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七話

鬱蒼(うっそう)とした山。山には昔から人の怨念やらが溜まりやすく、夜は一層危ない。

悠くんを追いかけていたら、蓮くんとははぐれてしまった。

それのツケが回ってきたように―――

「え?」

適当に歩いていた山道で

「イイナイイナイイナイイナ」

霊感が全くない私でさえも視えるくらいの実体を持った怪異を引き当ててしまった。

全身を駆け巡る不快感に襲われる。無意識に首から下げている悠くん自作のお守りを握りしめた。

無意識に一方後ずさる。

「えっと、、、あ、ハロー、、、?」

引きつった笑みを浮かべるが、黒い目は私の方を向いている。

一目散に逃げようとするが、足に絡み付く。転んでしまった。

「や、、、助けて!」

そう叫んだのと同時に、怪異が「ぎゃ」と短い悲鳴を上げて掴まれている感覚が消えた。

「未来!」

「未来ちゃん!大丈夫?」

慌てた様子で未来を助け起こしたのは、見失った悠くんと蓮くんだった。

私を抱き寄せると、ぎゅっと抱きしめて背中を撫でる。

「良かった。未来ちゃんが無事で、、、遅れて本当にごめんね」

「れ、蓮くん、、、?」

(悪いのは蓮くんから離れてしまった私なんだけど、、、)

「嫌な予感がして大元を祓ってきてから走ってきたんだけど、、、良かった、間に合って」

ほっとしたように悠くんが小さく呟く。

「ごめん、、、」

「俺も悪い。俺も何も説明せずに飛び出しちまった、、、」

「未来ちゃん、怪我させちゃってごめんね」

ポケットから絆創膏を取り出して少し血が流れている(ひざ)に貼ってくれた。

「てか、お守り渡したのに何であいつに投げ付けなかったんだよ」

「あ、パニックになって」

悠くん特製のお守りには清めた塩が入っているので、お守りごと投げれば祓えたりするのだが、、、慌てていたので完全に忘れていた。

「、、、、じゃあこれ、スマホなり鞄なりに付けとけよ」

「わ、お守り!」

悠くんは淡い赤色のお守りをポケットから取り出し、手渡してきた。

「僕もお守り渡せたら良かったんだけど、、、霊力を注ぎ込むの苦手で、、、ごめんね」

蓮くんがしょんぼりしながら言うが、首をぶんぶん降って蓮くんの手を握る。

「未来ちゃん?」

「守られているのはお守りだけじゃないよ!蓮くんにも悠くんにも守られてるよ!」

「本当?」

「うん!」

自信満々にそう答えると、パァァっと顔を輝かせた。


「電気消すよー」

布団を敷き、寝る準備を済ませると同室の子が電気を消す。

「えー、恋バナじゃないの〜?」

よく話しかけてくれる誰にでも優しい梨子(りこ)ちゃんのひと声で、お泊まりなどの恒例行事『恋バナ』が始まった。

「それで、、、未来ちゃんは悠斗くん派?蓮斗くん派?」

「へ?」

ニヤニヤとワクワクを足して二で割ったような表情で私をみる梨子ちゃん。

「二人と仲良いんでしょ?幼馴染、、、だっけ?」

「うん。幼馴染といっても親同士が関わりがあって、、、」

(その関わりが主と従者みたいな関係らしいけど、、、)

もちろん、私の親は従者側だ。両家はノリノリで婚約を決め、ノリ気だったことを去年聞かされた悠くんは今まで見たことないくらい自身のお父さんに詰め寄ってぶん殴ってたのを思い出した。

「でも幼馴染との恋愛か〜!しかも相手は桜井兄弟」

「白露さんが羨まし〜!そうだ!高校に入る前はどんな感じだった?」

「え、高校に入る前の二人?」

同室の子達は一斉に首を縦に振る。

あ、、、あった。

「中学三年の時に両親と喧嘩した悠くんが東京に家出した話、聞く?」

「聞きたい!!」

「中学三年の初夏くらいかな?家出した悠くんを探していたらスマホに『東京』とだけ送られてきて、蓮くんと二人で東京に行ったんだ。東京と言われても正確な場所は分からない。これからどうしようかな〜って考えてたら路地裏の方から手招きされて、悠くんを発見した」

「東京で何してたの?」

「悠くん(いわ)く、憂さ晴らしらしいけど、、、翌日、家出中に悠くんが貰ったらしい財布に入ってたお金で三人で昼ご飯を食べに行った。今思えば絶対、財布は貰ってない!」

何回か本人に聞いたことがあるが、その度に「貰った」と言う。財布ごと渡す人っている?

恋バナらしい恋バナはしていないが、一日目は終了した。

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