2-3【貴之】
雨が降っている…
朝から気分が上がらない…
雨の月曜日だなんて、会社にいくのがより嫌になる。
地元に戻ってきて、本当に田舎の大変さを感じる。
早く車を買うお金を溜めなければ。
朝の出勤はバスを使う。
バス停には先に2人待っていた。
傘をさしながらバスを待つ。
携帯電話の着信音が鳴った。
画面には『上田貴之』の表示。
この前、電話番号を交換をしたが
電話がかかってくるのは初めてだったので
少し緊張しながら電話に出る。
「はい…」
「おはよう…、今電話しても大丈夫?」
「えっ?うん、大丈夫…、
あっ、でもあと5分くらいでバスにのるから…」
「あっ、そうか…じゃあ、手短に話すけど…あのさ…」
どうも、言いにくそうな内容のようだ。
「うん、どうかした?」
「えっと、土曜日に会った後、美由紀の店に行ったんだ…
あっ、えーと美由紀って今スナックで働いててさ、
それで飲みに行ったんだよ」
「うん、純平に聞いたよ」
「でも…、美由紀居なくてさ…ママに聞いたら休みって
言ってたんだよ」
「そうなんだ」
「それで、美由紀に電話したんだけど…電話繋がらなくって
ママに美由紀が来たら連絡してくれって伝えて
俺の電話番号教えたんだ」
「そう…」
「そうしたらさ、昨日の夜スナックのママから電話があって…」
「…… 」
「美由紀… 死んだらしい」
「えっ?!…」
「…今日、葬式なんだって」
理解が出来なかった。
突然そんな事を言われても。
理解なんか出来るわけがない。
「それで、その…葬式どうするかなって
俺も突然の事で、あれなんだけど…
…もしもし?…もしもし…」
貴之の声は私には聞こえてこなかった。
頭の中が真っ白になり、何も考えられず、
私は俯くしかなかった。
「乗りますか?」
その声に顔を上げると、バスの運転手が私に問いかけてきていた。
一瞬にして現実に引き戻された。
「あっ、えっと…いえ…すみません…」
バスは扉を閉めると、私を残して発進した。
と同時に携帯電話の着信音が鳴る。
「はい… 」
「もしもし?大丈夫?ごめん…やっぱり電話でするような
話じゃなかったよね… 」
「ごめんなさい…急にだったから…その… 」
「バス…もう来た?」
「うん…でも…乗らなかった…会社に行くような気分じゃ…」
「そうか…、あ…じゃあ俺、そっち行くよ」
「… … 」
「迎えにいくから、一緒にお葬式行こうか…」
「… … うん」
今の状態では何も考えられなかった、とりあえず返事をするのが
精いっぱいだった。