第1話
7月24日
今日は夏休み前最後の登校日だ。
正直鬱陶しい学校生活としばらく離れることができるのかと思うと気が休まる。
高校に入っての2度目の夏休み。特に夏休みだからってやりたいということはないが。
きっと、家でだらだらと過ごしていつの間にか夏休みが終わってたなんて感じなんだろう。
去年がそうだった。
特に仲のいい友達とかいるわけでではなく、というか遊びにいくよう友達自体いない。結局、学校に行かなくていいというだけで、普段とそれほど変わらない生活なんだろう。
俺、中田武士の今までの人生はまさに平凡という言葉以外何物でもなかった。学校との往復、これといった趣味もなく、せいぜいテレビを観たりネットをしたりたまに読書をしたり最近流行のアニメを観たりする程度。きっとこれがドラマやアニメの世界だったら、俺は完全にモブキャラの中のモブキャラで、こんな人生を誰も羨む人間などいないだろう。
そしてこれからの人生もきっとこんな感じで、平々凡々に過ごしていつの間にか就職して、いつの間にか年を取って、いつの間にか死んでいくのだろう。
なんて思っていた。
そう、あのメールが送られてくるまでは。
7月25日
夏休み初日。といってもいつもと何の変わりもない一日だった。
と、突然俺の携帯が鳴った。
「メール・・・」
友達がいない俺の携帯にメールが来ることなんてほとんどなかった。
アドレス自体、クラスの何人かに教えてといわれて教えた程度で、実際メールが届くことなんてまずなかった。
なんかのいたずらメールだろうと思い、そのメールを開く。
中田武士殿
君はこの度「選ばれし7人」に選ばれた。よって暁の館に招くことになった。
ついては、明日から3週間ほかの6人と共に行動を共にしてもらう。
誠に勝手ながら君に拒否権はない。
詳細は館にて説明をする。
それでは幸運を祈る。
やはりいたずらメールのようだった。しかし、なんと趣味の悪い。
そのメールを無視し、携帯をテーブルに戻し、ソファーで観ていたアニメの続きを観ることにした。
結局、その日は一日だらだらと過ごしてしまい、気づいたら夜になっていた。まあいつものことだから気にはしてないが。
日付が回ろうかというくらいになり、急に眠くなり早く寝ることにした。明日は何しようか、今日見たアニメの続きでも見ようか。
なんて考えているうちに意識が遠くなり、眠りに入った。
7月26日
その日も自分の部屋の天井とおはようをして、いつもと同じ日常が始まるはずだった。
しかし、目が覚めたそこは自分の部屋ではなかった。古びた洋室、よくミステリーとかに出てきそうなそんな感じの部屋だった。
俺は何が何だかわからずベッドから立ち上がった。そしてふと昨日のメールを思い出す。
「まさか・・・昨日のメール・・・」
そう、俺がいたずらメールと思いスルーしていたあのメール。
半ば半信半疑だったが、俺自身の平凡な日常で起こった変わったことといったらそれ以外思い当たらない。
きっと夢かなんだろうかと自分のほうをつねってみるが普通に痛かった。
ということは、これは現実に起きていることなのだということなのか。
とにかく、じっとしていても埒が明かないので、そこの部屋から出ることにした。
部屋から出るとそこは長い廊下で、まさしくお城か昔の洋館といった感じだった。
恐る恐る、部屋から出て廊下を歩きだした。何も物音がせず不気味な感じだ。
と、突然右から何かが現れ、身体に強い衝撃を受けて倒れこんだ
「ひゃぁ!なに???なんなの!?!?」
すると女の子の叫び声が、静寂な廊下に響き渡った。
どうやら、声の主の女の子が思いっきりあけたドアが俺に直撃したみたいだ。
「いてててて」
「うわっ!ごめんなさい大丈夫ですか!」
俺は声の主と目が合った。
そう、これが平凡でなくなった俺の日常の始まりであり、大仲未穂との最初の出会いだった。