11戦目 創造力
「……ここはいつから託児所になったの?」
部屋に入るなり眉間に皺を寄せたセレナが私の前にやってくる。
「あら、いらっしゃい。この前のお説教なら後日にお願いできますか?事後処理が山ほどあるのだけど?」
私は書類に目を通しながら言うとその書類を取り上げられた。
「はい、そうですか……っていくわけないでしょーが!」
セレナは机をバンッと叩いて私に抗議してきた。
「いや、本当に忙しいんですよ。見て下さい。遠征中に溜まったこの書類の山を……」
「ほとんどが始末書でしょうが!」
その通りである。主に独断で動いた事と、フェスとアネリーとエイジが暴れたために倒壊した建築物の修繕費の申請だが、各所に出さなければならない為に多くの紙が必要なのだ……
「それにその子!誰よ!?なんでこんなところに子供がいるのよ!」
ぜぇぜぇと息を切らしてるセレナにコーネリアが紅茶を持ってきた。
「喉乾きますよ。こちらをどうぞ。」
「アンタたちは……はぁ、まぁいいわ。とりあえずその子はどうしたの?」
セレナはレイを指差していた。まぁ初めて会ったのだから仕方ない。
「その子はあの掃討作戦で見つけた面白い子です。」
「面白い子……ね。」
セレナが細目で見る先にはレイがいた。今は私が渡した雑紙で何かを折っている。そしてそれをふわりとなげた。折られた紙はゆっくりと空気を裂いて飛んでいき、地面に落ちた。
「なにあれ?」
「遊んでるのよ。空を飛びたいらしいわよ。」
「……ほんと……バッカじゃないのー!!」
めちゃくちゃ溜めて言われたがこちらはどこ吹く風だ。否定されるのなんて当然だったし、とりあえず書類の1つにサインをした。
「何呑気にしてるのよ!アンポンタン!そんな大きな事しようとしてるのに書類にサインなんかしてる場合!?」
これは肯定か?私は驚いた顔をしてただろう。顔を上げると不適な笑みを浮かべたセレナがいた。
「面白いじゃない!今すぐ資金調達してきなさい!」
コーネリアも意外だったようで口を挟んできた。
「意外ですね。セレナさんは反対派と思ってました。」
「ですね、セレナさんは宗教に入信してましたし……この考えには反対と思ってました。」
私は書類を読みながらサインをしてまた書類の山に置く。
「バカねー、宗教と考えは別よ、空への侵攻は神への冒涜なんて古い古い!だったら虫や鳥はどうなのよ!アイツらは飛んで行ってるんだから私たちだって飛ぶべきなのよ!」
どうやら私と同じ考えらしい。あの時言おうとした言葉を全て言われてしまった。
「でも、どうやってあの空へ飛ぼうと言うの?」
「あれがそのまま答えでしょ!」
指差したのはレイが作っていた紙の山だった。
「あのくらいゆっくり滑空できるのには秘密があるはず。それを調べる事からはじめるのよ!」
「誰か良い人いますか?」
「そんな人この国にいると思う?」
「いないわね……」
愚問だった。この国でまず空を飛ぶなんて事を考える人などいないのだ。ならば自分達で調べなければならない。
「まぁあの姫様に相談したら予算くらいはくれるかもよ。」
「あー……そう言えば手紙貰ってたなぁ……」
その言葉に反応したのはコーネリアだった。
「まさか……まだ読んでなかったのですか……?」
私は頭を縦に振る。これにはコーネリアもレナも呆れていた。
「早く読んで下さいね。不敬罪で逮捕なんて嫌ですよ……」
「分かってます。」
私は手紙を開いた。向こうもなかなかに難解文を持ってきた。
「何よこれ?」
「普通の手紙ですね。」
私の後ろで見た2人が頭を悩ませてる間に私はゆっくりと考えます。内容は以下である。
『ごきげんよう。
メアリー様、最近降格された事を知り胸が痛い思いでございます。父と母は特になんとも思っておりませんが、私は寂しくあります。つきましては一度お話ししたいのでご協力下さい。』
「コーネリア、部屋の清掃をマーヤとお願いします。」
「……かしこまりました。ですが、2人でですか?」
「アネリーとフェスが居て掃除できますか?」
「失礼いたしました。」
コーネリアも分かったようだ。遊ぶ2人の様子が……
「出来れば本の多い部屋を。あの方が暇を持って余さない様に。」
「ロゼッタ姫がこちらに来られるのですか?」
「半分正解です。ご協力下さいという事なので家出するから匿ってくれです。」
「……は?何言ってるのあの姫様?」
「という事は今回もですか?」
「そうなりますね……今度は始末書で済みますかね?」
「下手をすると誘拐及びテロ行為に問われますね……」
「……そこは最高の弁護士と姫様に任せましょう。来るのは明日だそうです。」
「知らないわよ!アンタたちが捕まっても私は何もしないからね!」
こうは言ってるがなんだかんだで助けてくれる戦友である。
「今回手伝いの方は?」
「一応迎えまでは行きましょう……手紙をお願いします。」
私は手紙に『明後日、朝日が昇る堀の下にて……月を待つ。』と……
要約すると明後日にお城から見て東側の塀の向こうで貴女を待っていますという意味だ。これはバレる可能性もあるがいっそあの王様たちにバレてた方が安心するでしょう。という意味も含めていた。
明後日の夜……お城の塀から姫様が顔を出していた。そして颯爽と慣れた手付きで塀を降りてきました。
「お久しぶりです。メアリー指揮官!」
そう言って私に飛びついてきた姫さまを受け止め、私は挨拶を軽く済ませて馬車に乗りました。
「また一段と降りるスピードが早くなりましたね。」
「ありがとうございます!毎日ノルマはこなしております!」
胸を張って言う姫さまはなんと言うか……子供に見えました。この方は褒めて伸びるタイプですから褒めて欲しいのだと思います。
「素晴らしいですね。ロゼッタ姫。それと怪文書の腕も少し上がりましたよ。」
「メアリー指揮官に言われると自信になります。」
こちらに関しては真面目な顔で応えてくれましたが口角が少し上がっていたのを私は見逃さなかった。恐らくまだまだと思っている中で褒めてもらえた事で嬉しいけどまだ上を目指さないとと思っていますね。そして私たちの屯所につきました。フェスとレイは既に就寝中。アネリーとサーヤは先に帰宅させている為今いるのは私とコーネリア、ロゼッタ姫だ。
「それで、ロゼッタ姫……なぜここへ?」
「家出ですよ。家出!あの父と母はメアリー様の価値を分かっていません!それを抗議したく家出しました。」
私のことを擁護したいのでしょうが……このままでは私は姫様を拉致した主犯となりますね。それを察知したコーネリアが姫様に諭しました。
「あのですね……姫様。確かにメアリー様は素晴らしい上官ですし、それを認めない上層部も腹立たしいのは分かります。ですが、これではメアリー様は姫様を攫った犯罪者になります。」
「心配ありません!机に一通の手紙を置いて来ましたから。」
「分かれば心配しなくても大丈夫のはずですからね。ですがあの方たちは絶対わからないと思います。ついでに解らなければ誰かに聞いても良いとだけ書いてます。解けずにここへ来るか、解けてここに辿り着くか見ものですね。」
不適な笑みを見せるロゼッタ姫は悪女のようでした。しかし気になる事があります。
「一体どんな手紙にしたのですか?」
「結構考えて作りましたよ!」
『少し家を空けます。お友達の所で私にない物を学んできます。私にはない物を得て来ます。それは父上と母上にはありませんそれはとても広い世界、広い視野、体面する場所、お友達は待っています。なのでそれを学ぶ為に空けます。迎えには来れますか?来れませんよね?あなた方は手放したのだから。お待ちしています。
*皆さんのお力を借りて探し出して下さい。誘拐とかではありませんのでご心配なく。
ロゼッタより』
「皮肉満載の手紙ですね。」
「メアリー様は答えはお解りですよね?」
「ええ、コーネリアも分かったみたいですね。アレでしょ?」
私とコーネリアは同時に机の上にある物を指差した。それは……
「正解です!流石お2人です!そう正解はチェスです!」
「そしてこの方も答えですよねロゼッタ姫?」
そう言ってコーネリアが指差したのは私だった。
「なるほど確かに私もある意味正解ですね。王家が手放した者に入りますからね。でも、チェスは王家にありませんでしたか?」
「いつの間にか捨てられてました。私は好きだったんですが……お相手がいないので私もしなくなり……いつの間にか消えてました。」
寂しそうに見えたのは私だけでしょうか?恐らく気のせいではないと思います。昔は王様とお妃様に習ってよくチェスをしていましたから……
「そうですか……では、私と久しぶりに一戦しましょう。」
「良いんですか?」
「勿論です。コーネリア、お茶の用意を。」
コーネリアは深く頭を下げて、部屋を出ました。そして私はテーブルにある本を全て書斎に置いてチェス盤と駒を用意します。
「片付けてあるのですね。」
「こうして片付けておかないとしたくなりますから。」
前にコーネリアとチェスを朝までしてた事で翌日寝不足で仕事にならなかった事があった為こうなったとは言えない。
「それにしても紙が多いですね。」
「散らかっててすいません。先の戦場にて思わぬ拾い者をしまして……」
「拾い物?」
恐らく姫様は人だとは思っていないだろう……まあこの話はまた明日にしましょう。そしてタイミングよくコーネリアが戻ってきたので私たちはチェスを始めるのでした。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次回更新もお楽しみに!
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