18.深夜の訪問者
ユウトさんが行ってからどれぐらいの時間が経ったかわからない。
新メニュー用の看板を作りながらも、ユウトさんが出て行く前に言っていた不穏な言葉が頭から離れない。「俺以外の人が来たら……」
フラグ立てるのやめてほしい。モデアさんの時もなんやかんやでフラグは回収されてるし、これ絶対何かあるよ。
もう夜だし街灯があるわけじゃないから真っ暗な中わざわざここまで誰が来るというのだろう。
やることやったし部屋から出るなって言われたし今日はこのまま寝よう。
考えてみれば異世界で初めて一人で過ごすんだ。
いままでユウトさんが当たり前に居てくれたけど、本来であれば一人が普通だったはず。
一人がこんなに心細いなんて。
いや、こういう風に思うのはフラグのせいだ。
部屋の明かりを消してベッドに入る。
何事もなく朝を迎えたい。
せっかく明日焼きおにぎりの出番なのに。
うつらうつらとまどろんでいたところに、ガタガタッという物音がした。
ユウトさんの不穏な言葉で気が張っていたせいか外の物音にすぐに反応し起きた。
おのれフラグ……。
そぉっと窓辺に寄り、外の様子を窺う。
窓の下に見えたのは暗くてよくわからないけど、二人いる。
玄関あたりで何かをしている。
家の中に入ろうとしているようだ。
……はぁ、フラグ回収なのかな。
息を潜め自分の部屋のドアから一番遠い所に縮こまる。
やがて、パキンという音とともに誰かが家に入ってくるのが分かる。
ガタガタと一階で音がする。
泥棒?我が家にはお金になるようなものはありません!
いたって質素に暮らしております。
しばらく一階で物音が続いたと思ったら、ドタドタと二階に上がってくる足音。
それとともに見知らぬ男たちの声が聞こえる。
二階には私が貸して貰ってる部屋の他に、ユウトさんの部屋、物置になっている部屋の合計三つの部屋がある。
階段のすぐそばの部屋がユウトさんの部屋、その隣が私の部屋、一番奥が物置になっている。
だから、階段で会話をしていれば私の部屋にだって声は聞こえてくる。
「どれもこれもいたって普通じゃねぇか。何が『他にないものがあるはずだ~』だよ」
「ったく、わざわざ魔物まで用意して人払いしたって言うのに何もありませんでした~って言ってアイツは信じるかねぇ?」
「いや、無理だろ」
どうやら誰かに雇われたと思われる人達のよう。
何かを探しているみたいだけど、うちに他にないものなんて何かあるかな?
……ユウトさんの聖剣?
でも、もしかしたら聖剣は魔物狩りに行ってるかもしれないから無いかもよ?
っていうか泥棒は犯罪です!
この世界の法律知らないけどね!
ユウトさんの部屋に入ろうとドアをガタガタさせている音がする。
「くっそ開かねぇ。ったくなんなんだよこの家は。玄関にも魔法で鍵掛けやがって」
「ここに住んでるやつって魔法使いなのかな?」
「さぁな。ったく魔法解除のアイテムは高ぇのに一個玄関で使って、この部屋にも使わなきゃなんねぇのかよ。残り2個しかないから、一旦他の部屋様子見しようぜ」
「報酬との割に合わないな」
誰だよ!こんな奴ら派遣しているやつ!!
なんでこんな心臓に悪い思いをしなきゃいけないのか。
そうこうしている間に隣の部屋、つまり私の部屋の前に男達が来たのがわかる。
ガタガタとドアを開けようとするが開かないようだ。
ユウトさんが掛けてくれた魔法の効果なんだと思う。
開かないのが分かると、奥の物置部屋に向かう足音。
当然、物置部屋のドアもガタガタしているが、ドアが開かないようだ。
「ったく何かしら持って帰らなきゃならねぇのに、一階には普通のものしかねぇし、二階はどの部屋も魔法でロックがかかってるし、どの部屋に目当てのものがあるかわかんねぇ」
「どの部屋にアイテム使う?」
「っていうかあの偉そうな依頼者の為に高価なアイテム使うのもな……一個だけ使って適当に部屋物色して何か持って帰ろうぜ」
「何処の部屋にする?」
「うーん、真ん中でいいんじゃね?」
ひぃぃぃ!!私の部屋だ!
魔法解除のアイテム使われたら開けられちゃう!!
ど、どっかに隠れなきゃ。
もういっそ腹を決めて戦う?
でも武器が無いよ。あっても使えないだろうけど。
出来ることが料理召喚しかない、何か手はないかと画像フォルダを探す。
何か・・・辛い物?臭い物?
慌てふためいても、奥の部屋からこちらに向かってくる足音が迫ってくる。
今から動いて物音を立てて相手を刺激するようなことになっても困るし、どうにもできないままでいると「パキン」と音が鳴り、これが魔法を解かれた音なんだと理解せざるを得なかった。
バッチィィーーーーンッ!!
「あぎゃあああああああああ!」
大きな音と男の悲鳴が鳴り響く。
な、な、何事!!?
「おいっ!しっかりしろ!!」
もう一人の男が悲鳴を上げた男に声をかけている。
「あがぁっ……いでぇ……んだよ、二重にかけられてやがる」
あ、あ、ありがとう!ユウトさん!
おかげで今のところ無事です!
魔法の重ねがけのおかげで助かりました。
「何が、簡単な仕事だよミステイストのやつ。家主を追い払えば余裕だとか言いやがって」
な!?ミステイストって言った?
あのどっかの街で料理評論家やってる?
ほうほう、どうしてくれよう。
このままこいつらが逃げたら、誰がやったかわからないから証拠がなくて、ミステイストさんを問い詰められない。
かといって、一人手負いだと言ってももう一人元気なやつがいる。
それと私が戦って取り押さえられるとは到底思えない。
くぅぅ。このまま逃げられちゃう。
こんな怖い思いをさせられてこのままなんて。
「おい、もう撤退しよう。立てるか?」
「わりぃ……無理だ。うまく動けねぇ」
「背負うぞ、どこか痛くても我慢しろよ」
呻き声を出しながらどうやら男たちが撤退して行くようだ。
このまま何も出来ないままなの……?
そんなの嫌!
私は料理召喚であるものを呼び出した。
わあぁぁぁぁい!ブックマークが増えたああぁぁ!!(*´▽`*)
ありがとうございます、ありがとうございます!!
<(_ _)>
沢山の作品の中から、見つけてくださって本当に本当にありがとうございます。




