002 『来訪、突然の襲撃』
更新遅くなりまして、すいません!
これからは、一定のペースで頑張りたいと思います!
「おじゃましまーす」
白色のペンキが所々剥がれたいかにも古そうな扉を開けた俺は、外から見た感じとは全く別物の室内を見まわし、感嘆の声を上げた。
「これは……すごいな」
「そりゃどうも。適当にくつろいどけよ、茶でもいれるから」
壁に掛けられていたエプロンを腰に巻き、キッチンに向かっている姿を見ながら見送ると、もう一度室内に視線を戻した。
木目が自然な感じを醸し出しているフローリングには獣の皮で作ったのだろう、見るからにふかふかそうな絨毯が中央のテーブルから中心円状に広がっていた。
冷蔵庫、テレビ、といった科学的無かったが、俺が見たことのない物もいくつか目に入った。
たぶんこれが《魔法》というもので作られらたものなのだろう。
「はいよ、茶持ってきたぞ」
変わった形の容器をお盆に乗せ帰ってきたリルはそのまま俺が座っていた床にゴトンとその容器を置いた。中に入っていた、ぐつぐつと煮えたぎるように不気味な音を立てる藍色の液体は溢れんばかりに容器を満たしている。
「これ……なに?」
「知らないのか? シャム茶だよ」
「シャム茶……聞いたこと無いな、美味いのか?」
「まあ、それなりに。見た目はあれだけど味は大丈夫だ、飲んでみろって」
コップを持ち上げ、口を開けろ、と言わんばかりに迫ってくる。
え? 飲ませるの?
「いや、それくらい自分で飲むって」
「いーからいーから。こんな美少女が飲ましてあげるって言ってんだから素直に聞いとけよ」
「確かにお前は可愛いがそれは理由に……」
「リルだ!」
「は?」
いきなり声を荒げた少女に、俺は一瞬びくりと肩を強張らせた後、質問した。
「リル……ってお前の名前か?」
「そうだ。シェリル=サースティ、略してリル。簡単だろ?」
「分かった。俺は倉本 心だ。こっちも心でいいよ」
少女――リルは満足げに頷くと、藍色の液体をまた口に近づけてきた。
「って! もうそれはいいって!」
グイっと押し出した手が運悪くリルの手に当たり、バランスを崩したうえの容器が真っ逆さまに落ち、こぼれ出た液体がこれまた運悪く俺の下半身にびしゃりとかかった。
「あっつ!」
「あ、すまん」
少し申し訳なさそうに言うと、「ちょっとタオル持ってくる」とキッチンの方へ走って行った。
走っていく背中を見送ると、床に置いてあるコップを持ち上げ、ぐいっと飲み干す。
「……美味い」
なんだろう、これは。
ブルーベリーと苺が混じったような、こう、甘酸っぱい感じ。
こっちの世界でいう紅茶みたいなもんなのかな。一度飲みだすと止めることが出来ずに、そのまま一気に飲み干してしまう。
……後でもう一杯貰おう。
小さく決心した瞬間、こんこんと乾いた音が室内に響き渡る。
誰だろう? リルの友達か何かだろうか?
思考してすぐに、奥から足音を一切立てずに、緊張した顔でリルが戻ってきた。
その表情に疑問を抱きながらも、言葉を投げかける。
「リル。誰か来てるぞ」
「ああ知ってる。ココロ、お前一回隠れろ」
むぎゅー、と無理やり奥の方へ追いやられ、大勢を崩してから床に転がり落ちる。
「……あ痛」
軽く頭を打ってしまい、小さくうめき声を漏らす。
ったく、もうちょっと丁寧に扱ってほしい。内心で愚痴りながら、玄関の方をそっと覗く。世に言うチョッ○ー覗きというやつだ。
玄関先には、全身を黒い鎧で纏めた男が5、6人程、武器を構えながらリルと会話している。
向こうの男の表情は、かなり穏やか。それに比べ、リルは100%取り乱していた。
なにかあったのだろうか? 頭の中で思考を巡らせた瞬間。
ガッ!
男の中の一人が、リルの脇腹あたりを槍のような形状の物で貫いた。
どくどく、とあふれ出る血。
尚も平然とした様子の男たち。
そして、苦痛に歪む、リルの表情。
俺の中でプツンと、何かが切れた音がした。