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放課後HEROES-children of the twilight-  作者: いでっち51号
第2章「結成記念日をもう1度」
9/15

第2幕(挿絵あり)

 ある日、玲はテレビのニュースで近頃の中高生がネットいじめという新たな問題を抱えていることを知った。気が進まなかったが、ニュースを見た直後に玲はPCを開いてGoogleで光明塾また吉島中学校の裏サイトがないか検索をかけた。




 幸いな事に光明塾、吉島中学校にも裏サイトという裏サイトはなかった。しかしとある学校の裏サイトを覗いた玲は衝撃を覚えた。10代の若者達がとてつもなく悪意に満ち溢れている書き込みを延々とその掲示板上に書き続けているのである。一時は安心した玲だったが再び妙な恐怖感に襲われ始めた。



 ないと信じたかった。そんな筈がないと思いたかった。そう思いながらも彼女は「高木玲」とGoogleで検索をかけた。




 なんとYoutubeに3件の動画がヒットしてしまった。



 口を両手で塞いだ彼女の顔は青ざめていた。



 信じたくもない現実がディスプレイ上に映し出されている。動画のサムネイルには真っ黒な背景にオレンジ色の妙な顔したキャラクターが描かれている。いかにも裏サイトで使用していそうなデザインのイラストだ。



 もしも自分の悪口や冷やかされている内容の動画だったら……今の仕事は辞めよう。そう決めて彼女はおそるおそる一番上の動画ファイルを開いた。



『こんばんは日本中の皆様。夕闇文芸団のダテッチ7号です』

『うっす! サトリンです!』

『あのさ、そのペンネームやめない? 正直ダサいと思うよ』

『うるせぇな! こんなんノリだろ! ノリ!』

『え~ハイハイ、それでは番外編と題するこの動画ですが。ある程度したら消させていただきます』

『すぐ消すの!?』

『著作権の違反というか、プライバシーの侵害にあたるかもしれないので』

『?』

『ところでサトリンさん、サトリンさんは運命というものを信じますか?』

『何だよ? 急に?』

『ボクはあると思うのですね。第1回でもお話ししましたが、ボクたち2人は中学校の時に文芸部という部活を立ち上げたのですね!』

『その話はもうしただろ?』

『だから、この動画で話したいことはこれからなの!』

『?』

『無事に結成できた吉島中学文芸部でしたが、メンバーはボクこと伊達賢一、サトリンさんこと江川悟と女子の先輩の3人でやっていました。この動画で名前を出すこと自体いけないのかもしれません。ですが敢えて名前を呼ばせていただきます。高木玲さん。そう言う名前の生徒会もされていた先輩です』

「!?」



 玲は自分の名前を呼ばれた時に唖然とした。それと同時に色んな思い出が走馬灯のように蘇った。今まで色んなことをしてきた玲だった。高校時代も生徒会をしながらテニスの部活をしていた。学生時代も教員を目指す勉強の傍らで留学生との交流サークルなどに精を出したりしていた。いくつも恋愛もしてきた。でもそれだけではなかった。彼女は趣味で歌を歌ったり、朗読をしたり、時にはテニスをすることもあった。でもそれだけではないのだ。



 文芸だ。ずっと中学生の時から続けていたことだ。



 図書部と文芸部兼任顧問の石原へ原稿用紙に書いた物語をよく持っていったものだ。なんと懐かしいのだろう。そう思った刹那だ。急に動画の場面が変わった。



 2人の成人男性が動画画面に映し出されていた。ボサボサの髪に片目を隠したヘアスタイルで青いワイシャツに黒のネクタイをしている男。その横にいるのは金髪で顎鬚を生やしたヤンキーのような男。どう見ても気が合わなさそうな2人。でも彼女の記憶には確かにあった。そうだ。彼らもまた原稿用紙に小説を書いては提出しに行っていた。名前はなんだっけ? 思い出せない。でもその懐かしさが異様なまでに込み上げて彼女は涙を流していた。



 涙を手で拭き取る。画面を見ると金髪の男が何かのアドレスを記入した画用紙を持ってカメラを見ている。現代版ゲゲゲの鬼太郎のような青年がこう話していた。その言葉はいつの日か自分に語り掛けてきた彼の言葉のようだった。



『ボクたちは先輩の力が必要です。信じています。一緒に文芸部をしましょう!』



挿絵(By みてみん)



「ばかっ!」



 彼女は止まない涙を零しながらも微笑んでディスプレイに一言吐いた。そして近くに置いてある携帯を手にした――

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