*第5章:Cross RoadBluesを聴きに行こう【放課後、かふうと弥勒の作戦会議。駄菓子 屋で待ち合わせる。かふうの内面描写と店主とのやりとり。弥勒合流のおかげで軌道修正 。】*
「おじさんは、『この町』に殺された。」
みろが「学校が終わった後、計画を話しても問題なさそうな場所に集合。」ということで、
駄菓子屋「自意識過剰乙女」を指定してきた。
僕は先に下校して、店先でみろを待ちつつ、
待っている間に朝のみろの言葉を思い出していた。
思い出しては何度も噛み締めていた。
“「この町」に殺された。”
それが意味するのは、「集団で事実を揉み消して事件自体をなかったことにする。」
もしくは、「特権階級の人間が“力”を行使して、その存在自体を抹消する。」
きっと「外」では、大体そういう
“どこにでもありそうな”、“いかにも普通そうな”
「社会的抹殺」のようなことを意味するんだろう。
「ココ」では、そんな“普通”はあり得ない。
みろのおじさんの死。
僕はみろからおじさんの話を聞いたときから、
そしてみろがいなかった3年間、
ずっと「この町で死ぬこと」について考えていた。
「この町」は普通じゃない。
なら、その普通じゃない場所での「死ぬ」って?
常識から一番遠い場所での
「死」が意味するものとは?
******
「喧嘩でもするのか?」
店主の声・・・・・・・・・。
いや・・・・・・声と言うには、
あまりにも清く・・・・・・
突き抜けるようなどこまでも青色が続く
真夏の空の下で聞こえる風鈴のような
その爽快な気分になる音色で
僕の思考は一気にクールダウンした。
いや、むしろ「音色」に火照った体と、
芯から押し寄せてくる激情を抑える必要があった。
駄菓子屋の店主が再び僕の心を揺さぶる音色を奏で始めた。
「なんか、今から“決闘”とか“果たし合い”に行くような、劇画調の顔してたぞ?どうした?」
「店主、あなたは罪な人だ・・・僕という“漢”の、いや、なんでもありません。待ち合わせです。」
趣旨が著しくズレて、はやいとこツッコまないと
BL的な展開になりそうな親友と
やっと合流できたあたしは、
素早く声(的確なツッコミ?)をかけた。
「なんでもいいから、劇画オーラ出して勝手に店主と駆け落ちようとするな、ザナドゥ。」
懐かしい駄菓子屋でかふうと合流する。
ここは何も変わっていない。
それは「外」では違う意味になるんだろうな。
思い出の場所。
懐かしい風景。
心の景色。
そんなものは「この町」では、期待できない。
相変わらず「どこから卸してんだ?」っていう
駄菓子のラインナップ。
やたらと子どもに親切で、
大人への不親切さや無愛想さを
隠す気が全くない店主。
そして、その店主が全く老けない。
不気味なほど“あの頃と「全く」何も変わっていない。”
「お、いらっしゃい。なんだ、今日は友達との放課後ライフか?少年に友達がいて俺は嬉しいぞ~。」
店主はあたしのことを覚えているのかどうか分からない。
「この町」では、そういったことを
深く掘り下げないほうがいいときもある。
でも、この店が信頼できる場所だってことは確か。
「遅かったね。久しぶりで迷った?」
「違う違う。んー・・・。ちょっと“撒く”のに時間かかっちゃって・・・。」
「“撒く”・・・誰を?」
「いや、いい、いい。それで、話なんだけど。」
みろはおじさんのお葬式の時のこと
その後の、おじさんとおじさんの両親が
一緒に住んでいた家でのこと
おじさんが知らない誰かになっているということを
認識しているのは自分だけだったということを
話し始めた。
「ある日突然、自分の家族が、よく似ているけど全く知らない『ダレカ』に変わっていて、“違う”と分かっているのは、自分だけ。そんな異常なこと、『この町』の『何か』になんかされたに決まってる。絶対そうだ。」
「“ソイツ”は、きっと『チェンジリング』だな。」
話を聞いていた店主が
まるで近所の顔見知りの名前でも呼ぶように
そしてあっさりと答えを出してきた。
「本来は人間の子どもを妖精が取り替える、『取り替え子』のことを言うんだ。人間の、それも成人している大人を取り替えるのは聞いたことがないがね。」
「・・・取り替えられた子どもはどうなるの?」
みろの声に静かで落ち着いているけれども
緊張感が宿っているのを僕は感じた。
相変わらず駄菓子を食べるのをやめない店主を
まるでその相手であるかのように
悪意を持って睨むわけではないけど、
質問の答え以外は聞き入れる気はないという
強気の視線をしている。
そんなみろの視線を店主はどう受け止めているのか・・・。
他人事だからなのか、
もうどうにもできないことが
わかりきっているからなのか・・・。
店主は先ほどと同じように、
あっさりとした態度でさらりと残酷な事実を告げた。
「帰ってこない。妖精の住処で、死ぬまで妖精達の面倒を見させられる。」
サラッと答えて、さらに駄菓子を頬張る店主に、
僕たちは覚悟を持って店へ来ていることを
僕は言葉と態度で示した。
「けど、助け出す、取り返す方法はあるんでしょう?僕はその方法を知るために、この店と『この町』で準備してきたんだから。」
今日は色仕掛けには負けたりしない、と決意を示した
僕たちを尻目に店主は寝っ転がって
「美味スティック ビシソワーズ味」を食べてながら
店主は話を続ける。
「少年、そして、おねえちゃん。」
「みろとザナドゥっす。」
「かふうです。」
「二人とも。俺は子どもが大好きだ。だから、子どもが危険な目に遭わないように危ない橋は渡らないように気を配ってる。」
起き上がりながら店主は懐に手を入れながら、
懐に・・・懐に・・・・・・懐に、店主の手が・・・・・・!
「あーー・・・また始まった・・・。ここに来るといつもこうなる・・・。」そんなことをあたしは考えながら、
なんだかいろいろ表現に困る状況のかふうを見ていた。
かふうの初恋の相手はこの店主だ。
相変わらず店主が相手だとどうしようもない。
・・・・・・いや、「なにもどうしようもなくなる」?
とにかく、役に立たなくなる。
“何かしらのてっぺん達して身動き取れなくなった”
そんな感じのかふうを、取り敢えず一旦無視して
あたしは店主と話を続ける。
「子ども食堂でもやってるの?」
でも、ここの店主は自分で言っているとおり
「子ども好き」。
ここでの子ども同士での話は絶対に外には漏れない。
なぜか昔からずっとそうだった。
ここでの話は「ここだけの話」。
だから、多少かふうが役に立たなくなっても
「おじさんの死の真相」とそれを探る計画を
話すのはこの店が最適。
そう思ってたんだけれども・・・・・・。
まさか、ここまで役に立たなくなるとは・・・。
「子ども食堂?そうか・・・それは盲点だったな・・・。そうすれば毎日ウハうh・・・ンン゛ン゛。いやいや、話を戻すぞ。誰よりも子どもが大好きで、そして優しい。俺はね。」
店主は懐から何かを出して、こっちへ放ってきた。
使い物にならなくなったかふうを押しのけて
あたしが受け取る。
「なんじゃこれ?」
「それ持って、四ツ辻へ行ってごらん。知ってるだろ?『この町のとある四ツ辻』」
「・・・・・・。知らない。あたし、小6で引っ越したもん。」
「少年は知ってる。聞くといい。3年間かは知らないけれども、その子はずっと前からがんばってたよ。」
さっきからずっとガン見しているかふうに、
店主が目をやる。
一瞬視線が合ったらしい。
かふうがブッ倒れた。
「我が生涯に一片の悔いなし・・・。」
「・・・天に還ったか・・・ザナドゥ。」
「起きたら『とある四ツ辻』のことを聞くといい。俺が『それ』を持って行ってみろって言っていたって。おまえがずっとこの3年間探し続けていた『誰かさん』にきっと会えるはずだってね。」
「『誰かさん』って、誰ッスか?」
「それも聞いたらいい。『それ』の使い方もね。気をつけろ、“アイツ”の話は何も信じるな。」
店主はそれだけ言うと、
“さぁ、早く行った行った”とでも言うように
手を動かした。
“この町のとある四ツ辻”
そこで出会う?はずの「誰かさん」
そして、その「誰かさん」に渡す?使う?
店主が放ってきた「これ」
起きないかふう。
とっ散らかってゴチャ混ぜの、何からツッコむべきか
天を仰いぐあたしの思考回路はフリーズ寸前。
今すぐ会いたいよぅ、かふう…。
あ、寝てるか。
・・・・・・取り敢えず、踏むか?
この時、あたしはまだ予想してなかった。
きっと、かふうも同じだったと思う。
このあと自分たちが、
「この町」の本当に薄気味悪くって
身体中の細胞全部に鳥肌が出まくるような
そんな「きもちわるぅ………。」と思うような
経験をすることになるなんて……。




