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001

同タイトルの改稿版です。細かい部分はほぼ別作品ですが、大筋、伏線、謎に変化はありません。


「やあ。ボクは神だ」


 少年が何か言っている。

 少年は何もない真っ暗な空間で、浮き出るように存在している玉座に座り肘を付いた姿勢でこちらを見ていた。ちょっとクセのある鮮やかな茶髪、白い肌、それなりに整った顔。普通より少し上の容姿で現代風のジャージを着ているその姿を見て『神様なんですねー』なんて納得する人がいたら教えて欲しい。


「失礼なこと言うね。ボクは確かに神だよ」

「いやいや、精々が村人Aだって」


 あ、声出た。明晰夢かな。

 それにこの少年、昨日やってたゲームに出てくる村人にそっくりなんだけど。


「……失礼っていうか酷いねきみ」

「人の夢に潜り込んで何言ってるのさ」

「いや、夢っていうかさ。きみ、死んだよ」

「え?」


 死んだ?

 私が?

 ……いやいやいやいや。

 ねえカミサマ、冗談で言っていいことと悪いことがあるよ?


「いや、本当のことだから。死因は交通事故。学校帰りのスクールバスが玉突き事故に巻き込まれたんだ」


 事故?

 だって、今日私は……

 …………ああ。

 確かに、バスに乗って。ユリカとしゃべっていて。前日にゲームで夜更かししちゃったから眠くて。知らないうちに寝ちゃって……今に至る。

 あれ?

 まさか私、本当に……?


「だから、さっきからそう言っているよ。アリサちゃん、きみは事故で死んだ」

「うあー……本当なんだ……」


 なんか脱力するな。

 まだやりたいこと、一杯あったのに。


「不思議な人だね」

「そうかな?」

「うん。普通はもっと取り乱すものだよ」


 それはそうだろう。私はすでに怪しくなっているけど、私たちが考える死というのは全ての終わりだ。死んだら何も残らない。何もできない。未来を横から奪われることと同義であり、抗えない理不尽。

 それが自分の身に降りかかったのだ。憤りを感じて当然だろう。


「でも私、人が脆いって知ってるし」


 師匠曰く。

 刀工たる者、刀の扱いに精通しているべし。そのために師匠と真剣での斬り合いもしたことがある。

 ただ撫でるように触れただけで肉は切られ骨は断たれる。それが急所であればそれで終わりだ。

 そんなことをしていれば嫌でも痛みや死に耐性は付くだろう。


「環境が普通じゃないね」

「でしょ」

「普通の女子高生は刀の切りあいなんてしないよね」

「だよねー。でもそれは師匠に言って」


 ついでに言うと刀だけじゃない。他の武術もある程度だけど修めているし、精神統一なんてのもやっている。すべては師匠の方針だ。


「それでも、文明の利器にはかなわなかったわけだね……」

「いやいや、銃弾くらいなら避けれるよ。でも寝込みを襲われたらどうしようもないって」

「銃弾くらいならって。人間辞めてるね」

「辞めてません」


 なんか呆れられた。でも、銃弾を避けるなんてそんなに難しいことじゃないと思う。銃身の延長線上にしか銃弾は飛ばないわけだし、あとは射手の視線と雰囲気、呼吸、気の流れで撃つタイミングを察知して一歩横に動けばそれで十分。銃弾の直径はわずか数ミリ。射線からそれだけ離れればそれで十分なのだから。

 ……あれ、カミサマの視線がだんだんと珍獣を見るようなものに変わってきてる気がするんだけど。


「亜音速で飛ぶ鉛玉を避けるって考える時点でおかしいんだよね……」

「切り落とすこともできるよ。刀が痛むからやらないけど」

「そもそも平和な地球で過ごしてなんでそんな思考になるのかな?」

「今更だよ」

「はあ。プラーナ……話が違うんだけど」


 プラーナ? だれそれ。


「ああ、地球を管理している神だよ。運命の女神ってやつ。ちなみにボクの世界も代理で管理してもらってたんだよ」

「へー。キリスト教は幻想だったわけね」

「……信じるものは報われるってやつだよ」


 それ、実在してないってことだよね。少なくとも神としては。


「さ、さて。今更だけど、きみに聞きたいことがある」

「何?」


 本当に今更。ようやく本題かー。


「ほら、そういうこと言わない。……えー、きみにはこのまま輪廻の輪に流れる、ボクの世界に転生するという二つの選択肢があります。どうする?」

「……解説よろしく」


 それだけで分かるわけないし。


「輪廻の輪に流れる……これは死んだ人間がたどる道だね。魂は輪廻の輪の中で浄化、分解、再構成されて新たな生を受けることになる。どこの世界でかは知らないけど」

「ふむふむ。で?」

「転生はそのまま。きみの体はすでに火葬されてるから、ボクが用意した体に入ってボクの世界に行ってもらう。記憶はもちろん引き継がれるよ」

「ほうほう。つまりこのまま死ぬか、生き返るかの二択って理解であってる?」

「あってるよ」


 ……ふむ。

 こういうストーリーでは主人公に反則能力チートが授けられるのが王道だよね! そのあたりはどうなっているのだろうか。


「チート能力? うーん……まずはボクが用意したからだがそもそも反則級だね。魔法適性はないけど、基本的な身体能力は全て一般人の十倍くらいあるよ。あとはきみの魂に内包されている刀鍛冶の才能がチート級だね。それに戦闘技術も発展していない世界だから刀術のレベルも高いし、鍛造剣が存在しないからきみの打つ刀は全て一級品になる。戦闘系のスキルを所得できないことを除けばすでにチートの塊なんだよね」

「おおぅ……」


 なんか……すごいね?

 特殊能力だけじゃなくて現代知識も十分チートだね。

 これは……転生を選ぶしかないよ。


「おっけー、転生ね。最後に質疑応答があれば何でも聞いて」

「じゃあ一つだけ。……みんなはどうなったの?」


 事故に巻き込まれた、私の友達。彼女たちは……特に親友のユリカは、無事なのだろうか。

 それを聞くと、カミサマは苦い笑みを浮かべて顔をそむけた。

 え? まさか……。


「全員、なんとか生きてるよ。即死だったのはアリサちゃん、きみだけ。重傷も多いけど、なんとか後遺症はなさそうかな……ユリカちゃん以外は」

「えっ?」

「ユリカちゃんがこのまま地球で治療された場合、おそらくは半身不随、片腕切断。日常生活も介助なしでは難しいと思う」

「そんな……」


 それじゃあ、即死だった私の方が良かったって思える。そして……そんな状態で地球で生き残るなら、私と一緒に転生してほしい……とも。

 男所帯の鍛冶場で、たった二人の女鍛冶師。それが私とユリカだった。だからユリカは私の親友で、絶対に離れたくない親友だ。まあ色々と欠点はあるけど。変態だったり変態だったり変態だったり。

 ゴホンゴホン。

 なんとか……ならないのかな。


「プラーナを説得できればいいんだけどね」

「カミサマ、どうにかならない?」

「うーん……」


 これは脈なしかなあ……。

 神頼みだけど、私にはどうしようもない。カミサマが説得してくれることを祈るだけだ。


「とりあえず話はしてみる。ちょっと待ってて」

「お願いします」


 頭を下げてお願いすると驚いたような顔をされた。酷いな、私だって頼み事をするときくらいはちゃんとするよ!

 カミサマは軽く微笑んでその場を去る。なんか体が光ってすーって薄れていった。やっぱり神様なんだなあ。

 一人の間、過去の思い出を……もう死んじゃったわけだから前世かな? を思い出していた。

 そしたらすぐにカミサマが帰ってきた。


「ただいまー」

「早くない!?」

「許可もらったよ」

「ありがとう! でも早くない!?」


 二回の突っ込みは軽く笑って流された。けど、許可が出たのはありがたい。

 素直に感謝しておく。


「でも条件を出されてね」

「……当たり前だよね。どんな条件?」

「人一人の運命を左右するわけだから、それだけの功績を残しなさい、だって。転生後の世界は剣と魔法のファンタジー世界なんだけどさ。実は魔王が復活しそうで」

「……嫌な予感!?」


 この流れは多分、いや絶対にそうだよねっ!?


「討伐しちゃおう♪」

「無理ぃぃいいいいいっ!!」

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