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19.再戦

~翌日~


「おや、懲りずにまた来たのか。森田」


 生徒達の中心にヴァレッドはいた。


「何度懇願しても変わらないぞ。お前の望みなど何一つ叶わない。お前一人が何かを言ったところで大勢の意見が変わることは無いんだ。そうだろう、みんな」

「ええそうだわ」

「そうですね」


 口々に周りが賛同する。相変わらず腹立たしい男だ。


「そんな訳で、お前はあれか、やっぱりこっちの仲間になりたいって話かな?」


 出来ることなら今すぐ張り倒してやりたい。でも、今の自分にはそんな腕力もやる気も持ち合わせてはいなかった。でも――


「仕方ないな、それなら……」

「ふっ」

「?」

「そう、そうですわよ!」 


 もう覚悟は決まっている。


「私は貴方のことが好きなの!」


 もう後戻りなど出来ない。

 教室内がざわざわとざわめき始める。呆気に取られた表情のヴァレッドを目の前に、僕は小さく呼吸を整えた。


「どう、分かっていただけて?」


 しんと教室が静まり返った。そして。

 

「ははは、あははははは! なるほどなるほどなるほど」


 ヴァレッドが一人、全てを理解したように心底楽しそうな笑い声をあげた。


「つまりお前は俺の魅力に負けたと」

「……」

「今までずっと不思議だった。いつもいつも、他のみんなは俺に従順なのに、君だけが俺の意見に必ずと言っていいほど賛同しないから。それがとうとう。そうかそうか」

「……」

「いいだろう。お前もこちら側に来るといい」

「ありがとう」


 僕は静かにヴァレッドの手をとった。


「……さて、私は貴方が好き。そして貴方はそれを受け入れる。という訳で」


 一瞬だけ触れたその手を僕は大きくはじいた。


「クラスメートの皆さん、いい? 彼は私のもの。以降は、何人たりとも関係を邪魔することは許しませんわ。今すぐその関係を断ちなさい!」


 ざわっ


 再び騒がしくなる教室。けれど今度は、先ほどよりも個人個人の意思に沿ったような明確な意志の感じさせるものだった。

 その証拠に、それぞれの頭上から『魅了』の文字が消えていく。


「森田っ……お前、今何を」

「何って? なんてことありませんわ」


 何も知らないなりに何か感じたらしい。

 気になるなら教えてやろう。


「やはり好きな相手ですもの。『独占』したくなるものでしょう?」


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