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第四章 「それぞれのクリスマス②」

午後3時を回ったくらいだろうか、私たちは映画を見終え、お昼ご飯を食べた後、こうしてブラブラとウィンドウショッピングを楽しんでいた。

「ねえねえ奏、あれって会長じゃない?」

その途中で、ふいにさやちゃんがそう言ってモールの一角を指さした。

その指の方向を見ると、とある雑貨屋の前で征ちゃんがあごに手を当てて品物を眺めているのが見えた。

「あ、ほんとに会長がいる。奏、声かけて行こうよ!」

由希は言うが早いか、もう駆け出していた。

「ちょっと由希っ・・・もう相変わらずなんだから」

「ですね。でも会長は女生徒みんなの憧れの対象みたいな方ですから、由希ちゃんの気持ちもよくわかりますよ」

「・・・まあ、実際その通りなんだけどね」

ちょっとため息混じりにそう答えて、私はさやちゃんを連れて、征ちゃんのところへ向かう。

「お、奏とその愉快な仲間達じゃないか、久しぶりだな」

『こんにちわ、会長』

由希とさやちゃんは声を揃えて挨拶した。

「ところで、征ちゃんはこんなとこで何してるの?」

「何って、まあ日渡と会ったついでに散歩でもって思ってな。さっき翔たちにも会ったぞ」

「・・・え、征ちゃん、会いに行ったの?」

「そりゃそうだろ。お前たちから話を聞く限りじゃあ、面識はないが幼馴染らしいじゃないか」

・・・そう。征ちゃんには「私が子供の頃にちょっとだけ遊んだ男の子」という風にこの前話をした。

征ちゃんのことだから、単純に一度会ってみたかっただけ、なんだろうけど・・・

「・・・・・・」

「奏ちゃん?」

「・・・えっ」

ちょっと考え事をしてたせいか、さやちゃんの声に気づくのが遅れてしまった。

「ぼーっとして、どうかしたの?」

「う、ううん、何でもないよ。あはは・・・」

いけないいけない、今は考えないことにしよう。征ちゃんが彼に今日会いに行ったのは偶然なんだ、ぐうぜ・・・っ!

「・・・日渡くん」

やっぱり、一緒に来てたんだ・・・

壁に並んでいる商品をしばらく眺めていた彼がこっちを向いた。

ちょっと目があっただけなのに、私は自分でもよくわからないうちに、目をそらしてしまう。

「・・・征ちゃん、それじゃあ私たちもう行くね」

「え、ちょっと奏!」

「奏ちゃん?」

二人の戸惑うような声が聞こえてきたが、私はこの場から早く離れることしか頭になかった。



気がついたら、私は学園まで戻ってきていた。

「奏、突然どうしたのさ」

「・・・」

「彼、日渡くんだっけ?彼と何かあったの?」

「・・・そういうわけじゃない、よ」

そう、別に彼と会いたくないわけじゃない。喧嘩したわけでも、ましてや嫌っているわけでもないのだから。

あえて言葉にするなら・・・


『申し訳ない』


自分が彼のことを覚えていないことに対して、そう感じているんだと思う。

そして、彼がそのことで問い詰めてこないことにも・・・

「・・・ねえ、由希、さやちゃん。今からちょっと、付き合ってほしいところがあるんだけど・・・いいかな?」

唐突な私の言葉に、二人とも少しわからないような顔をしていたけど、すぐに頷いてくれた。

「ありがとうね、二人とも」

二人に軽くお礼をいってから、私は学園の門をくぐった。



私たちは門を抜け、裏庭にまわって、そこから森の入り口まで来た。

「ここ、立入禁止って書いてあるけど・・・いいの?」

「うん、ここは昔、よくみんなと遊んだ場所だからね」

私たちはさらに奥へと進んでいく。

やがて、一面白い雪に覆われた広い場所に出た。

そこは、私たちがよく遊んでいたフリージアの花が咲いていた場所だ。

「へえ、この森ってこんな開けた場所があったんだね~」

「うん、すごくきれいな場所だね~」

「ここは春になると、フリージアっていう白い花でいっぱいになってるんだよ」

私は二人に手招きをして、近くの切り株の雪を払って座る。

空を見上げると、まだ雪がチラチラと降り続いていた。

「それで、急にこんな場所まで来てまで話したいことって?」

由希、そしてさやちゃんも不思議そうに私にそう聞いてきた。

「・・・うん。ちょっと、ね」

私は一瞬躊躇ったけど、自分一人じゃ答えが出せないことは、何となくだけどわかっていた。

本当は自分だけで解決できたら良かったんだけど、私はそんなに強くはないから・・・

「話したいことはね、私の過去のこと、それから・・・『彼』のことなの」





「奏の様子が変?」

デートを終え、葉月と二人で日渡の家に立ち寄ったら、玄関先で征がそんなことを突然言い出した。

ちなみに日渡は部屋にいるらしい。

「変っつーか、なんか日渡と目があった瞬間、慌てて走って行っちまったから、なんかあったのかなーと」

「そう、奏が・・・」

「その様子だと、二人とも知ってるようだな」

「まあ、いろいろと俺たちもきちんと納得してるわけじゃないんだけどな。奏の話を信じるなら、心当たりがないわけじゃない」

「そうか。まあそんなことがあったから、まだパーティーのことは連絡してないんだ。さて、どうするかなあ」

そんな時、ふいに背後から足音が数人分聞こえてきた。

振り返ると、奏とその友達2人が近づいてきていた。

「あれ、お兄ちゃんにお姉ちゃん、それに征ちゃんまで・・・どうしたの?」

「え、奏?」

さっきまであんな話をしていたせいか、奏がまさかここにくるなんて思ってなかったから、俺たちは少なからず動揺を隠せなかった。

「ああ、今さっき二人にあってな。今年は日渡も入れてパーティーしようと思ってお前に連絡しようと思ってたとこなんだよ」

「え、パーティーって、でもお兄ちゃんたちはデートなんじゃ・・・」

「デートなら十分に楽しみましたよ。奏のおかげで、ね」

「そう言われると心中複雑なんだけど・・・うん、楽しんでくれてよかったよ」

奏は葉月に抱きつきながら満面の笑みで答えてくれた。

「あ、そうだ。パーティーなんだけどさ、準備とかまだでしょ?手伝いたいんだけど・・・ごめん。準備はお姉ちゃんたちに任せちゃってもいい?」

「珍しい。自分から率先してこういうことしたがる奴が、どうしたんだ?」

そう俺が問い返すと、奏は意を決したように口を開いた。

そしてその言葉は、俺や葉月、そして征ですら驚いた。


『ちょっと日渡くんと、二人で話をさせて欲しいの』

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