の粒となって消えていく。
わき目も振らずに、負んぶされていた負傷してると思われている短髪の男の頭も瓶ビールでフルスイングする。
相手は二人、両方とも対処しなければならない。
無我夢中で交互に坊主と短髪の男の頭や顔を瓶ビールでフルスイング。
階段を降りた先は玄関なのだが、現在玄関はビール臭くなっている。
瓶は割れると消えるけど、中身のビールはそのままなのだ。
びしょびしょになりながら腕が痛くなってきたところで、さきほどから二人とも全く動かなくなっていることに気づく。
そこで冷静になった。
え……まさか、こ、こ、ころしちゃった?
急いで脈をはかる。
……生きてる。二人ともちゃんと脈はあった。
彼らの意識が戻らないうちに縛りあげるためにロープを持ってこなくは、確か外に薪をまとめておく用のやつがあったはず。
取りに行こうと半開きになっている玄関のドアを開けようとしたら勝手に勢いよく開いて、剣を構えた人が目の前にいた。
「っ!……タミエさん!?」
声の主はユウトさんだった。
見知った声に張り詰めていた緊張の糸が切れて、その場にへたり込んでしまった。
床にはビールの水たまりが出来ていて、へたり込んだせいで上半身だけだったのに、全身ビールまみれになった。
「あの、ご、ごめんなさい、玄関汚してしまって」
咄嗟に出てきた言葉が、ビールで汚してしまった玄関のことしか出てこず、まだ朝になってないのにユウトさんが何故もう帰ってきてるのかを考えられなかった。
ユウトさんは剣を鞘に納め「あとはやっておくから風呂に入ってこい」と少し荒々しい口調で私をお風呂場に促した。
お風呂さっぱり気持ちいい!!キレイさっぱり。
さよならビール臭!
ユウトさんが帰ってきたってこともあり、だいぶ気持ちも落ち着いた。
リビングにはユウトさんがまだ魔物退治用の装備を着替えもせずに座っていた。
私を認識すると手招きしてきたので向かうと、ユウトさんの目の前に座らされた。
いつもの穏やかな空気は全くなくピリピリとしている。
あ、これめっちゃ怒ってる。
「タミエさん……」
こういうのはまず誠意をもって早めに謝ることが大事だ。
ユウトさんの言葉を遮り、立ち上がって最敬礼をする。
「ユウトさん玄関ビール臭くして汚してしまいすみませんでした!」
「……タミエさんとりあえず座って」
「はい……」
普段が温厚な感じなぶん、今の問答無用なオーラが怖い。
夜中にやってきた二人組よりめっちゃ怖い。
「玄関が汚れるのは正直どうでもいい、生活魔法でどうとでもなるからな。
……俺が家を出る前に言ったことタミエさんは覚えてないのか?」
玄関をビール臭くしたことを怒っているわけじゃない?
家を出る前に言われたこと……あ。
「誰か来ても部屋から出るな……」
「そうだ」
あああ!やってしまった。
ミステイストの送ってきた刺客を無罪放免させるかぁ!という勢いでユウトさんとの約束を破ってしまった。
それをユウトさんが今怒っていらっしゃいます。
「なんて無茶な事をしたんだ!今回はたまたま運がよく間抜けな奴らで助かったが、ゴザレスやトゥイみたいな奴らだったらタミエさんが返り討ちに合っているか、拉致されていてもおかしくない状況だぞ」
冷静になってみたらそうですよね。
魔法とかある世界なら、有能な人なら身体強化とかしててもおかしくないし、まだ見たことのない技とか使われたりしてたかもしれない。
「俺がタミエさんの部屋に五重の魔法をかけてあることを伝えてなかったのが不安にさせたのかもしれないが、正直約束を破られるとは思っていなかった」
「ごめんなさい」
ユウトさんの魔法を信頼してなかったとかそいう理由ではないけれど、私の勝手な行動がよくなかった。
「……なんで部屋を出たんだ?」
正直に侵入者が話していたこと、それを聞いてミステイストがやったと証言出来る人間を確保したかったこと、彼らを無罪放免にしたくなかったことを告げた。
それを聞いてユウトさんは、しばらく黙ってから私の目をしっかり見てきた。
「タミエさんの言い分はわかった。だが、自分の安全をしっかり確認もせずにとった行動に罰を受けてもらう。ステータスを見せてくれ」
言われた通りにステータスを見せると、しばらく考えこんでからユウトさんは9000Vを出してきた。
「タミエさんには俺に借金をしてもらう。ハンバーガーを60個この金で召喚してくれ」
唐突な大量のハンバーガーの依頼に頭の中に?しか浮かばなかった。
「勝手に部屋から出たタミエさんには、俺が呼び出された魔物の討伐に参加した人たちへの夜食を負担してもらう。俺が立て替えるから、タミエさんはこの9000Vを俺に返済するように。それが罰だ」
そんなことで許してもらえるの?
追い出すとかでもなく、借金という罰。
ユウトさんの優しさに感謝しかない。
今回のお話のまとめ
・やってきた二人を料理召喚をつかって退治したよ。
・ユウトさんが戻ってきて部屋を出たことをめちゃくそ怒られたよ。
・罰としてユウトさんに借金することになったよ。
こんな感じですかね。
ありがたいことにブックマークが増えており、私は小躍りしております。
焼きおにぎりはいったいいつになるのだ。




