12.褒めすぎですよみなさん
さっきの騒動のあと一回転目に入ってきたお客さんたちの話題がミステイストさんだった。
「あいつの顔みたかよw」
「実物見たのは初めてだけど、王宮で飯作ってるわけでもねぇのに偉そうなやつだったな」
「俺はあいつの居る街にいたことあるけどたいしたことないぞ、あいつの店の料理」
「シュウェーラの街行ってあいつの店で食って大したことねぇなっていってやりてぇ」
みんな楽しそうに話してるけど、わざわざあの人の店行って喧嘩売るようなことするのはやめてほしい。
「皆さん、ミステイストさんと不必要に関わらないでくださいね」
一応釘を刺しておかないとね。いらない火の粉が飛んできたら困る。
みんな返事だけはいいんだけど、本当に理解しているかどうか。
「それにしてもタミエちゃん、なかなかだったねぇ!普段の感じと全く違ったよ。目が鋭かったもんね!」
「そうそう!普段と全然違ってたよ」
「しっかりと言い返してるのみてスカッとしたね!!」
自分ではそんなつもりないけど、みんながみんな同じ意見だからそうなのかな?
うーん、冷静に相手から言われたことに返してただけなんだけど。
そんな雑談をしていると食べ終わる人達が出てきたので、お帰りいただいて二回転目のお客様を呼び込む。
その中にゴザレスさんがいた。
ゴザレスさんはハンバーガーがお気に入りでここのところずっとそれしか頼んでいない。
「今日はトゥイさんがお仕事してるんですか?」
「あ~どうだろうな。今日はオフってことにしてるからあいつも並んでるんじゃねぇか」
「じゃあ次の回にいるかもしれませんね」
コンビを組んでるとは言っても二人ともあっさりした関係みたい。
トゥイさんもソロで来たりするしね。
「そういえばさっきのやり取り面白かったぞ、なかなかやるな」
さっきのやり取りというのはミステイストさんとのやつかな。
そっか、列に並んでたら見てるか。
「普通に対応したつもりですけど。面白かったですか?」
「あぁ。この村に来る前にシュウェーラで活動してた時期があってな。あいつは街中の料理店に首を突っ込んでたな。小さい店はぺこぺこしてあいつを迎え入れていたが、あいつと同等ぐらいの店だと店前で言い争いしたりしてたなぁ」
予想通り地元でも偉そうにしてるんだなぁ。
「この店も大きくはないだろ?だからぺこぺこするのかと思っていたがあそこまではっきり言い返せるとはな。この店の料理の味だけじゃなくて、対応もより気に入った」
そう言ってサクッと食べ終わったゴザレスさんは出て行った。
来てくれるみんなが褒めてくれるのがなんだかこそばゆくてむずむずした。
三回転目のお客様の中にはマーシェルさんとトゥイさんがいた。
それはもう楽しそうに話しかけてくるマーシェルさん。
「いやー本当に良かったよ!ミステイストの顔みた~?傑作傑作!タミエちゃん最高すぎるよぉぉ」
「きちんと並んで下さっている方を優先しないとですからね」
「わかってるねぇ!大事にされてるなぁおいらたち幸せ者だね!」
「いえ、こちらも皆さんに守っていただいてるようなものですよ。私も幸せ者です」
並んでいたお客様のご案内が終わり、後は食べ終わったら適宜帰って行く感じでまったりした時間を過ごしていた。
トゥイさんは何度も食べに来てるから味にそろそろ慣れてきてるはずなのに、顔のニヤケが酷くなっている。
そろそろお店を閉めようとした時にまさかの人物がやってきた。
ミステイストさんだ。
まぁ今なら並ばずに入れますけどそんなに列に並ぶの嫌だったの?
魔力もまだ残ってるしいいか。
店内にはマーシェルさんとトゥイさんしか残っていないので、空いている席に案内して注文をきいた。
「この店のお勧めをだせ」
変わらず上から目線での発言だけど、まぁいいか。
ハンバーガーを勧めてみた。
あとこの店は事前会計という説明をしてお金をしっかりいただく。
食い逃げは許さん。
っていうかお金ないと召喚出来ないしね。
渋々払って早くしろとせっついてくる。
言われなくても作るよ。
キッチンでハンバーガーを召喚して、お皿にのせる。
さて、どんな反応するのかなぁ。
まじまじとハンバーガーを観察し、匂いを嗅いでいる。
色々言われたけど、毒とか入れてませんから。
ようやく一口食べると、やはりというべきかビクッとして固まり、そこからがつがつと食べていく。
その様子をマーシェルさんが面白そうに眺めていた。
あっさりと食べ終わるとこちらを振り返ってきた。
「他の料理もだせ。金を払う」
「すみません、食材がないので他の料理はもう出せません。あと、この店ではお一人様一品と決まっております。列に並んで下さっている皆様は理解してくださっています。またお越し下さい。次回は3日後なので」
「他の料理が無理ならハンバーガーをもう1個、いや3個ぐらいだせ」
「ですからお一人様一品なので……」
とリピートする状況にどう対応しようか考えていたら、ゾッとするような気配がリビングを支配し始めた。
原因はどこかと目線を動かすと、にやけ顔だったトゥイさんが真顔になっていて、後ろにダイヤモンドダストの幻覚が見える。
「ねぇ?バカなの?一人一品って言われてるのがわからないの?タミエさんに迷惑かけるつもりなの?」
えっ怖!トゥイさんめっちゃ怖い!
私が言われてるわけじゃないのに今すぐ逃げ出したい。
「ぐっ!わ、わ……」
あぁ、わかるわかるこの威圧喋れないよね。
すると玄関周りを掃除してたユウトさんが異変を察知して駆けつけてきてくれたけど、事情をトゥイさんからきいたら2人してなんか殺気だして、さっきより状況悪化したんですけど。
いやー本当に皆様に守ってもらっております。
しかし冒険者と勇者の威圧受けたら一般人失神してもおかしくないんじゃない?
私はもう意識を手放したいよ?
「ねぇ?何とか言ったらどうなの?……あぁ、喋れない?ふふ、ほらどうぞ?」
そいうと、トゥイさんが威圧を弱めたのが感じられた。
えぇ・・・わかってやってたでしょぉ~。心臓に悪いからやめてよぉ~。
「す、すまなかった。今日は帰る」
そういうとものすごい勢いで帰っていった。
トゥイさんって怒るとあんな感じになるんだ。
怒らせないようにしよう。
マーシェルさんは慣れっこなのかトゥイさんとハイタッチまでしてる。
あ、ユウトさんもまざってる。
えぇ・・・この店はかなり強いボディーガードが居るようです。(独立的なやつね)
みなさまお時間作って見に来てくださりありがとうございます。
早く他の料理召喚したいですね。




