覚醒
投稿が遅れてしまい申し訳ございませんでした。
諸用にて忙しくなっておりまして・・・なるべく速いペースを維持できるように致します。
追記 1/28 神術と魔術の空間に対する干渉の説明を追加、物の創造ができないと言う一文を消しました。
「・・・ッ!」
飛び跳ねるように体を起こす。
「おお!起きたかの!」
「ここは・・・俺の家か?」
「うむ、お主の父親殿が案内してくれたのじゃ。」
「父さんが・・・ところであの後はどうなったんだ?」
「えっとのう、妾がお主の父親殿を探していたら突如現れてお主の場所を聞かれての、教えたらこの家に行っているように言われて待っておったのじゃ。」
「そうか・・・父さんと母さんは?」
「一階に居るはずじゃ。お主・・・えーと名前を教えてくれんかの?」
「そういえばまだ教えてなかったな、俺の名前はユートだ。」
「そうか、それでユート。お主が帰ってきた時には既にボロボロでのう、
お主の母上殿が治療したのじゃが人にしてはなかなかの魔術の腕じゃのう!」
「それで傷が治ってるのか・・」
「おっと、両親が待っておるぞ!早く行ってやらねば!」
「そ、そうだな。」
手を引かれて一階へと降りる。
「父上殿!母上殿!ユートが起きたぞよ!」
コイツはいつの間に父さんたちと仲良くなったんだろう、と椅子に座りながら考える。
「おお、ユート怪我は・・・大丈夫みたいだな」
「あらあら、二人とももう仲がいいみたいで羨ましいわ~」
母さんは相変わらずマイペースである。
「それではユート、お前が寝ている間にナノアちゃんと色々話したんだがな・・・種神らしい。」
「え、信じるんですかそれ。」
「あぁ、この子に神術に使う理力と言うものを見せてもらったんだがな、確かに魔力とは違っていたよ。」
「え、そんなの分かるんですか?」
「おう、後は勘だ。」
「えぇ・・・」
父さんは昔から勘で動く人だったけどここまでだとは・・・
「それで住む場所もないらしいから一緒に住むことになったわよ~」
「えぇ・・・」
俺が寝ているあいだに色々とあったらしい。
というか経験則的にここまで決まってしまうと反対意見は言うだけ無駄だ。
「そういう事じゃ!よろしくの、ユート!」
「ん、よろしく」
何故かやたらと嬉しそうなナノアと握手を交わす。
「さてと!お母さんはナノアちゃんの部屋を片付けて来ますね。」
「母上殿、妾も手伝ったほうが良いじゃろうか?」
「大丈夫よ、そうだわ!ユート、ナノアちゃんに村を案内してあげたら?」
「そうですね・・・行ってきます。」
ナノアを連れて家を出る。
「えっと、ここが村長の家だ、であっちが色々な雑貨を売ってる店。」
「ほ~、色々あるんだのう・・・」
その後も村を案内して回る。
「それでここが俺がいつもトレーニングをしている広場だ。さて、これで一通り紹介できたかな。」
「ユート、少しいいかの?」
帰ろうとしたところでナノアに呼び止められる。
「なんだ?」
「その・・・お主の父上殿に確認したら本当に魔力はないらしいの。」
「おう、そう言っただろう。」
「その・・・すまなんだの、疑うどころか否定までしてしまって。」
(・・・こんなことを気にしているなんて意外と律儀なんだな)
「なに、それくらい構わないさ・・・そういえば神術って魔力がなければ使えるのか?」
「む、そういえばどうなのじゃろうか。人なのに魔力がないというのは聞いたことがないから分からぬのう・・」
「普通はその理力ってのは持っているなら自覚するものなのか?」
「妾の場合はそうじゃったが・・・、そうじゃ!試しに少しばかり理力を当ててやろうかの?」
「体に害があったりはしないのか?」
「うむ、良いことはあっても害は恐らくないのじゃ。」
「じゃあ頼む。」
ナノアが手を掴んで目を瞑る。
「・・・ッ!?」
当てられた瞬間、体に雷に当たったような衝撃が流れる。
「ど、どうしたのじゃ!?」
目の前が点滅して、足が震え呼吸すらままならなくなる。
体中が異常に熱くなり、体の内側から焼けるような痛みに襲われる。
「あが・・・っ!?」
「ユ、ユート、お主、顔が!?」
「どうした・・・?」
そこで自分の声が普段より少しばかり高くなっていることに気づく。
「あ、あれ・・・?」
「こ、これを見てみるのじゃ。」
ナノアが地面に小さな水たまりを作ってくれたので覗き込む。
今なんて普通に話しながら水たまりを作ってしまった。ここまで来ると神術とやらも信じざるを得ないだろう。
「・・・はぁ!?」
覗き込んだ水面には、馴染みきった前世の幼い頃の俺の姿が映っていた。
「どうしてこんなことになっておるのじゃ・・・にしても黒髪黒目とは珍しいのう。」
「考えられるとしたら理力とかのせいだな・・・」
「じゃのう・・・とりあえず今日は帰ろうぞ。」
「・・・だな、疲れたよ。父さんと母さんにはどう説明すればいいやら・・・」
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「ハッハッハ、それでその姿になったのか!?さすがは俺の息子だな!」
「洋服のサイズは変えなくても大丈夫そうね~、良かったわ。あ、でも村の人たちに説明に行かなきゃいけないわね~。」
・・・どうやら心配するだけ無用だったようだ、前から思っていたが俺の両親は態度が少々大物過ぎやしないだろうか。
その日は俺の姿が変わったというのに驚くほどいつもどおりの時間が過ぎた。
-------------------次の日----------------------------------------------------------
朝早くにナノアを起こした俺は、昨日の広場へと来ていた。
因みにここは村からは少し距離がある上に入り組んでいるために人が来ることは無いといってもいい。
「すまないナノア、実は一つ悩みを聞いて欲しいんだが。」
「なんじゃ?」
「その・・・神術の使い方を教えてくれないか?」
「む、構わぬが理力がないと使えぬぞ?」
「大丈夫だ。とりあえず使い方を教えてくれ。」
「よし、では教えようぞ。」
ナノアがちょっと嬉しそうに腰に手を当てる。
「神術を使うのに必要なのはイメージの力と理力じゃ。神術を作り出したのは手は創造神自身じゃったらしい、そんなこともあって神術には魔術のように長ったらしい詠唱がないのじゃ。」
「へぇ・・・」
詠唱が無いというのは普通の魔法使いを相手にするのならとんでもないアドバンテージとなるだろう。
「じゃが神術とて万能というわけではないぞよ。世界を弄る事は、創造神にのみ許されたことじゃから世界そのものに手を出すことはできぬ。まぁ魔術は元は世界の理に反する術じゃから多少空間をいじるくらいなら出来るみたいじゃがの。」
「それを抜いても随分と凄い力だけどな・・・」
「まぁ使うときには自分の中にある理力を感じ取りながらイメージをして、何でも良いから発動単語を発することで術が発動するのじゃ。」
「へぇ・・・他に魔術に比べて劣っている点とかはないのか?」
「そうじゃの・・・理力は魔力に比べて極端に体に宿せる量が少ない、という事じゃろうか。じゃが理力は魔力に比べて少ない量でもとんでもない密度じゃからな、そこは劣っているというわけにはならんの・・・」
「どれくらい密度が高いんだ?」
「量にして理力1が魔力100くらいじゃの、因みに魔力100は普通の魔法使いレベルじゃ。」
「うげ・・・それってかなりえげつない量だな・・・」
「うむ、まぁこんなことを聞いてもどうしようもなかろう、さて帰って朝食作りの手伝いをしようかの~」
「ちょっと待った、見ててくれよ・・・」
「ん?」
家へ帰ろうと背を向けたナノアが振り向く。
「よしっ・・・!【ファイア】!」
振り向いたナノアの足元に三十センチ程の火の玉が現れる。
「ふぅ、成功したか・・」
生まれて初めての神術に高揚感と心地よい脱力感を感じる。
「な、お主・・・何故・・・!?」
神術が使えないはずの俺が神術を使ったことでナノアが呆然としている。
言葉を出そうにも驚きすぎて出せず口をパクパクしているような状態だ。
「昨日ナノアに理力を当てられてから、ずっと体に違和感があってな。それでもしかしたらと思って。」
「そ、それじゃあお主は・・・」
「あぁ、俺も【神術】が使えるみたいだよ。」