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九話

次の日の放課後、帰りの支度をしていたら、通学鞄を持った蓮くんが声をかけてきた。

「未来ちゃん、一緒に帰ろ!」

「うん!」

だけど、その時クラスメイトの女子が一人、私の方に駆け寄って来た。

「ねぇねぇ、白露さん。向こうで女子達が呼んでるよ」

「え?」

とりあえず蓮くんに先に帰っておいてと伝えてから何事かと思い、その子達が待つ空き教室のドアの方まで行ってみたら、同じクラスだけどあまり話したことがない女子が数名いた。

「白露さん、ちょっと良いかしら?」

その中の一人が、ニコッと微笑みながら声をかけてくる。

「あ、うん」

どうしよう。何かやらかしたかな?

少しだけ不安になっていたら、その隣にいた女子がニコニコしながら話しかける。

「私達、白露さんと仲良くなりたくて」

その様子から、私が勝手に悪い想像をしているだけだと思い、彼女達と一緒に空き教室に入る。

そしたらクスクスと笑い始めて、

「本当にバカみた〜い。疑わずにノコノコとついて来て」

「え?」

「今なら悠斗くんと蓮斗くんもいなくて丁度良かった〜」

それを聞いて、ドクンと心臓が悪い音をたてる。

あれ?これって、、、、

そしたら真ん中に立っていたリーダ格っぽい女子が怖い顔をして腕を組みながら私を睨んできて、、、

「大体、ちょっと桜井兄弟と仲良いからって、調子乗んじゃないわよ!」

パシンッ

空き教室中に乾いた音が響いた。私の頬が平手打ちされた音だった。

「え、、、」

「そもそも、アンタみたいな奴に桜井兄弟は似合わないわよ!」

「マジで目障りなんだけどっ!」

一緒にいる子からも次々と責められて、思わず足がすくんでしまう。

ど、どうしよう、、、。かなり恨まれてる。

「ご、ごめんなさい。でも、私は二人とはただの幼馴染で、、、」

咄嗟(とっさ)に謝ろうと口を開く。

でも次の瞬間、それを(さえぎ)るようにドンッと壁の方に向かって突き飛ばされた。

「、、、きゃっ!」

クスクスと笑う声。嘲笑(あざわら)う声。完全にバカにしたような笑い声。

「嘘付け!色目使ってるくせに!」

「そうだよ、ベタベタ擦り寄ってるの丸分かりなんだよ!」

更にはリーダ格っぽい女子が床に置いてあった水入りバケツを手に取ると、勢い良く私に向かってバシャッとかけてきた。

「きゃあ!」

頭上から水を被った私は、一瞬にして全身がびしょ濡れになる。

それを見て、キャハハと笑う女子達。

「あー、濡れちゃったね」

「残念だったねー、誰も助けてくれなくて〜」

ひ、酷い。そんな、、、

確かに彼女達からしたら私は迷惑かもしれないが、色目使っただの調子乗ってるだの言われて、、、そんな嫌がらせみたいなことされるなんて。

ショックで涙が出てきそうだった。

やっぱり私に悠くんと蓮くんの許嫁を名乗る資格なんて、、、、。

そう思った時、

「未来!」

「未来ちゃん!」

突然、私の名を呼ぶ大声が聞こえてきた。

ハッとして振り返ると、そこには先に帰っていたはずの悠くんと蓮くんが私の方に駆け寄ってくる。

「悠くん、蓮くん!」

すぐさま状況を把握した悠くんがリーダ格っぽい女子の胸ぐらを掴み、いつもより低い声で問いただす。

「おい、未来に何した」

言わずもがな、悠くんは眼力鋭い不良少年であった。ムカついたらとりあえず殴っとけ精神。

「お前らさ、何したのか分かってんのか?あ"?」

厳しい言葉を良いながらも根は優しい悠くん。その表情はいつもの悠くんからは想像出来ないもので―――

「ねー悠斗。僕達の未来ちゃんを傷付けた子達に弁解の余地は?」

「いらん。消せ」

即答で蓮くんからの質問に答える悠くん。指をポキポキと鳴らしている。女子達はその威圧感で泣きそうになっている。

すると二人は低い声で

「謝れ/謝って」

ハッとして顔を上げた女子達に向かって、再び怖い声で怒鳴りつける悠くん。

「未来に謝れ!今すぐに!」

それを聞いた女子達はビクッと体を震わせたかと思うと、バツが悪そうな表情をしながら小さな声で呟いた。

「ごめん、、、なさい」

「私も、、、ごめんなさい」

私は何だかいたたまれない気持ちになって、オロオロしながら返す。

「あ、大丈夫だから」

だけど蓮くんは私の肩に優しく手を置くと、

「も〜、未来ちゃんは優しいね〜」

「え、、、?え?」

「今後、こういう嫌がらせしないって誓えよ?」

女子達に向かって念を押すように言った悠くん。

「は、はい!」

彼女達は気まずそうな顔をして頷き、空き教室から逃げるように去っていった。

「二人共、ありがとう」

私がすぐさまお礼を言うと、またいつもの笑みに戻った悠くんと蓮くん。

すると蓮くんは急に自分のブレザーを脱ぎ始めたかと思うと、バサリと私の肩に掛けてくれた。

「蓮斗、ナイス」

「悠斗はブレザー着てないから掛けられないもんね〜」

「嫌味か?」

そして何を思ったのか、二人がギュッと私を抱きしめてきた。

「、、、ひゃっ!」

「ごめん。、、、守ってやれなくて」

「そんな、二人のせいじゃ、、、」

「でも、守るって約束したのに、、、ごめんね」

そう口にする二人は何だか悔しそうで、胸がチクッと痛む。

二人は本気で私を守ろうとしてくれていたことが、ひしひしと伝わってくる。

やっぱり二人共優しい。でも、どちらかを決めなきゃいけないんだよね、、、。

「こんな格好で寒いよね、着替えて来て。待ってるから」

蓮くんにそう言われて、この格好から着替えることにした。

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