1-2【じゅんぺい】
田舎では車は必需品だ。
どこかに出かける、いや、コンビニに行くにしても
車が必要だ。
つまり、移動するのに車が必要なのだ。
速く走る必要性もなく、大きくある必要性もない。
燃費が良いという事は、ガソリンの使用量も少なく
環境にもいい。
税金だって低い、コスパもいい。
だから、軽自動車に乗っているのだ。
という純平の話を1時間以上聞いている。
「そろそろ本題に入ってくれない?」
「え?」
「え?ってさっきから車の話ばかりしてるから」
「あ、あ~っとえ~っと、そういう意味じゃなかったんだけど」
「じゃあなんなのよ?」
「つまりは、えっと、その…ドライブに行かないか?って事で…」
「は?ドライブに誘うのに1時間以上車の話してたの?」
「まぁ…」
「……」
純平とは小学生からの幼馴染みで、こっちに帰ってきたのを
どこから聞いたのか、久しぶりに会おうと連絡が来た。
特に用事もなかったので会うことにしたのだが、車に乗り込んでから
1時間の間、実家の前に車は停まったままだ。
「とりあえずどこに行くかは決まってるの?」
「それが…その…どこか行きたいところある?」
「… … 」
昔から純平がこういう人だったという事を思い出した。
優柔不断をを超えた、超優柔不断なのだ。
「どこでもいいよ、とりあえずここからは移動しない?」
「そ、そうだね、…じゃあ、海でも見に行こうか」
「海?!今11月だよ?」
「え~と…」
「はぁ…、あっそうだ!この前みゆきと話した時にケーキの美味しい
カフェが出来たって言ったから、そこに行く?」
「えっ?みゆきちゃんと会ったの?」
「いや、電話で話しただけだけどさ…、話聞いてる?」
「あ、ああ…カフェね」
どうやら休日の使い方を間違えたようだ。
ようやく車は走り始めた。