8戦目 自警団
私たちが見つけたフェスは返り血で濡れていた。しかし彼女は私たちに気づく事なく次の相手を倒しに行きます。
「さぁ!どんどん行くよ!この町の人に危害を加える余所者は……排除一択だー!」
そう言いながら二槍の槍でどんどん人を斬る、薙ぐ、裂くとテンポよくやって行きその都度返り血が彼女を血まみれにしていく。
「止めますか?」
「いいえ……加勢しますよ!彼女の援護に周ります!アネリーは彼女の間合いを知らないので逃げ遅れた人などを護りつつ戦って下さい!出来ますか?」
「もちろん!任せて下さい!」
「コーネリア、行きますよ!」
私とコーネリアは一気にフェスの後ろに付くと速攻で横に並ぶ。
「久しぶりですね!フェス。」
「え……はぁああ!なんでここにメアリーが!?」
「話は後です。あの方達を追い出すのでしょう?」
「コーネリアまで!?……あはは!また2人と戦えるなんて夢みたい!じゃあ懐かしの作戦でいく?」
「いいですね!では、作戦花咲かしで行きましょうか。」
「のった!」
「はい!」
作戦花咲かしは相手に対して私とコーネリアが後衛にフェスが前衛となる。槍使いは本来縦に攻撃を集中させるもの、しかしニ槍使いのフェスならば範囲は普通の槍兵よりも広範囲の敵を穿てる。でも穿てばその分引き抜くのに時間をかけることになるだから基本そんな事が出来ない。でもこの作戦ならば……
「久しぶりに槍本来の戦いが出来るわ!」
「サポートはお任せ下さい!」
「信じてるわよ!2人とも!」
一瞬にしてフェスは2人を貫いた。そしてその隙を狙って多くの敵が集まってくる。当然だ。先程まで暴れてた相手がいきなり隙を作ったのだから……しかしそこに私が一気に前に出る。そしてナイフ一閃!2人を仕留める。更に敵の武器を拝借、今回は斧だ。斧を手に持ち振る角度を決める。そしてまた一閃……前に居た2人の腕を切り落とし1人は顔を斜めに切り裂いた。2人の断末魔が聞こえるがそのまま蹴りを入れて地面に倒します。
一方コーネリアはというとロングナイフでそのまま近づいてくる相手を容赦なく切り捨てていた。またコーネリアは位置取りもズバ抜けて良い。丁度相手の視覚から急に現れる為相手は完全に虚を突かれるわけだ。これは相手からどう見られてるかをしっかり把握してるから出来る所業でもある。間違いなく天才と言えるでしょう。そして今居た敵は全て倒した後、久しぶりの再会になった。
「久しぶりにしては良い連携でしたね。」
「そうね、それにしても2人とも鈍った?スピードが前より落ちてると思うんだけど?」
「それは……」
「はい、そうですね……一応は鍛えていたのですが感覚が少し鈍っていたと思います。」
そこへ別行動をしていたアネリーが帰ってきた。
「戻りました。すいません……この人たちはどこへ連れて行けばいいの?」
辺りを見回すと倒壊の恐れがある建物ばかりだった。
「野営の準備をしましょう。いつ倒壊してもおかしくないので……」
私は住民の前に近づき膝を付いてゆっくり話す事にした。
「落ち着いて下さい。もう大丈夫ですから……」
「本当……ですか?」
「はい、申し遅れました。私は第21師団長メアリー・バーンです。」
「師団……ひぇ!!」
すると周りからザワザワとし出した。私とコーネリア、アネリーは周りを見渡しているとフェスがいきなり殺気を飛ばしてきた。
「アンタ……やっぱりそっち側なんだね?」
「どういう!?」
その直後フェスは私に向かって槍を振り下ろしていた。私はナイフでギリギリ受け止めた。そしてそのまま流れる様に横薙ぎが飛んでくる。私はそれを紙一重で避けたが更に攻撃は繋がる。しかしこのまま逃げるわけにはいけないし、誤解を解かないと話ができません。
「な、なんですか!説明をしてください!」
「うるさい!アンタらはあっちの味方なんだろう!?」
「だから、説明してって……言ってるの……私はただ……」
「説明……?それはこちらの台詞よ!何の説明も無しに移民を受け入れておいて奴らが犯罪を犯しても無視、こちらが取り締まろうとしたら騎士団を3師団も送り込んでおいてアンタの差し金何でしょうが!白々しい!総指揮官様!」
力がどんどん増してくる。この子からしたら私に裏切られたと思ってるんだろうけども……私が総指揮官の時にこの町に騎士団を送り込んだ事は一度もない。
「フェス……貴女は昔から話を聞きませんね……」
「話なんてする必要あるの?アイツらを送り込んだのがそっちの答え何でしょうが!」
「はぁ……私はもうそんな権限有りませんよ。総指揮官でもないですから……」
「じゃあなんでここに来たのよ!」
「貴女を迎えに来ただけですよ。もちろんこの町がこんな事になってるのも知りませんでした……」
そこでようやくフェスの攻撃が止まった。
「それは本当なの?」
「誓って本当よ。」
こういう時目を合わせて嘘か本当か測る。フェスは昔からこうやって相手を見定める。そしてその感覚が間違う事はない。だからフェスは信じてくれると分かっている。
「なーんだ!それなら早く言ってよもう!」
「貴女が攻撃を仕掛けてきたからでしょう」
離れてたコーネリアがフェスの後頭部をペシッと引っ叩いた。そしてフェスが信頼出来ると分かって周りからも安堵のため息が出る。
「でも、まだ行けないみたいですね。」
「そうだよ。連れて行きたいならここの問題を片付けてからしか行かないよ!」
「分かっています。第一、騎士団が関わってるのなら何とかしなければなりませんからね。でも、その前に……アネリー、コーネリア!」
「分かっております。今から戻って食料をかき集めて来ます。」
「お願い、お金は経費で払うから気にしないで下さい。」
本当はマーヤも呼びたいですがこの殺伐とした現状では心身を疲弊しかねない。
「フェス、貴女料理は?」
「やってもいいわよ!」
「少しは上手くなったのかしら?」
「もちろん!ね!」
フェスの言葉に町の人はみんな視線を逸らした。どうやらここでも何かやらかしたらしい。
「貴女は警備をお願いします。私達で作りますから……」
「ちぇー……」
「皆さんも力を貸して下さい。野営の準備です。建物はしばらく使えませんから焚き火の用意と寝床の準備、そして雨が凌げる様な物があればお願いします。もし、建物の中にある時は私かフェスを呼んで下さい!」
『はい!』
こうして準備を開始した。私は作業をしながらもフェスの言ってた3師団が気になっていた。暴動の鎮圧に3つも使うのか……そしてなぜフェス達にその矛を向けているのか……わからない事だらけだ。こういう時はゆっくり情報収集をしなければならない……
何せ相手は身内だから……
全員が避難、安全を確認した頃にはすでに夜になっていた。そんな中私たちは話し合いをしていた。
「……どう見ますか……?」
「騎士団全体の考え方……ですか?」
コーネリアの答えに私は頷いた。
「やってる事がわからないわ……こうなるともしかしたらフェス達事一掃する狙いすら考えられるもの……」
しばしの沈黙の後アネリーが質問してきた。
「思ったんだけど、なぜ騎士団の方はこの町の人より外国人さん達を守っているの?本来騎士団は国民を守るものだよね?」
「そこが分かるのなら苦労してないんですけどね……この旅に出る前にも伝えましたが罪人と差別されてきた人達を国外に追放する理由を作るためにやってるなら国はもう私たちの敵になります。」
「敵は国家になるの?」
「……本当は良くありませんが……敵は私たち以外の騎士団になります。」
「話し合いで解決出来ないのですか?」
「もちろんこちらから明日、来ているという騎士団の指揮官たちと話し合いをしてみます。」
「無駄だよー!」
明るい声なのにどこか絶望感を含めた声音でフェスが私の後ろから声をかけてきた。
「フェス!どこから現れたの!?」
「そんな話ししてたら嫌でも目が覚めるって!それより話し合いなんて無駄だよー。」
「それより無駄というのはどういう事ですか?」
フェスの言葉に違和感を持ったコーネリアが私と同じ考えの質問をした。
「言ったまんま、話し合いなんて応じてすらくれないのよ。」
「なぜですか?お互い血を流さずに済む方法は話し合い以外ないはずです。ただでさえ我が国は他国から常に狙われてるというのに……?」
私もコーネリアと同じ考えだ。内乱なんて起これば真っ先に他国からの攻撃が飛んでくる。それこそ移民なんてものは裏切り者と思われても不思議ではない……しかしそこで私の頭の中に1つの仮説が立った。
「もしかして……移民の中に反乱分子がいますか?」
「おっ、流石メアリー!察しがいいね!そうよ。私たちを追い出した後奴らにこの町をあげたらその後は拠点にしてもらい力が着いたら……」
「反乱者さん達は祖国へ攻撃し、そこで私たち騎士団を使い恩を売ってこの国の元の領土を取り戻すという訳ですか?」
「ありえません!そんなの成功したとしても私たちの国はいい様に利用されるだけです!」
私もそう思った。浅はか過ぎる作戦だ。だが、元反乱者を駆逐するという点だけ言えば悪いとも言えない。
「はぁ……誰がそんな事を考えたのでしょうね……」
「国のお偉いさん達の考えなんて私たち庶民にはわからないよ。」
少なくとも私が騎士団の総指揮官ならそんな事しない、させない。口約束でも書面でも裏切るのは一瞬だ。そしてその一瞬が有れば簡単に国を乗っ取る事も可能だ。
「この土地は先祖代々受け継がれてきた土地です……他所の国民に明け渡す様な事があってはなりません!最悪の場合今の立場を辞任して自警団を作ります。」
「まさか……国へ反旗を翻すの!?」
アネリーは驚きのあまり立ち上がっていた。一方コーネリアは普段と変わらずにいた。
「貴女がそれを望むのなら私は着いて行きます。例えそれで汚名を注ぐ事になっても……」
「ありがとうございます。アネリーはどうしますか?」
「はぁ……部下は上司に付いていくしかないからね。それに……国が国民を虐めるなんてあっていいはずないし、私も戦うよ!」
「決まったみたいね。」
「全く、フェスは厄介事をよく持って来ますね。昔のままです。」
「はっはっはー!私のご先祖様が悪人なら私は善人になればいい!困ってる人を助ける善人にね!その為なら私はドラゴンだって倒してみせるわ!」
「ドラゴンなんて空想上の生き物ですからそんな物現れませんよ……でも、だからこそフェス、貴女を迎えに来たのです。」
この人はいつだって困ってる人を放っておかない。初めて出会った時も弱い者イジメをする人たちから守っていた。まぁやり過ぎて留置所に入れられていたんだけど……それでもこの人はきっとこちら側にいて国民を守る盾になってほしい。そう思える人だった。しかし実際は盾というより矛だった訳だが……
「私だって他の指揮官には付いて行く気ないよ!メアリーだから付いて行くんだから!」
「相思相愛って感じだけど……私の姉からは業火の様な怒りが見える……これが天然タラシというやつなのか……」
「メアリー様、そろそろ休まないと明日の業務に支障が……」
「あぁ……そうですね。では、少し休みましょう。」
「じゃあさ、メアリーのテントで寝させてよ!」
間違いなく今コーネリアの顔は鬼の形相に違いない。現に先ほどから悪寒がしてる。
「残念ですが私はテントで寝ませんよ?」
「じゃあどこで?」
私は上を指差したそこは木だった。
「高い位置から即座に敵を見つけられますし、私が囮になる事で皆さんを護れますからね。」
「じゃあ私がやるよ!」
「ならば私がやりますよ!」
コーネリア、フェス2人同時に言われた。
「お2人は確かに身軽ですが……木の上で寝るなんて事をした事ないでしょう?」
「それは……」
「ないけど……」
「それに3人とも私には出来ない体力仕事を任せなければなりません。しっかり休んで下さい。明日が何も起こらないとは限らないのですからね。」
「分かりました。」
「あーあ、久しぶりにメアリーと寝られると思ったのに……」
(!?)
「じゃあ私も寝ますねーおやすみなさい。」
アネリーはこれからの修羅場から逃げる為にさっさとテントに逃げ込んだ。私は逃げられずコーネリアに詰め寄られた。発言した張本人もとっととテントに入って行った。よって私の睡眠時間は明け方からとなりました……寝てたと言っても私が寝てる間に隣に来て寝てただけなのに……これを説明するだけでかなりの労力をしようするのでした。
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