魔法使いのヒミツ
俺は今、好きな女の子と2人っきりで下校している。それなのに……。
「魔法使いってのはね。その名の通り魔法が使えるの。それでね……。」
なんでこんな話をしなきゃいけないんだ! 俺の好きになった彼女はどこに行ったんだよ……。
「ちょっと聞いてる? 今あなたの人生に関わる大事な話をしてるのよ?」
「え? 人生? お前は一体俺になにをさせる気なんだ?」
「やっぱりちゃんと聞いてないじゃない! もう。もう一度しか話さないからよく聞いてね。」
こいつの想像力はどうなってるんだ? 人生に関わるって1日で俺の設定まで作ったのか?
「私たち魔法使いはね、その名の通り魔法が使えるの。 ただし、 魔法使いでいるために1つ破ってはいけない禁忌があるの。」
「禁忌…?」
「そう。 これを破ると私たちは魔法使いではなくなり、 大変なことになるわ。」
「大変なことって?」
「そ、 それはとても恐ろしいことよ。 それはまた今度話すわ。」
……まだ設定してないんだろうな…。
「……。 話を戻しましょう。 私たち魔法使いは強力なチカラを持つ故に枷がつけられた。 それは……。」
「誰かを恋愛対象として好きになってはいけないこと。」
「誰かを恋愛対象として好きになってしまうと魔法使いの体内にあるリアジュウという物質が爆発してしまうの。人体に影響はないけど精神的に大きな影響を及ぼしてその結果……。 恐ろしいことに……。」
「……。 姫路、 お前もしかして恋愛で何かイタい経験でもしたのか?」
「……! ま、まさか! そんなわけないでしょ! バカなこと言わないでよ!」
あー、たぶんこいつがなんでこんなイタい子になっちゃったかわかったぞ。 どんどん黒歴史刻んでいってるけど…。
「と、 とにかく! 魔法使いは恋愛できないの!
わかった⁉︎」
「お、おう。」
「よろしい。 それで貴方には手伝って欲しいことってのはね…。」
「あなたに私の彼氏のフリをして欲しいの。」
「……ん? はぁーーー⁉︎」
ちょっと待て。 これはいくらなんでもおかしい。 彼女は自分の設定のために好きでもないやつと付き合うのか? いや、いくらフリとはいえおかしいだろ。
も、 も、 もしかして俺が好きなのか? 恥ずかしいから遠回しに言ってるのか⁇ わっかんねぇ〜!
い、一旦落ち着こう。
「もしかして俺のこと好きなのか?」
……。 なに言ってんだ俺ーーー⁉︎ 気が動転して思わず口に出ちゃったじゃねーか! どうすればいいんだ……。
「はぁ? 何を言っているの? そんなわけないでしょ?」
マジトーンで言われた。 うわー、 すげー傷つく。
「……じゃあお前はなんで好きでもないやつと付き合おうとするの?」
「フリって言ったでしょ。 フリって。 言ったでしょ?魔法使いは誰かを好きになったら大変なことになるって。」
それって、 俺が彼氏のフリをしてても全く恋愛対象として見ることはないってことですか。 そうですか。
「…それって男と話さなきゃいいんじゃないか?」
「甘いわ。 高校にはイヴェントという実際たいしたことしてないのにリア充してると感じさせる恐ろしいものが存在するのよ。 そのときを狙って恐ろしい魔物たちが私たち魔法使いを狙ってくるわ。 それを私1人で乗り越えられる自信はないわ。」
こいつ高校生の青春馬鹿にしてんだろ。 青春最高じゃねーか。
「あなたは私は好き。 私はあなたと恋人となる必要がある。 これって利害が一致してない? 素晴らしいと思わない⁇」
「いや、 おかしいだろ。 俺は好きでもないのに付き合ってもらっても全然嬉しくねーよ。 俺にメリットはねぇよ。」
「……! そうね。ごめんなさい。 私、人の思いを馬鹿にするようなこと……。」
「い、いや悪気がなかったならいいんだ。 話はもう終わりなんだろ? じゃあこの話はなかったことでいいな?」
「待って! それでも私はあなたが必要なの! 私はどうしても神様になりたいの!」
おっと、 もう1つどでかい設定があるの忘れてた。
これ、俺が手伝うっていうまで話が終わんないんじゃないか?