オンライン 【1】
___カチッ
椅子に座り、自然な流れでいつもやっているオンラインゲームを起動させる。
いつもの軽快でチープな電子音が響き、画面が明るくなった。
インターネットに接続して知らない人とチャットでお喋りできるソレは、非リア歴二十三年の俺にとって、唯一の助けだ。
夏、八月の上旬。
どうせ今頃カップル達は、海だプールだではしゃいでるんですよーだ。
と、近くにあった縫いぐるみを蹴飛ばす。 ごめんよ。
……親に縛られない一人暮らしなだけ、まだマシか。
「ふんふ~ん……」
画面の中のもう一人の自分を動かしながら、オンラインチャットのできる街へ行く。
一つの街につき十人ほどが入れるようになっていて、今回行った街は、どうやら自分の他に三人しかいないようだった。
女子が二人と、男子が一人。
女子の一人は大人しめのワンピースを着ていて、もう一人の女子は、黄緑色を主とした、元気いっぱいの服を着ている。
「魔法少女みたいだな……。」
心の中に溜めておこうと思っていたのだが、外に出た。
お腹も出ていて、フリフリのスカートは凄く短い。
あ、太ってるとかじゃなくて、いわゆる、腹チラってやつ。
大人しめの服の女子と他の男子は仲良く喋っているようだ。
くっ……ここにも一組のリア充がっ……!
「くぅうっ‼ 邪魔してやろうか。」
と、画面の中の無表情なアバターを動かした。
すると。
『こんにちは……!』
画面の端に吹き出しが現れる。
あの魔法少女みたいな奴だ。
ゲッ……オタクっぽいし、関わると面倒くさそうだな。
それにチャットのコメントと同時に出て来る名前には『まどうしみならい』と書かれている。
……絶対オタクだよなぁ、なぁ?
「うむ。」
他の二人は変わらず仲良くやっている。
でも、せっかく女の子から話しかけてくれたんだ。しょうがないから、少しは乗ってあげても良いだろう。
アニメは少しくらいなら知ってる。
オタク、どんと来いだ……!
『あぁ、こんにちは。』
自分から出た吹き出しに、キーボードで打った文字が表示された。
あ、そうだ。
アニメの話題を振られる前に、こっちから話題を振れば良いんだ。
今更ながらに思い付き、キーボードでカチャカチャカチャターンと打った。