*第12章:obscureの向こう側【妖精の住処へと吸い込まれるかふう。その先で見つけた 謎の門と正体不明の“巨大な手”の正体。かふう、初めての「一人での戦闘」。】*
巨大な、あまりにも大きな「手」だった。
“巨人の手”というよりは、鈍重な金属の塊でできた「機械でできた手」みたいだった。
よく見ると、
本当に「機械の手」なのかわからない、
正体不明の「それ」は
どうやら硬い金属で覆われている
「鎧の手の部分」らしいことが分かった。
腐肉。
僕が「ソレ」を見たときに
真っ先にイメージしたものだった。
所々青黒く変色して
ガスが溜まってパンパンに膨張した
皮膚と肉が溶け合わさって、煮凝りのようになった
ブヨブヨでドロドロの腐肉の塊。
そんなものが僕のことを鷲掴みにしようと
「手」の形になって迫ってくる。
言い表しようのない嫌悪感。
身体を置き去りにして、
魂だけでも逃げ出したくなるような忌避感。
こいつが「スプリガン」。
妖精たちの用心棒。
鼻から口にかけて広がって、
脳にまで達して汚染されそうになる「臭い」に
一瞬失神しそうになる。
その一瞬だった。
巨大な手は僕の身体を
そのまま握り潰せる程の力で乱暴に掴むと
「入口」の中に無理矢理引き摺り込もうとしてきた。
よかった。
僕は素直にそう思えた。
本当にそう思った。
どんな理由で引き摺り込もうとしたにせよ、
「そっち側」に行くのが僕たちの目的だから。
そして・・・・・・
できるだけ、「こんな姿」の僕を見て、
みろが責任を感じてほしくなかったから。
「そっち側」でなら、
きっと何も気にすることなく思いっきり戦える。
僕はされるがまま、
一切抵抗せず「手」に身を任せた。
さぁ、やってみろ。
「入口」に吸い込まれながら、後ろのほうで
みろとヨアヒムが騒いでいるのが聞こえた。
僕の名前をみろが叫んでいるのも聞こえた。
ごめん、みろ。
でも、きっと大丈夫。
そのための「準備」を僕はしてきたから。
******
「入口」に吸い込まれた後、
どうやら僕は虹色のホログラムのような
ギラギラとしたキツめの光の中にいるようだった。
まだ少し、敵とやりあうまでに時間があるらしい。
ありがたい。
僕は家を出るときに体に仕込んでおいた
「あるモノ」を急いで手のひらから出現させた。
駄菓子屋「自意識過剰乙女」の店主が教えてくれた、不思議な能力を与えてくれるお菓子で得た僕の能力。
……ちょっと頼りなさそうな気がするんだけど……
大丈夫かな…。
今からもしかしたら死ぬかもしれない
土壇場すぎる危険な状況の中、
すぐに解消したほうがよさそうな
不安を抱えたまま、僕は戦闘準備を終えた。
その準備を待っていたかのように、
景色も変わり始める。
光の中を抜けると、不思議な光景が広がっていた。
茶色い、ゴツゴツとした岩石でできた
切り立った崖のような大岩がある荒野のような場所。
その大岩の間に、荒野にはあまりにも不釣り合いな
煌びやかで壮麗な装飾が施された
宮殿の門のような“入口らしきもの”。
そして、「ソイツ」もそこにいた。
巨大な頭。
巨大な胴体。
巨大な四肢。
鈍重な手の本体は、
周囲の岩石がまるで小石に見えてしまいそうなほどの
重厚な存在感を持った「鎧の巨人」だった。
全身を隙間なく鋼鉄製を思わせる
鎧で覆われているように見える「ソイツ」は
金属からそのまま
「ソイツ」の形で彫り出したかのような
「重さ」と「圧倒的な存在感」を持っていた。
・・・・・・!!!!!!
「臭い」の正体
「臭い」の大本が今、目の前にいる・・・。
僕は、今まで経験したことのない不快感で
思わず吐きそうになった。
町にいる「アイツら」よりも、
祠に住み着いていた「アイツ」なんかよりも・・・・・・。
もっと、もっと、何倍もヒドイ臭い・・・。
どうしよう・・・ヤバい・・・本当にキツい・・・。
祠の時はなんとか耐えられたけれど…。
今度は本当にダメそう・・・吐きそうだ。
不快感でグッタリして苦しんでいる僕に
「鎧の巨人」はさらに追い打ちをかける。
咆吼。
低く、重い、「ソイツ」自体の姿形を
「音」に変えただけのような重低轟音。
もうそれは、大声や絶叫とかいうレベルじゃない。
低くて重い音が直接鼓膜や脳を振動させて、
振動しすぎて砕けてもげるほどの弩級の爆音。
瞬間、僕の中で「何か」が起こった。
よくみんなが言う、
「プツッと切れた」とか
「パチンと音がした」とか
そんなものだと思う。
でも、実際に僕が感じた衝動は別だった。
何かが背骨の端から端まで一直線に
光速で脳髄を突き破って、頭蓋ごと脳を破壊して、
頭のてっぺんまで一気に突き抜けて、
頭頂部から空に向かって光の矢のように吐き出される
「びっぐん」とか
「がっくん」というような衝撃。
「うぅぅぅぅぅぅうううぅるせぇぇぇええ゛ぇ゛え゛え゛え゛ぇ゛え゛え゛!!!!!!
くせえぇぇぇええええんだよ!!!!!!ブッッッッッッ殺すぞ、この糞溜めやろぅうぉぅうおお
おぉおおぉぉぉ!!!!!!」
衝撃波のような超弩級の轟音の中、
僕は自分の中を突き抜けていった衝動を
言葉にして叫んでいた、と思う。
突き動かされる衝動のまま、
身悶えて暴れ出しそうになる不快感から
どうにか逃げ出そうとする
僕の“本能”がそうさせたのかわからない。
とにかく、その時の僕は
「うるさすぎる」のと「臭すぎる」ので
完全に発狂寸前の“暴走状態”だった。
何をしたのか、どうやったのかわからない。
いつの間にか、「鎧の巨人」の手の中から
自由になって、距離を取っていた。
おかげでその「巨人」の全体を
はっきり見ることができた。
かなり…、本当にデカい…。
大きさは大体5、6メートルくらいかな・・・?
全体的にずんぐりとした身体をしていて、
そのどのパーツも、
すべてが無骨ないかつい見た目をしていた。
さっきまで僕を握り潰そうとしていた「手」は、
その指一つ一つが人間の2、3歳児くらいで、
手の平まで入れた「手全体」の大きさは
“普通の人間”だったら
簡単にくちゃくちゃに丸められそうだ・・・。
そのさらに先にある「腕」や
そのデカい身体を支えている「脚」も巨大で
まるで、道路の橋脚を想像させるほど
ガッシリとしていて、極太だ。
手脚のさらにその先にある「胴体」は
鉄で出来た「壁」のようだし、
「首」や「顔」はずんぐりしすぎていて
どこにあるのか分からなかったけど、
本来首や顔があるだろう部分から
おそらく「目」?だろうな、と思う
二つの光が覗いていた。
******
巨人を見た瞬間、
僕が脳内に描いたイメージは「甲虫」だった。
カブトムシやコガネムシ・・・、フンコロガシとか。
そういった「甲虫」をモチーフに作られたような、
巨大で超重量の鋼鉄製の鎧を纏った巨体。
多少距離を取れたおかげで、
さっきみたいに発狂しそうなくらいの
「臭い」はしない。
でも、相変わらず「臭い」。
集中できるだろうか・・・。
僕に「激臭認定」されていることなどお構いなしに
巨人は追撃のために襲ってきた。
巨人が動くたびに、
こっちに向かってくるたびに、
腕を振るうたびに、
臭気が風になって僕の顔を叩く。
悪臭がするぞうきんを
顔に投げつけられたような不快感。
迫る鉄塊
砲弾のような巨拳
「鎧の巨人」は決して早いわけではないけど
きっと“普通の人間”だったら
潰されて死んでしまうだろう。
でも、“今の”僕は幸い「普通じゃない」。
さっきは発狂寸前だったから無意識だったけど
「臭撃」されていても
今はまだ意識がはっきりしているほうだから
避けることは難しくない。
というか、この巨人ははっきり言って「遅い」。
僕は一瞬で巨人の攻撃を避けて、さらに背後に回る。
“一瞬で”、巨人にはそう見えただろう。
実際、今の僕は通常の人間よりも速やく動ける。
力も強くなっている。
でも・・・この「鎧」はムリくさい・・・。
攻撃できそうな「隙間」らしい「隙間」が
どこにも見当たらない。
普通、鎧には身体を捻ったり曲げたり
着用する人物の可動を妨げないための「隙間」や
「関節部分」があるはず、と思ったんだけど・・・。
あるにはあるけど、どの「隙間」も狭すぎる。
今の僕がどれだけ普通の人間よりも力が強くても
きっと破壊どころか
ダメージすら与えられないだろう。
「目」らしき光が見える部分は
狙うにしては遠すぎる・・・。
あの豪腕の乱撃を掻い潜ることができても
もし、ダメージを与えられないどころか
隙間の中に引き摺り込まれて、捕まるでもしたら、
次の攻撃は逃げられない・・・・・・。
僕が攻略方法で悩んでいると、
巨人はまた襲ってきた。
今度は、単発じゃなく連続で攻撃してきた。
攻撃というか、手当たり次第に大暴れして
とにかく僕を仕留めようとしてきた。
腕を、手を
振り回して叩き付けて。
放り投げるように殴りかかって。
体当たり。
踏みつけ。
巨体を活かしたあらゆる手段で
僕を殺そうとしてきた。
巨人は僕よりも「遥かに遅い」。
でも、連続で攻撃され続けると
いくら速く動けても、いつかは当たってしまう。
それに・・・。
あまり考えたくない考えが
一瞬、僕の頭をよぎった。
******
「コイツ」は、本当に「生き物」なんだろか・・・・・・。
これだけ巨大な身体、重量のある鎧で
さっきからずっと動き続けている・・・。
「疲れを見せない」どころじゃない。
攻撃に入るときの
「息をつくタイミング」が全くない・・・!
動きが、止まらない・・・!
これじゃ、こっちがどんなに速く動けても
先に疲れて、集中できなくなってきたら
当たってしまう・・・。
それも、きっと掠っただけで
ライフゲージ残り1残しの致死量確定大ダメージ・・・。
そのせいで、こっちは完全に動きが止まってしまって
無防備状態に破壊力のある追撃を受けて
ゲームオーバー・・・なんてことになりかねない・・・。
いや、絶対そうだ・・・!
どうする・・・!?
決定打がないと「コイツ」に勝てない・・・!
何か攻撃方法はないかと考えていたその時、
僕は今が最悪の状態であることを知ってしまう。
巨人が僕を殺そうと暴れ回ったせいで
地面がボコボコに崩れて、瓦礫も散乱している。
逃げ回ろうにも、これじゃ・・・・・・・・・。
そう思ったときには、もう遅く、
高速で逃げ回っていた僕は、
最悪のコンディションの地面に脚を取られてしまって
そのままの勢いで派手に転んでしまった。
顔から思いっきり地面に叩き付けられて、
勢いよく弾んで吹っ飛んでしまった僕は
急いで起き上がって体勢を立て直そうとした。
何秒だろう。
1秒かな。
目を離した一瞬なのかな。
わからない。
起き上がってとにかく逃げようとした。
そのときには、もう・・・・・・・・・。
ゴッシャッ!!とか、
ゴッギャッ!!とか・・・・・・・・・、
そういう音が僕の頭全体を叩いた。
何か、硬い岩とかコンクリートみたいなものを
両手持ちのハンマーや鉄の棒をフルスイングして
粉砕したような破壊音・・・。
その音に続いて
「カ゜ャキ゜シャ」というか・・・
「ク゜シャクピキ゜ャシャ」なのか・・・
言葉にできない・・・
袋一杯のせんべいとかスナック菓子
もしくは、袋一杯の蝉の抜け殻を
両手で押し潰すように
くしゃくしゃに丸めたときのような…
骨、いや肉もダメになっただろう、
そんな気がする身体から絶対に聞こえてはいけない
音が全身から聞こえた気がした・・・・・・・・・。
死ぬ。
どんなに親友の役に立とうと努力して、
「覚悟」だの「決意」だの
カッコよさげなラベリングを
自分の行動にしたとしても、
絶対に避けられない、諦める以外になにもない
無機質で冷たい、決して覆ることのない「死」。
「僕は確実に死ぬ。」
そう思った瞬間、奇妙なことが起こった。
異音が鳴って、くちゃくちゃになったはずの身体が
なんともない。
それどころか、僕を攻撃したはずの巨人の方が
大ダメージを受けている。
腕がなくなっている。
右腕が「消滅」していた。
何かに切断されたというより、
肩から先の部分がもともと存在していなかったような
それぐらい綺麗な断面をしていた。
「まさか…“これ”?」
******
僕はここに引き摺りこまれる途中で、
手のひらから出現させた「あるモノ」を見つめた。
“妖刀”。
と、言うとカッコいい感じがするけど…。
この刀の名前は
“尻尾切捨駒【しっぽきりすてごま】”。
駄菓子屋の店主が僕にくれた駄菓子
「驚嘆者(多分、おまけシール付きチョコウエハース菓子だと思う…。)」に付いている
「おまけシール」で得た能力。
このおまけシール付き駄菓子「驚嘆者」は、
僕が「普通じゃない」ことに対抗することができる、唯一の方法として店主がくれた物。
見た目はどこにでもあるような、
表面にはいろいろなキャラクターやイラスト
裏面にはその説明が書かれているただのシール。
でも、このおまけのシールには不思議な力があって、
シールに描かれている説明通りの
“描かれているイラストごとで異なる特別な能力”を
一時的に使うことができるというシールだった。
使い方は簡単。
身体のどこでもいいから貼り付けるだけ。
シールを貼り付けるだけでも、
“特別な能力”を使うことはできるけど、
一緒に入っているチョコウエハースを食べると
より長く能力を使うことができるようになるらしい。
店主の話だと、シールだけだと1時間
お菓子を食べると1日(24時間)だそうだ。
この能力(お菓子)を使う時は
「おまけシールの説明は『事前に必ず』確認すること。」
ということを店主から念を押されていた。
先にどういう能力なのかを
ある程度情報として頭に入れたうえで
能力を使用しながら
使いこなせるようにするため、だそうだ。
お菓子を食べると長くなる理由は
「チョコ菓子が消化されて体内に吸収され切るのって、だいたいそんなもんだろ。」
と言っていたが・・・うーーん・・・。
今日も僕はここに来る前に、言われた通り
チョコ菓子を頬張りながら、
今日のシールを確認していた。
今日のシールの能力は確か・・・、
“尻尾切捨駒【しっぽきりすてごま】
:種族 魔器(妖刀)
:ストーリー 「『この刀は名刀:童子切安綱に憧れて作られた刀剣である!』、
という“噂”がまことしやかに囁かれていたらしいぞ!知らんけど!!」という逸話を持っている迷刀。
:能力 この刀で切ったものを自分の身代わりにすることができる。
刃物としての「切断」ではなく、身代わりに使うための「切除」なので切られた側にダメージはない。
一度身代わりとして使ったものは二度使えない。
自分の身体で使用した場合、
取り返しの付かないことになりかねないので要注意!!”
だったはず…。
………え?
僕いつアイツの腕切ったの?
覚えが全くない。
だって、どう考えたってアイツの体を
こんなもので斬り付けたら、絶対に粉々になる。
そう思ってたから、
一度も使わずにわざわざ逃げに徹して…。
そこまで考えて、
僕は「自分がどうやってアイツの腕から逃げ出したのか」という謎が解けた。
僕はあの発狂寸前の時に、
きっと“尻尾切捨駒【しっぽきりすてごま】”を使って
全力で暴れたんだろう。
そのとき思いっきり
アイツの手か腕を斬り付けたのかもしれない。
だから、手の中から逃げることができて
今も僕の体の代わりに、妖刀で斬り付けられた
アイツの腕が身代わりになったんだ。
そしてどうやら、
この妖刀で一度身代わりになったモノは
もう完全にこの世から消滅してしまうらしい。
“自分の身体で使用した場合、取り返しの付かないことになりかねないので要注意!!”
……店主がシールの内容を
ちゃんと事前に確認しておくようにって
念を押していた意味がよく分かったけど…。
怖すぎるって…あっぶねぇ…。
でも、助かった。
正直、名前のせいで、
「大丈夫?今日頼らなきゃいけないやつって、これで本当にであってる?え?これ?」
「こんなんで、どう戦えばいいんだよぉ!!」
って思ってたけど
戦い方によっては、勝てるかもしれない!
確実に殺したはずの相手に一切のダメージがないのと
突然自分の腕が消えてなくなったことで、
巨人はかなり動揺しているらしい。
さっきまでの凶暴さが全く感じられない。
相変わらず“アイツら”特有の臭いはするもけど、
どうやら「怯えている」らしい。
“普通の人間”と同じように、
怯えたときに生物が出すニオイが「する」。
「そうか、この刀は刃物としてのダメージは与えられないけれども、能力の効果を発動させるために、対象を『斬る』という行為が必要になるわけか。だから、わざわざ説明書きに『切断』ではなく『切除』って書いてあったんだ。」
僕は妖刀:尻尾切捨駒の能力を改めて理解して、
巨人のほうへ近づく。
あの巨大な鉄の塊が、今は自分のその体の
10分の1にも満たない僕を「恐れている」。
「安心してよ。こんな姿になっても、“まだ”人間だから。『君ら』のように意味もなく殺害や破壊をする気はないよ。“今のところ”はね。『君』次第かな。」
脅迫でも警告でもない。
事実だ。
僕はゆっくりと巨人に近づいていく。
「怯えの臭い」がさらに強くなった。
生き物が怯えたときと同じような
拍動や鼓動のような“音”もする。
なるほど。
このスプリガンっていう種族は
ヨアヒムやノッカーと違って
「悪臭」や「異音」がしたり、
身の毛がよだつような感覚があったから、
妖精っていうより、“アイツら”に近い存在で
恐怖や不安を感じないのかなと思ったけど、
どうやら人間や生物のように
「恐怖」を感じるらしい。
なら、余計に注意しないと。
追い詰められたら、「生き物」は何をするかわからない。
特に、コイツは入口に近付く対象を
無差別に攻撃するような
「門番」だから。
ゆっくりと慎重に。
周囲の瓦礫を念のため
妖刀で「斬り付けながら」近付いていく。
「門番」が一人とは限らない。
騒ぎを聞きつけて、
もうすでに「ナニか」がいるかもしれない。
不意打ちや罠もあり得る。
今の僕はハグストーンを持っていない。
スプリガンの脅威がさっきよりも
ほんの少しだけ弱くなっただけだ。
気を抜くな…。
そう、僕は決して気を抜いていたわけではない。
周囲を気にしすぎて、
注意が散漫になっていたわけでもない。
それは突然起こった。
「ぎぃいいゃぁぁあぁぁああ!!かふー、たーすけてぇぇええ!!!!」
「逃ゲロォオオオ!!!「くー・しー」ダァァァアアアアアア!!!!!」
幼馴染みと気のいい妖精の叫び声、
そして「犬」…。
…え?「犬」?




