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サル魔王

作者: 村上しのぶ
掲載日:2026/11/08

 私の家は、山の近くにあるため、ニホンザルが庭にやってくるのだが、その中に一匹、異様な雰囲気のサルがいた。


 そいつをじっと見ていたら、何だか言葉を喋りそうな気がしたため、私は話しかけてみた。


「やあ」

「やあ」


 案の定だった。


「君は何者だい?」

「魔王さ」

「魔王?」

「そう、闇の大魔王」

「闇の大魔王が、こんなところで何をしているんだい?」

「世界のバランスを取っている」

「バランス?」


 もっと詳しく聞こうとした私に、サルは質問を投げかけてきた。


「その前に、君はこの世界の秘密を知る用意があるかい?」


 私は、知りたい、と答えた。


「ならば聞こう。この世は光か闇か?」

「光」

「残念。宇宙を思い浮かべてみたまえ。圧倒的な闇の中に、光が点々としているだろう」

「ならば、闇?」

「それも残念。君たち人間は光でできている。光の存在だ」

「どういうこと?」

「この世は、闇が作った、光を楽しむためのゲームだよ」

「闇が作った?」

「そうだよ。さっき言ったように、宇宙の大元は闇だ。その闇から、光が生まれ、人間を創造した。自分が光であるという、ゲームを楽しむために」

「ゲーム……」


「だが、もし、この世は闇だと気づいてしまうと、光のゲームを楽しめない。だから、君たち人間は、この世が闇であることを忘れたフリをして、このゲームを遊んでいるのだ」


「自分が闇であることを忘れたフリ……」


「そうだ。だが、自分が光だと思い込み、あまりにも光に傾いてしまうと、宇宙がバランスを失ってしまう。なぜなら、宇宙は本来闇だからだ」


「そうなると、どうなるの?」


「光が強くなりすぎると、どうなる?」

「真っ白になって、何も見えなくなるね」

「つまり、すべてが消滅するのだ。だから、私が存在している。この世のバランスを取るために」


 いつのまにか日没の時間になっていて、宵闇が辺りを包んでいた。

 何だか壮大な話だった。

 宇宙の大元は闇で、闇がゲームを楽しむために光を創造した、とか。

 でも、一つ疑問があった。


「どうしてサルなんです?」

「人間にはこの役は重すぎる。この世の全ての悪を、我が身を通過させ、闇に返さねばならない。君には出来るかい?」

「到底、そんなことは……。アッ!」


 そこまで言うと、サルは闇の中へと消えていった。

 もっと聞きたいことがあったのだが。

 漆黒の闇の中から、声が聞こえてきた。


「サルは去る。なんちて。へへへ……」

 私は思った。

 やっぱり、あれは魔王だったのだ。

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