とてもとても、綺麗。
安物のガラス玉が、日の光を浴びて、きらりと光るよりも、
森の奥深くの湖の湖面に映る、あの月光よりも、
彼の手は、綺麗でした。
とても、綺麗でした。
彼の大きな手は、
日に日に、
紅く染まっていって、
それから、何とも形容のしがたい臭いがこびりついていって、
他にも、
細かな裂傷とか、
手の甲に膿混じりの瘡蓋とか、
変化していったけど、
それでも、とても、綺麗な手でした。
私にとっては、とてもとても綺麗な手でした。
周囲の人々は、そんな手を持つ彼のことを
まるで、バケモノか何かのように見るけれど
それは、仕方がないのです。
だって、彼が"私のために"と背負ったものは、
私にしか理解できない"綺麗"なのだから。