*第4章:別れの日、モノクロの思い出、君と僕。隠し持ったアイスピックは今もこの胸 に【みろとかふう、二人の再会と変わらないやりとり。動き出す“日常の終わり”】*
「ザナドゥ!!!!久しぶり!相変わらず白いな!!」
・・・・・・・・・声がデカい、
デカすぎるよみろさん・・・・・・・・・。
「・・・久しぶり・・・。みろは・・・なんだか・・・、“大人っぽく”なったよね。」
「ん?そう?どのへん?身長は伸びたからね。」
「いや、メイクしてんじゃん。何それ?ギャル系?」
「あー、ナチュラル系ギャルメイク?っていうのかな?そんな感じ!あれ?眼鏡になったの?あ、本好きだったもんね。より『幸薄系主人公感』が増したな!」
「・・・・・・・・・ごめん、帰っていいっすか?」
「ザナドゥ」、それはみろが考えた僕のあだ名。
最初は「おい!じゃなどー!」だったんだけれども、
だんだん「じゃなどぅ!」となって
仕舞いには「ジャナ・D・(ディー)・カフィ!」と
どこぞの海賊の一族のような名前になるという
危険度の高いことを経由して
最終的に「ザナドゥ!」に・・・・・・・・・。
天真爛漫。
天衣無縫。
天上天下唯我独尊。
マジでそうだと思う。
みろは全てを体現している。
「ちょ、ちょ、ちょ!ちょま!ま!」
みろが羽交い締めにしてくる。
「み゛ろ゛さ゛ん゛・・・!首゛が・・・完゛全゛に゛キ゛マ゛っ゛て゛・・・オ゛ヴォェェ。」
声がデカい、そして動きがガサいよ・・・・・・。
懐かしい・・・・・・・・・!!!
この感じ・・・・・・・!!!
僕は完全にキマった羽交い締めという名の
チョークスリパーの影響で遠のく意識の中、
幼い頃の楽しかった思い出を・・・・・・・・・。
「おいおい、落ちんな、落ちんな。帰ってこい。」
「ヴォハゥ・・・オェ・・・。いや、落としたのはみろだから・・・。」
「なんか懐かしいなぁ・・・。」
みろが後ろから僕の肩を抱いて、呟く。
なんだか久しぶりに会った家族の優しさに触れて、
温かい気持ちになった。
みろはそんな顔をしている。
素直に嬉しかった。
僕だけじゃなく、みろも同じ気持ちに・・・・
「かふう、なんかちっちゃくない?」
・・・ねぇ、デリカシー。
みろさん、やっぱりデリカシーがないよ・・・。
そんなところも相変わらずだよ・・・・・・。
でも、嬉しいよ、純粋にただただ嬉しいよ。
分かれたあの頃と、全く何も変わらない。
あの日のままのみろだ・・・・・・・・・。
「すいませんね、身長150cmで!170以下は生存権ないんですかね!?」
「え!?ちっちゃ!あたしと10cmも違うじゃん!」
「じゃー、みろがデカいんじゃないの?」
「てめ、死にてぇのか?」
あたしは、かふうにツッコミ(?)つつ感じていた。
何気ない軽口の言い合い。
あの頃と全く変わらない小突き合い。
やっぱり、かふうは変わっていなかった。
あの頃と同じ、“あたしの知っているかふうだった” 。
「この町」に戻ってきたのは
“目的のため”だけじゃない。
あたしの大切だった「あの人」は
この町でいなくなった。
だから、友達まで「この町」に奪われたくなかった。
今は、かふうが目の前にいてハズいから、
家に帰ったら思いっきり泣いてやろう・・・。
かふうに会えて、本当によかった・・・。
そして、あたしはかふうに“例の件”を切り出す。
「ときに、かふう君!君は約束を覚えているかね?」
みろの“約束”という言葉で、
僕は「来た。」と気持ちを切り替えた。
みろが何か決意をして、強固な意志で何かを成し遂げようと考えている時の“癖”が出た。
たぶん、筋肉の緊張だろう。
左耳がわずかに、一瞬だけ「ピクッ」と動く。
キュッと結んだ口の中で少しだけ下唇を噛んでいる。
僕の両肩を掴んでいるみろの両手もわずかに震えている。
これは力を込めている時の肉体的な緊張じゃない。
「恐怖」。
子どもが暗闇に潜むモンスターを想像しながら
夜の廊下をトイレへ向かっていく時のような、
「不安」や「未知」への根源的な怖れ。
でも、みろからは「未知」を恐れて、
「不安」から逃げ出そうとしている
「臆病」なニオイはしない。
恐怖の正体と対面するのは恐ろしいけれども、
勇気を奮い立たせて挑もうとしている。
そんな「勇気」が目に宿っている。
「覚えているよ。」
みろの「勇気」に応えるために、
僕も「決意」を言葉に込めた。
忘れるわけがない。
ただ一人の友達との約束。
そのために、僕はみろがいなくなってから、
ずっと“準備”してきたんだ。
「一体何を考えているの?」
「・・・・・・、あたしのおじさん・・・。“るいすおじさん”の話・・・。覚えてる?」
「・・・・・・・・・!おじさんのこと・・・、何かわかったの?」
いつもの通学路。
いつもの登校風景。
なんだかよくわからない、「いつもの“アイツら”」。
いつも以上に気にならない。
今はみろがいる。
みろに会いたかった。
全部いつも通りで、全部狂っている。
きっと「外」はこんなんじゃない。
こんな“普通”があるわけがない。
異常でもいい、みろがいてくれるなら。
友達が一緒にいてくれるなら。
いつもの駄菓子屋、
“日常”に戻ろうとしている・・・・・・はずだった。
幼馴染のみろが「この町」に帰ってきて、
“日常”だと思っていた、
「この町」の本当の姿が、少しずつ・・・一枚ずつ・・・剥がれ落ちていく。
みろの口から・・・、奇妙な世界への魔言が零れ出す・・・。
もう、“日常”に戻ることはできない・・・・・・・・・。
「るいすおじさんは、『この町』に殺された。」




