水槽の女
掲載日:2026/02/08
仲良しそうに買い物をしている夫婦を見る度に久美は、
「どうせ、表面だけだよ。本当は仲が悪いはず。」
そんな意地の悪い事を思いながら、唇を噛み締めた。
「私の人生、こんなはずじゃなかたのに…」
そう呟くと、涙が溢れた。
自分の存在意味を見出せない日々の生活に押しつぶされそうになる気持ちに気がつかないふりをする。
そんな事に慣れてしまった久美の心は、行き場のない孤独で溢れていた。
「私も、不倫してみようかしら…笑」
できもしない夢物語を考えながら生きる毎日は辛い。
幸せだったあの頃、まさか自分がこんなにも惨めな気持ちになるなんて…
楽しい毎日が続く事に疑いがなかった自分の若さを笑いながら、急いで携帯画面を隠す夫をぼんやりと眺める。
夫の水槽の中で泳ぐの女には、自分の人生を歩む力すら残っていない。
ただ、淡々と毎日を過ごしていく。
久美もそんな女の1人である。
人生とは時に残酷であり、幸せなどこの世にないと知らしめてくる。
それでも前を向き、生きていく強さだけは皮肉にも輝きをますのである。




