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村人ですが何か? 作者:白石 新
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 幕間 ~転生者達その2~



 人界を抜け、魔族の統べる魔界を抜け、魔物の統べる荒野を抜け、更に理性無き荒神達の統べる土地を抜け――ここは最果ての大地と呼ばれる大地。

 超古代文明の廃都。
 朽ち果てた超高層ビル群が植物に侵食され、全てが緑と灰色と化した空間――かつての陸上競技場。
 巨大な魔方陣が描かれた場所に30名程度の人間が立っていた。

「おめでとうございます。ミルフォード=チェルノ閣下。いや、この場では……斉藤隆文さんとお呼びしたほうがよろしいでしょうか」

「どちらでも構わないよモーゼズ君。いや、今の私は……世界連合の副議長。老いたる老兵であるミルフォードのほうが適切かな」

 リュートの幼馴染……一度目の周回でリュートを罠に嵌め殺したモーゼズの視線の先では50代の壮年の男性が柔和に笑っていた。

「しかし、本当に日本へとお帰りになられるので?」

「それは我々転生者の積年の悲願だろうに」

「確かに誰しもにも望郷の念はあるでしょう。けれど、それはこの世界での地位と名誉を投げ捨ててまで……ですか?」

「考え方の違いだろうね。この場に集まった転生者35名の内、20名は私と共に帰還する。そして残りは君と同じくこの地に残る」

「我々はこの世界では絶対者なのですよ? Sランク級冒険者であろうが、勇者であろうが――我々にとってはものの数ではない。その気になれば数ヶ月で我々は人界を席巻できる」

「異世界最強が何となるのだろうか。現代の地球に比べれば飯も酒も不味い。娯楽も文明の程度もタカが知れている。この世界を手中に治めたところで……何となるのだろうか? やはり私にとっては……生まれ故郷が大事だよ」

「なるほど。確かに考え方の違いですね。ところで……本当に後のことは残った者の好きにしてもよろしいので?」

 少し考えてミルフォードは残念そうにため息をついた。

「現地の調和には我々はあまり顔を突っ込まないほうがいい。過ぎたる力はこの朽ちたる古都と同じ運命を辿ることになるだけだ」

「かつての古代文明……進みすぎた科学は魔法と同一化されるに至り、遺伝工学で人類自らを強化し、家畜は現在の魔物と祖先となり……それどころか人類は戦争の道具として神々を自ら作り出すに至った」

「そう。常温での核融合を実用化し、それでもなおエネルギーは枯渇し……星の精気を吸い出し始めたところから全てが壊れたのだよ」

「大厄災が世界中で勃発し、人工の神々が星の意思の干渉によって自我を持ち……人類を世界の敵と認識した。結果――古代文明は滅んだ」

「この星にとって人類は敵と認識された訳だ。まあ、星の防衛機能……いや、自浄作用か。ともかく、物事には身の丈と言うものがあるのだよ」

 そこでモーゼズは掌を叩いて笑い始めた。

「地球に帰還する為に、古代の禁忌の技術を復活させ……大地の精気を湯水のごとくに使おうとしている貴方にはその言葉は似合わないと思いますが?」

「それもそうだな。私にはその資格は無い」

「ようやく戻りつつあるエネルギーバランスの均衡を崩し、後の事は知ったことではないと?」

「あまり私を苛めてくれるな。モーゼズ君。確かに我々が帰還した後、大地の気は急速に失われる。大地はまた、人類を明確に敵とみなすかもしれん。いや……失われた大地の精気を補充するために直接回収を行う可能性すらあるだろうね。大厄災と言う手段によって」

 空を見上げて、初老の男はため息をついた。

「ねえ、モーゼズ君?」

「何でしょうか?」

「色々と裏で画策しているようだが――あまり現地人を舐めないほうが良い」

 はてな、とモーゼズは首をかしげた。

「現地人を……ですか?」

「ああ。そして――彼をね」

「所詮……彼は2流でしょう? 彼は我々とは違い、転生時点で女神からの裏ギフトを受け取っていない。最適スキルを受け取っていない以上……転生者としては2流も良い所です」

「ああ、初期状態の彼では確かにそうだろうね」

「そうです。彼は確かに自らの限界を超えて鍛え上げたようですが、この世界の常識の範囲内で……いや、この世界のルールに則っての強化しか自らに施せてはいない」

「しかし、彼は単独で彼女を倒した。彼女もまた、我々と同じく転生時に気付いた者の内の一人だよ。受け取れることができるスキルが掲載されている冊子の裏表紙に描かれていた……自分だけが使用可能なたった一つのユニークスキル。究極とも言えるスキルを受け取ったはずの彼女が……彼に敗れているのだよ」

「……彼女の能力は特殊枠です。殴り合いでは流石に彼に分があります。つまりはマグレか何かでしょう」

「この現地世界での究極の力――古代文明を滅ぼした裁定者の力が絡んでいるように思えてならんのだよ。まあ、事実をどう受け止めるかはこれからもこの地で生きる君の判断だ。そして龍王をはじめとしてこの世界では我々の足元をすくいうるような化け物も存在している。ただの現地人でありながら――ね」

「ご老体の忠告として、心の片隅には受け止めて置きますよ」

「ともかく、我々はこの世界ではイレギュラーな存在だ。調和を乱した場合、どのようなしっぺ返しを受けるかは……誰にも予測できない。あまり好き勝手にしないようにした方が良いとは……忠告しておくよ。故に、もう一人の女神も彼を選んだのだろうから」

「もう一人の女神?」

「分からないのであれば気にしなくても良い。ともかく、調和は大事だよ」

「大地の精気を吸い尽くし、後のことは知ったことではないと地球へと帰還する輩には言われたくはないですがね」

「おっと、確かに……失言だったかもしれないね」

 そうして魔方陣が光り輝き始めた。

「それじゃあ……すまなかったねモーゼズ君。この世界で存分に強大な力を振るいたかった君たちを……今まで力で押さえつけ、古代技術の復活に尽力させてしまって。まあ、君たちは残り、我々は帰還する。共に……これからの人生に幸あらんことを願うよ」

 周囲が一面の光に包まれ、35名の内20名が消え去った。

 モーゼズは眼鏡の腹を押さえつけ、遠く人界の方角に視線を向ける。

「邪魔者は去った――この世界は私たちのもの。そしてコーデリアさんは――私のものです」

 心の底からの愉悦の笑みと共に、醜悪な笑みと共にモーゼズは言い放った。

「お遊びはここまでですよ。リュート=マクレーン……いや、飯島竜人」




 告知です。

 1月9日書籍4巻発売予定となります。
 ありがたいことに漫画版が絶好調で重版連打状態です。
 漫画版でいい感じにアレンジしてくれてて、後、書籍版準拠でネット版にはない自信作のエピソードも入ってますので、それも好調の要因だと思います。

 漫画2巻も書籍版4巻と同時発売です。原作も漫画も両方ともよろしくお願いします。

 1月9日発売予定の書籍版4巻ですが、完全書き下ろし予定でしたが1冊分の半分に少し足りないくらいの分量の書き下ろしになりました。
 この話でも会話だけでちょっとだけ出てきた書籍4巻で出てくる転生者ですが、ネット版のこの世界軸では書籍よりも大分早くてリュートの修行中に倒されている事になっています。
 ちなみに書籍4巻では原作よりも一足早くにリュートの最終形態が出てきます。
 もう一人の女神というのは完全書下ろしの書籍2巻ラストで出てくる、リュートが完全に人間を辞めるキッカケになったアレです。
 ネット版のこの世界軸では書籍版の陽炎の塔のエピソードそのものがありませんが、修行中に他の形でゴッドイーターのスキル(ベルゼブブを食ったアレ)は貰っています。

 書籍版書き下ろし部分は4巻含めて、意図的に割りとリュートがギリギリの戦いをしたりしています。
 ゴッドイーター編と言いますか、VS古代神連戦と言いますか、まあ、ベルゼブブ編あたりのエピソードもどこかでやりたいですね。
 
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