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10戦 指揮官

 私は今3つの師団と住民の前にいます。そして聞こえるくらいの声を張ります。


「敵は他国の人間です。そしてこれは国が犯した過ち!それを立て直せるのは国民のみ!私たちのこれからの行動は国家に対する反逆に近い。ですが、大義は我々にあります!己の剣に、槍に、弓に、盾に、誇りを持って下さい!ここでのあなた方の活躍が後の、未来の、子供たちへ受け継がせる為に!」


 私は剣を持つ事はない。だけど士気を高める為に私は剣を空に突き上げた。すると周りから一斉に声が上がります。これがここにいる皆さんの不満そのものだと思った。


「とはいえ、相手は難民でもあります。負傷してる者まで手をかけるなど騎士団としては不名誉です。なので今回は武装集団、および犯罪組織を重点にし破壊します。」


 私とフェス、そして騎士団総出でかき集めた情報を精査して9つのポイントに当たりを付けた。これらを一気に叩き今いる敵組織を壊滅、もしくは撤退させるのが今回の作戦です。


「作戦指揮は私、第21師団指揮官メアリー・バーンが行います!皆さんの命……預からせていただきます!」


 そして味方から再び盛大な歓声が上がるのだった。






 2日前に遡ります……


 私はコーネリア、メアリー様の副官です。今はメアリー様の命令で王城に来ています。


「申し訳ありません。通して貰えますか?」

「コーネリア様!今回は如何様で?」


 門番の方は私の顔をよく知っています。ですがしっかり手順は踏まなければなりません。


「国王並びに王妃様にメアリー様の手紙をお届けに参りました。」


 私は手紙を門番の方に見せると少し笑っていました。


「これは……何を書いてるのか分かりませんね。ただの感想文では?」

「そうしなければ無くした際簡単に読み解かれてしまいますから。」


「ははは!それもそうか!通っていいぞ!」


 私は王城の中に入ります。中には兵士がいますが騎士団出身者も多くいるので話しかけられたりもします。その中で甲高い声が王城の廊下に響き渡ります。


「あっコーネリアさん!」

「ロゼッタ姫。」


 幼く見えるけれども姫さまはメアリー様と同じ歳になります。姫さまは私を見つけると走って近寄ってきます。私はすぐさま片膝を着き頭を下げます。


「頭をお上げ下さい。コーネリアさん。今日はどの様なご用件で?」

「はっ!今日はメアリーからの手紙を持って参りました。」


 私の一言でロゼッタ姫はすぐに真剣な顔になりました。


「では、父上達もお呼びしますね……」


 そのまま私は王様、王妃のいる部屋に通されました。


「して、我らに何用かな?」

「あなた方はもう総指揮官ではなくただの一師団の指揮官と副官……その立場では、決して来れないことを分かっていられますよね?」


「この度は面会の時間を設けていただきありがとうございます。今回は急でしたので少しばかり無理を通させていただきました。王様、王妃様、姫様の広い心に感謝致します。そしてお渡ししたいのはこちらのメアリーからの手紙です。」


 私は王様にメアリー様からの手紙を渡しました。すると王様の顔は困惑の表情へ変わります。


「相変わらず意味のわからない文章だな。」


 そう言って今度は王妃に手渡しをしこちらは真面目な顔をして一言……


「ふざけてるのですか?」


 声には少しの怒りが込められている。まぁそうだろう。そのくらい訳の分からない文章なのだから。


内容は以下の物だ……


 私は今回の視察でサンドイッチを持って来てたのですがパンにカビが生えていました。おまけにトマトは潰れてハムから出て来てました。なので私たちはカビの生えた部分の除去をしてから新しく作ろうと思います。王様、王妃様はカビの原因はなんだと考えますか?


「もう一度言います……ふざけてるのですか?」

「いえ、恐らく暗号かと……」


「やたらと難しくするのを止めろと毎回言っているのにな……」


 この暗号文を素直に私が解読して伝えてもいいがそれだと困る事もある。私が持ってこなかった場合解読出来ず戦況が伝わらない、敵に盗まれた時などすぐに読み解かれてしまえばこちらが不利になるなど様々な問題に繋がるのだ。


「解けました!」


 ここで解けたのはロゼッタ姫である。この姫も聡明な方だ。何かのヒントでわかったのだろう。


「つまり国の政策で国民の血が流れてるのでその危険分子を排除します。そして私たちには内部のカビを除去してくれって事ですね。」

「その通りです。」


「考えましたね。食べ物で国の状態を知らせるなんてなかなか伝わりませんよ。」

「ロゼッタ姫も流石でございます。」


 そうして王様が判断を下します。


「わかった。ヴェルシキニアの町の件はメアリー達に任せる。政治の汚職の方はこちらで対処する。お前達は好きに暴れよ!以上だ!」


「御意!」


 私はそのまま踵を返し部屋を出ました。毎度の事ですが緊張してしまいます。そして2、3歩歩いた所で後ろから声を掛けられます。


「コーネリアさん!」

「ロゼッタ姫?」


 私は踵を返して片膝をつきます。


「畏まる必要はありません。顔を上げて下さい。」


 私は顔を上げて目線を合わせます。するとロゼッタ姫は私に1枚のメモを渡してきました。


「これをメアリーさんに渡して下さい。あの方ならわかるはずですから。」

「わかりました。お届けします。」


「今回の政策、父上達は消極的です。なのでメアリーさん達に任せたのだと思います。」

「つまり、私たちに暴動を起こさせて民意は違うとハッキリさせろと?」


 ロゼッタ姫は申し訳なさそうに頷いた……


「回りくどいやり方で申し訳ありません……ですが、皆さんの事を信じております。」

「おまかせ下さい。幸い今回は暴れるのが好きな人間が多数いますから……」


 私が王城を去る頃には夕方となっていました。今日はマーヤに会って明日帰る事にしましょう。




「で、アンタはまだ騎士団にいたのか?」

「貴女こそなんでここにいるのですか?」


 私の目の前にいるのはマーヤともう1人の女性です。その名はセレナ・ガレット。司法官だ。


「質問してるのは私よ、まずは先に質問した人に答えるのが筋ではなくて?」

「……私はメアリー様に付いて行くだけです。メアリー様が引退するのでしたら私も引退します。」


 それを聞いたセレナは大きなため息を吐いた。


「はぁ……アンタね、いつまでメアリーの腰巾着してるの?アンタならもっと上を目指せるでしょうに……物好きね。」

「私はあの方に命を救っていただきました。ならばこの命はあの方に使わなければなりません。」

「ほんと!物好きね!そんな事メアリーは望んでない。感謝はしてもメアリーは人生なんて捧げてほしくないに決まってるわ!」


 この問答も数十回と繰り返したのに未だに私はこうありたいのだ。たとえメアリー様が望んでなくてもです。


「私は答えました。次はセレナさんの番ですよ。」


 ムッとした表情を見せますがすぐに気を取り直して答えてくれました。


「私はそこのマーヤって子とメアリーに頼まれた事があってここに来て仕事してるの。」

「もしや行く前に頼んでいた仕事ですか?」


「はい、猟師さんたちについての法改正の原案をセレナ様に届けたところまだ穴があるという事でこちらに来て仕事なさっています。」

「自分の部署でお仕事なさっては?」


 私の発言は真っ当だと思います。現にマーヤも苦笑いをしています。


「こういうのは人目が付かないところでやるのよ。じゃないと盗まれるから!」

「盗まれるってまだ未完成の法案をですか?」


 やれやれと言う顔のセレナが説明してくれました。


「私たちも出世をしたいんです。でも、下の人間が上に行くのを快く思わないんです。トントン拍子で出世した私なんかはね。」

「つまり、ネタを横取りして出世すると?」

「あとは嫌がらせとその法案を作ってほしくない連中の妨害ね。これに関してはよくある事よ。特に命を狙われるなんて事もあるから気をつけないといけないのよ。」


 司法を担当するセレナは裁く事も法を立案するのも弁護するのも立憲するのも仕事だ。そして立案した法案を国に提出し、王様と役員が審議します。ですがこれだと司法中心になります。なので司法を管理する役職も当然あるわけです。


「特務機関は動かないのですか?」

「アイツらはいいとこ取りのハイエナよ。起こったら動くし起こらなければ何もしない。お役所仕事よね。私たちが何かしでかすか、私たちに何かが起こらないと動かないのよ。」


 司法を監視、管理するのが特務機関と言われる機関ですが、やはりお役所のお仕事のようです。


「つまり、自分の身は自分で守っていると?」

「そう言うことよ、それにこの法案は自国有利の法律だし、今は外交に力を入れたい貴族様達は嫌がってるわ……はぁ……敷居を下げるのはいいけど下げ過ぎたら今度は無法者も入ってくるって事わかんないのかしらね。」


 どうやらこちらでも移民の問題が上がってる様でした。


「……そちらもですか……」

「そちらも……て言うことはそっちもなのね……ヴェルシキニアって言ってたわよね?」


 マーヤに向かって聞いたのだろう。私は一言も言ってないのだからそうなる。マーヤは静かに頷いた後、セレナは再びため息を吐いた。


「それで、そっちは戦闘になるの?」

「危険分子、反乱分子は排除する計画です。大人しく国に帰るのなら命までは取らないでしょう。」

「甘ったるい事言ってんじゃないわよ!」


 セレナの怒声に私もマーヤも驚きました。マーヤはともかく私はこんなに怒ってるセレナを知らないからです。


「全員強制帰国させなさい!この国はまだ移民を受け入れる準備なんて出来てないの!法律も新たに作らないと無法地帯になるの、この国の国民がバカを見る可能性だってあるの!いい、メアリーにもそう伝えて!遠慮なく排除しろ!ってね!分かった!?」


「わ、わかりました。」


 あまりの気迫に私は肯定の返事しか出来ませんでした。その後は会話もなく翌朝にはマーヤとセレナに挨拶をしてヴェルシキニアに戻りました。






「却下します……」


 私はコーネリアからセレナの伝言を否定した。


「やはりそうですよね……」

「私たちは騎士団です。国民でないとは言え非戦闘員を追いかけ回して殺害するなどそんなの騎士団でも人でもありません!」


「私も……そう思いますが……セレナ様の考えも一理あります。まだ法律が出来ていないという面では我が国の国民も不利益になっています。特にセーフティーネット……この国に来てすぐの者にまで与えてるというのは問題ですからね。」

「だからって……」


「ええ、メアリー様の考えも分かります。なので最後はメアリー様に委ねます。私はメアリー様に付いて行くと決めてますから。」

「全く、一蓮托生ですよ……後でセレナには2人で叱られましょうね。」


 セレナになんと言われようと私たちは騎士団、曲げてはいけない信念があります。そして作戦会議を丸一日掛けて拠点の壊滅、及び捕縛の算段立てて冒頭に戻ります。



「では、掃討作戦開始です!」

「おおー!」


 真っ先に出たのはやはりというべきかフェスだった。やむを得ない場合は命を奪え……その事は忘れてはいない様であっという間に敵を戦闘不能にして行った。しかしフェスに付いて行ってる者がいた。それは……


「おい!抜け駆けすんなよ!」


 あのエイジとかいう青年だった。その後ろにはアネリーも付いて行っていた。私もコーネリアは中央であの3人が気絶させた人間の捕縛していた。


「やはりあの2人には先陣を任せたのは正しかったですね……」

「あのエイジって人もなかなかですがあの人はどの隊所属ですか?」


「第18師団のようですよ。なかなかやる様ですね。フェスが生き生きしています。」


 最初こそ命の取り合いをしていたが同じ気性なのだろう戦時には息が合うらしい。


「あの2人の前ではアネリーもかすみますね……」


「妹に辛口ですね。ですがその通りです。フェスの後ろで学ぶ事は沢山あります。ここまでは私達凡人が生き延びるための方法を教えましたが……これからは正攻法のやり方も教えてあげられます……ね!」


 私は後ろからの攻撃を躱しつつ回し蹴りで敵を戦闘不能にした。


「一気に片付けられます!3人に続いて下さい!」


 士気の上がった我が軍は強いと自負しています。それは総指揮官の時によく教えられました。そして勝負は1日で着きました。


「怪我人はすぐに手当てを!強制送還する者達は第18師団の元へ、非戦闘員の送還者は17師団へ!死体はなるべく丁重に扱って下さい!まとめて弔います。」


「流石元総指揮官様ね。指示が的確!」

「フェスもこれからその総指揮官の元でまた働く事になるのですよ。」


 私が各隊に指示を出してる間コーネリアとフェス、そしてアネリーが話していた。


「はぁ……コーネリアは本当にメアリーが好きなのね。」

「そう言えば、私お姉様がメアリーさんが好きな理由知らないんだけど?なんで片思い続けてるの?」

「んー?聞きたい?」


 フェスがニヤニヤとした表情でアネリーにけしかけました。


「フェス、その話は今する話ではないかと……」

「何で良いじゃん!めっちゃ良い話だし!でもこれはコーネリアから聞いた方がいいと思うから帰って聞くといいよ!」

「ムー!」


 そんな話をしてるとはつゆ知らず、私は各隊への指示とそれに応じての報告を纏めていきます。すると1人の子供をこちらに連れてくる者がいました。


「メアリー指揮官!お時間よろしいですか?」

「なんですか?子供の怪我でしたら17騎士団に……」

「いえ、この娘はここで処刑したくお伺いにきました。」


 いきなり物騒な話になった。ひとまず理由を聞く事にします。


「なぜ殺すのですか?明確な理由をお聞かせ下さい。」

「はっ!この娘は危険な思想の持ち主!人の身でありながらあの空を飛ぼうと考えております。」


 この国の宗教では地は人間の領域、空は神の領域、そして地下は悪魔たちの領域という教えがある。つまり空を飛ぶというのは神への冒涜とみなされるのだ。


「……面白いですね。」

「何を言ってるのですか!?この娘は神の領域へ足を踏み込もうとしてるのですよ!」


「確かに私の今の言葉は失言でしたね。ですが、殺す必要はないかと、まだ教育すれば良いだけの話です。」

「何を呑気な事を!もし、空に登れば神の怒りに触れ天災が起こるかもなのですよ!」

「ならば、鳥はなぜ許されてるのでしょうね……」


 私はふと空を見上げて思った事を口に出してしまった。


「はい?」

「いえ、なんでもありません。とにかくまだ齢10もいかない様な子を殺すなどあってはなりません。」

「わかりました。では、第17師団に……」

「いえ、こちらで引き取ります。」


 咄嗟に出た言葉に私自身少し驚いてしまったが気を取り直して続けます。


「危険な思想であることには変わりません、私が引き取り近くで監視する事にします。問題はありますか?」

「……私には判断しかねます。故にこのままメアリー様にお預けします。」


 どうやら面倒事には関わりたくないらしい様で少女を私に渡すとそのまま消えて行った。残された少女に私は視線を合わせて尋ねてみた。


「ふぅ……あなた名前は?」

「レイ……私……しぬの?」


 子供ながらに怯えてるようだった。


「大丈夫よ、私たちがいるからね。レイちゃんはどうやって空を飛んでみたいの?」

「あの……鳥さんみたいに……」


 レイの指差す先には鳥が飛んでいた。虫や鳥は空を飛べる、人間にはない羽を使って……


「あんな風には飛べないかもだけど私も空を飛んでみたいから一緒に考えてみようか。」

「うん!」


 新しい仲間はまだ子供だった。しかしこの子の加入は後に大きな戦力となる事を私たちは知らなかった。

 ここまで読んで頂きありがとうございました。

次回更新もお楽しみに!


 面白い、続きが気になるという方はブックマークをしてお待ち頂けると幸いです。

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